統計データで見る勤務医の平均年収と、将来に向けた資産形成の考え方

勤務医は、一般的に高収入の職業として知られています。実際、年代別の平均年収を見ると、60歳まではおおむね右肩上がりで推移しており、経験や役職、専門性の高まりに応じて収入が増えていく傾向が確認できます。
一方で、年収が高いからといって、将来の生活に不安がないとは限りません。物価上昇や税・社会保険料の負担、ライフステージに応じた支出などを考えると、勤務医の収入をどのように捉えるかは重要なテーマです。
勤務医の年代別平均年収
勤務医の年代別平均年収は、60歳頃までは概ね右肩上がりで推移しています。若年層では、研修医や専門医取得の段階にある医師も多く、年収は比較的抑えられる傾向があります。その後、経験年数の増加や役職への就任、専門性の向上などに伴い、収入も上昇していきます。

出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」より野村ホールディングス作成
このグラフからは、勤務医の収入がキャリアの進展とともに増加する傾向を読み取ることができます。ただし、すべての勤務医が同じように収入を伸ばすとは限りません。診療科、勤務先、役職、当直や時間外勤務の有無などによって、実際の年収には差が生じます。
また、60歳を超えると、役職定年や勤務時間の変化、再雇用などによって、収入が頭打ちになったり、減少したりする可能性もあります。年齢とともに収入が上昇し続けるという前提ではなく、キャリア全体を通じた収入の推移を確認することが大切です。
25歳から64歳までの40年間の合計年収は約6億2千万円
「令和7年賃金構造基本統計調査」の平均年収で推移するとした場合、25歳から64歳までの40年間、勤務医として働いた場合の年収合計は下記表の通り約6億2千万円となります。
| きまって支給する現金給与額 (万円) | 年間賞与 その他特別給与額 (万円) | 年収 (万円) | |
|---|---|---|---|
| 20~24歳 | 49 | 4 | 592 |
| 25~29歳 | 62 | 19 | 757 |
| 30~34歳 | 87 | 45 | 1,086 |
| 35~39歳 | 112 | 126 | 1,470 |
| 40~44歳 | 133 | 146 | 1,746 |
| 45~49歳 | 129 | 159 | 1,703 |
| 50~54歳 | 135 | 158 | 1,780 |
| 55~59歳 | 143 | 170 | 1,889 |
| 60~64歳 | 149 | 192 | 1,981 |
| 65~69歳 | 144 | 94 | 1,819 |
| 70歳~ | 125 | 91 | 1,590 |
| 25~65歳生涯年収 | 62,067 | ||
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」より野村ホールディングス作成
6億2千万円という金額は非常に大きく見えますが、これはあくまで税金や社会保険料などが差し引かれる前の年収の合計です。
勤務医のキャリアでは、若い時期に研修や専門医取得のための費用が発生することがあります。結婚や出産、住宅購入、子どもの進学など、収入が増える時期と大きな支出が重なるケースも少なくありません。
したがって、年収の大きさだけを見て経済的な余裕を判断するのではなく、どの時期にどれだけの収入があり、どのような支出が見込まれるのかを把握する必要があります。
医療機関の規模による年収の違い
職員規模別に勤務医の平均年収を見ると、医療機関の規模が小さくなるほど、勤務医の平均年収が増加する傾向が見られます。
また、医療機関の規模が小さくなるほど、勤務医の平均年齢も上昇しています。つまり、年収の差は医療機関の規模だけでなく、勤務医の年齢や経験、役職などの違いによって生じている可能性があります。
| 職員規模 | 年収(万円) | 年齢(歳) |
|---|---|---|
| 1000人以上 | 1,379 | 42.6 |
| 100~999人 | 1,707 | 50.0 |
| 10~99人 | 1,832 | 54.8 |
| 全体平均 | 1,512 | 45.7 |
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」より野村ホールディングス作成
医療機関の規模と年代構成
医療機関の規模別に年代構成を見ると、医療機関の規模の大きさと若年層の割合には、一定程度の比例関係が見られます。大規模な医療機関では若年層の勤務医が比較的多く、小規模な医療機関では経験を積んだ医師の割合が高い傾向があります。

出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」より野村ホールディングス作成
この年代構成を踏まえると、単純に「小規模な医療機関ほど高年収」「大規模な医療機関ほど低年収」と結論づけることはできません。大規模病院には若手医師が多く、小規模な医療機関には中高年の医師が多いという構成の違いが、平均年収に反映されている可能性があるためです。
勤務先を比較する際には、年収の水準だけでなく、勤務時間、当直回数、専門性を高める機会、役職、福利厚生、将来のキャリアパスなども含めて検討する必要があります。
平均年収は近年おおむね同じ水準
勤務医の平均年収の推移を見ると、近年はおおむね同様の水準で推移しています。

出所:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第632回)」資料(総5-1)より野村ホールディングス作成
安定した収入が期待できることは、勤務医の大きな特徴の一つです。しかし、名目上の年収が大きく変わらない一方で、物価が上昇すれば、実質的な購買力は低下します。
食料品や光熱費、住宅関連費、教育費などが上昇すれば、同じ年収でも生活に使える余裕は小さくなります。また、現役時代の収入水準が高いほど、退職後に収入が減少した際の生活水準とのギャップも大きくなりやすいでしょう。
高収入でも将来を見据えた視点が必要
勤務医は相対的には高収入である一方、現在の収入水準だけで将来の安心を判断することはできません。年齢による収入の変化、医療機関の規模や勤務条件、税・社会保険料、物価上昇、退職後の生活など、複数の要素を総合的に考える必要があります。
今回のデータから見えてくるのは、勤務医の収入がキャリアとともに上昇する一方、その水準や推移は年齢、勤務先、医療機関の規模などによって異なるということです。また、25歳から64歳まで働いた場合の年収合計は約6億2千万円に達するものの、実際の生活では収入と支出のタイミングを考えることが欠かせません。
将来の生活を考えるうえでは、単年度の年収の大きさだけでなく、現役期間全体の収入推移と支出見通しを把握することが重要です。
次回は、こうした勤務医の収入の特徴を踏まえ、勤務医のための資産形成についてご紹介します。
文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部 籔内大助
記事公開日:2026年10月30日


