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インフレ時代に知っておきたい話 Part1~私たちの生活への影響は?

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野村證券投 資情報部 田中 政広
野村證券 マーケティング部 高橋 美咲

物価の高騰に負けない!インフレ時代に知っておきたい資産形成の知識について、野村證券投資情報部 田中 政広、マーケティング部 高橋 美咲によるトークセッション形式で解説します。

インフレの時代と私たちの生活

【高橋】インフレ時代に知っておきたい話 Part1の資産形成に役立つ情報を教えてください。
【田中】ポイントは、次の3つです。

1)インフレの時代と 私たちの生活について
2)資産形成とは、資産にも働いてもらうこと
3)資産形成に役立つ 「資産の働かせ方」

【高橋】コロナ禍での自粛が収まりつつある時期から、日本にもここ数年、大きなインフレの波が押し寄せてきている気がしますね。
【田中】はい、身近なものの値上がりが続いています。まず、私たちを取り巻く現在の環境を考えていきましょう。下記の図は、1年間で価格が大幅に上昇した生活必需品の例です。(2023年6月時点)
総務省が9月に発表した2023年8月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で3.1%の上昇となりました。
2023年1月に消費者物価指数が前年同月比で4.2%の上昇となり、1981年9月以来、41年4カ月ぶりの上昇となった後も3%台の上昇を続けています。

【高橋】以前、卵は10個で98円のイメージが強かったのですが、最近スーパーでは300円を超えていることが多く「高いなぁ~!」と思います。
【田中】卵が「物価の優等生」と言われたのは、昔の話といえるかもしれません。
日本は2000年頃からほぼ物価が上昇しない期間が20年ほど続いていたので、暮らしやすかった時代が続いていたと言えます。しかし、数十年ぶりの物価上昇が相次ぎ、若い現役世代にとっては、本格的な物価上昇を初めて体験する環境となっています。

【高橋】海外では、日本以上にインフレが進んでいるようですね。
【田中】そのとおりです。
例えば、住宅の賃貸料は日本がおよそ17万円に対し、米国ではおよそ50万円で日本の3倍程度の価格です。一方、製造業の賃金は、日本の約53万円に対し、米国では約165万円と3倍です。(2022年7月時点 1ドル=135円で計算した場合)

【高橋】日本は賃金が上がらず、物価が上昇しているように感じられます。

日本の経済規模は?

【田中】下記のグラフは、1980年からの主要国・地域の経済規模の推移について、インフレを加味した名目値を用い米ドル建てで示したものです。
米国、中国、ユーロ圏では高い経済成長と物価上昇により、経済規模の拡大が続いていますが、日本の経済規模は、長期間伸び悩んでいます。

その理由は、他の国や地域とは異なり、低成長とデフレ気味の物価状況が続いたためです

【高橋】日本は経済規模が拡大しない中でのインフレとなり、賃金の上昇が弱い中での物価上昇のため、生活にゆとりがなくなったと感じやすいというわけですね。
【田中】加えて、経済構造の変化の影響もあると思われます。1990年代以前は、高い経済成長が続き、企業の業績は拡大し、賃金も大きく伸びていました。ところが、1990年代は、経済の変調によって企業業績が悪化、それまで伸びていた賃金が伸び悩むことになります。

2000年以降は経済規模の低成長が続き、企業が徹底的に合理化に取り組んだことで、業績は拡大に転じました。加えて、企業の安定配当政策により、利益を配当金で株主に還元する方向性を重視し、人件費である賃金を抑えてきました。
【高橋】なるほど、そうなのですね。
【田中】次に、世界の経済成長を確認しましょう。

世界の経済成長は?

【田中】下記グラフは、1922年以降世界の経済規模(グレーの折れ線)と、世界を代表する米国のダウ平均株価(赤の折れ線)を指数化したものです。(1922年の数値=1)

100年という長い期間には、大きな戦争や恐慌、紛争など、数多く発生した一方、白熱灯や鉄道、飛行機の発明、デジタル革命等次々に新技術や 商品・サービスが生み出されてきました。
その結果、世界経済の規模は、物価上昇率を含み100年後には257倍に達しています。
1年あたりの複利換算にすると、年率で約5.7%の成長が100年続いたことになります。

一方、世界経済の中心となる米国のダウ平均株価は、100年で368倍になりました。(年率約6.1%)
このように、高い経済成長に見合う形で企業利益は伸び、利益を反映する株価も同様に上昇していると考えられます。

物価上昇が資産に与える影響は?

【高橋】なるほど。長期間、投資をすることで資産の増加が期待できるということですね。
【田中】投資期間に加えて、物価上昇が資産に与える影響と運用の関係を考えることが重要です。下記グラフは、左側が物価上昇率0%、真ん中が2%、右側が5%の場合の運用利回りと、時間経過に伴うお金の実質価値の関係を示しています。

縦軸の数字は実質価値を表し、100は元の価値を意味します。棒線は運用利回りで、グレーは0% 、ピンク色は2%、濃い赤色は5%とした場合のお金の実質価値を示しています。

【田中】左側のグラフ(物価上昇率0%)は、運用利回り0%でもお金の実質価値は変化しません。
仮に2%や5%で資産運用ができるとすれば、お金の実質価値は増えることになります。
【高橋】物価が上昇しなかった場合は、インフレによるお金の価値が目減りすることなくそのまま運用利回りが資産の上昇効果となるのですね。

【田中】そのとおりです。真ん中のグラフ(物価上昇率2%)は、仮に運用利回りが0%であれば、物価が上昇するにつれ、お金の実質価値はだんだん目減りすることになります。運用利回りが2%であれば、実質価値は保たれ、5%ならお金の実質価値は増えることになります。
【高橋】2%以上の運用利回りで成果を上げないと、お金の価値が実質目減りしてしまうわけですね。
【田中】そのとおりです。
【高橋】ということは、右側のグラフ(物価上昇率5%)では、5%の運用利回りで「お金の実質価値が保たれる」 ということですね。
【田中】はい、物価上昇が続く場合は、運用利回りが伴わないと、お金の実質的な価値が目減りするので、生活にも影響が出てくる恐れがあります。
次に、時代の変遷に伴う資産価格の実質的なリターンを見てみましょう。

預金金利と主な資産の実質リターンは?

【田中】下記グラフは、1970年代から2010年代まで10年単位で、預金・債券・株式・不動産毎に物価上昇率を差し引いた実質リターン※を表したものです。(※実際の収益を示す、投資における指標)

1970年代は、預金と債券は当時の高い金利で資産が増えたのですが、名目上のリターンは大きく増えていてもインフレ率を差し引いた実質リターンはマイナスでした。1980年代に入ると、余剰資金の運用先として特に株式へ流入したことにより、株式の価値が実態よりも割高に評価されていた影響で、他の資産より高いリターンとなっています。

その後、経済構造の変化を受けて1990年代、2000年代とも、株式は景気低迷と割高感の調整により、大幅なマイナスリターンとなりました。一方、債券は物価上昇率を上回りプラスのリターン、預金もプラスのリターンでした。長い期間で見ると、金利が低くてもまだ預金しておく方が有利だった時があったのです。

【高橋】なるほど。2010年以前までは、特に資産運用をする必要がなかった20年が続いていたのですね。
【田中】しかし、2010年代に入ると、預金の実質リターンはマイナスとなりましたが、株式の実質リターンはプラスに転じています。今後の資産形成には「物価上昇に対応できる資産」という観点が必要ではないでしょうか。

【高橋】そうですね。さらにここ数年はインフレ率が高くなっていますから、「物価上昇に対応できる資産」という観点は資産形成を考えるうえでとても大切だと思います。

その後、経済構造の変化を受けて1990年代、2000年代とも、株式は景気低迷と割高感の調整により、大幅なマイナスリターンとなりました。一方、債券は物価上昇率を上回りプラスのリターン、預金もプラスのリターンでした。長い期間で見ると、金利が低くてもまだ預金しておく方が有利だった時があったのです。

【高橋】なるほど。2010年以前までは、特に資産運用をする必要がなかった20年が続いていたのですね。
【田中】しかし、2010年代に入ると、預金の実質リターンはマイナスとなりましたが、株式の実質リターンはプラスに転じています。今後の資産形成には「物価上昇に対応できる資産」という観点が必要ではないでしょうか。

【高橋】そうですね。さらにここ数年はインフレ率が高くなっていますから、「物価上昇に対応できる資産」という観点は資産形成を考えるうえでとても大切だと思います。

  • このコラムは、2023年10月時点の情報に基づくものです。

文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室

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