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独身女性の老後資金計画で注意するべきことは?

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「自由に自分らしく生きたい」、「結婚をしていなくても孤独を感じない」、そのような考えからシングルライフを選び、仕事とプライベートを全力で満喫している方もいらっしゃると思います。その一方で、老後も含めた将来の資金計画について、独身者ならではの不安や女性ならではの悩みを持つ方もいらっしゃるようです。このコラムでは、40代・50代の独身女性が抱きがちな老後の悩みに対し、その解消方法をわかりやすくご紹介します。

50歳女性の約30%が独身の時代に

社会の価値観が多様化して、女性の社会進出が進んだことで経済的自立が可能となり、晩婚化や未婚化が進んだ結果、未婚率が2000年代以降、大きく上昇しました。国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、2020年時点で50歳の女性の約3人に1人(約30%)が独身(未婚・死別・離別の合計)とのことです。

『50歳時の独身女性の割合』未婚率が2000年代以降に大きく上昇し2020年時点で50歳の女性の約3人に1人が独身に
注:総務省統計局『国勢調査報告』により算出。45~49歳と50~54歳における割合の平均値。2015年と2020年は、不詳補完値に基づく。独身は、未婚、離別、死別の合計。四捨五入の影響で、独身の数値が他の3項目の合計と一致しないところがある。
出所:国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集(2024)』

一方、老後資金やファイナンシャル・プランニングに関する情報はネット上に豊富にありますが、独身者、特に独身の女性を対象とした情報は限られています。40代・50代になると、自身や知人の急な病気やケガなどをきっかけに、今後の生活や老後の資金に不安を感じる機会が増えてきます。働いている間は生活資金に困らず、充実した日々を過ごせることは分かっていても、突然の病気や定年退職などで働かなくなった後の生活をイメージすることは、急には難しいものです。

独身女性の経済面での不安と解消方法

老後に対する不安は誰でも同じかもしれませんが、女性で独身の方には、一般的に次のような不安材料があります。

  • 給与の男女差:一般的に給与水準が男性に比べて低く、老後資金の形成に時間がかかり、厚生年金の額も低くなりがち
  • 非正規雇用の影響:非正規雇用で働く女性は多く、退職金や企業年金などの制度が利用できないケースがある
  • 平均寿命の長さ:男性よりも平均寿命が約6年長く、その分の生活資金も必要
  • 世帯収入の違い:配偶者の年金や退職金を頼りにできないので、老後資金を自身で準備する必要がある

このため、「老後資金を十分に貯蓄できるのか?」、「公的年金だけでは足りないのでは?」などの不安を感じてしまいます。

さらに、老後に限らず現役時代でも、突然の病気やケガで介護や介助が必要になり、家事やその他の生活が制限される場合、第三者や有償のサービス、離れて暮らす親族に頼らざるをえなくなる可能性も出てきます。その場合、思いがけない費用が発生することも想定しなければなりません。「その費用を払うことができるのか?」との不安やその時の生活の想像ができないことなど、健康の悩みも結局は、経済的な悩みにたどり着きます。お金の悩みのようなセンシティブな話こそ、つい一人で抱え込んでしまいがちです。

また、40代になると男女問わず、親の介護問題に直面する方も出てきます。親の介護がはじまると、多くの時間を割かなければならず、最近は、働きながら介護をするビジネスケアラーも増えています。兄弟の中で自分だけ独身の場合、「時間にゆとりがある」との理由で、独身者が親の介護を一人で抱えるケースがあるそうです。

ちなみに、介護・看護を理由とした離職者は、下のグラフが示すように、2022年では75%が女性と、男性より女性が圧倒的に多いことが特徴です。これには、「親の面倒を見るのは女性」という固定的性別役割分担意識が根強く残っていることが、関係しているようです。

『介護・看護を理由とした離職者の推移(男女別)』介護・看護を理由とした離職者は2022年では75%が女性と、男性より女性が圧倒的に多い
注:総務省『就業構造基本調査』
出所:厚生労働省『仕事と育児・介護の両立支援対策の充実に関する参考資料集』

経済面では、以上のような厳しい側面ばかりでなく、趣味や楽しみの費用も考える必要があります。いつまでも美しくいたいという女性は多いですが、美容にかけるお金には、美容院、スキンケア、コスメ、ネイル、まつげパーマやエクステ、美容医療の費用があります。「美容=趣味」と位置付けている女性も多く、筆者自身もその感覚でいます。男性よりも長い人生、今の美容にかける費用は、将来の自分に対する「リターンの高い投資」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

このように女性特有の経済的な不安要因がある中で、老後に生き生きと充実した生活を続けるためにできる方法は、現在の収支を見直すことです。やるべきことは至ってシンプル。①支出を減らす、②収入を増やす、③資産運用する、の3つです。まずは固定費を見直すことから始めましょう。保険の見直し、家や車のほか、サブスクリプションサービスの見直しを行うと良いでしょう。

収入を増やすということでは、セカンドキャリアのためのリスキリング、副業も有効です。スキルの棚卸からはじめてみましょう。独身で仕事に打ち込んできた方であれば、仕事に生かせるスキルが幾つもあるはずです。そのようなスキルを再確認することは、今後の人生への自信にもつながります。そして長期的な資産運用は、老後資金の形成に大きく貢献します。40代・50代からでも十分に間に合います。早い段階からの貯蓄・資産運用を始めましょう。

親の介護や将来の自分の介護についても、今からできることは、国や自分が住んでいる地方自治体の介護制度や勤めている会社の介護支援制度を知ること、介護施設などを調べることです。先の予算を知ることで、漠然とした不安感を解消できます。

独身女性の健康面での不安と解消方法

40代はまだまだ健康ではありますが、更年期に向けてホルモンバランスが変化する時期でもあり、女性特有の婦人科系の疾患である、子宮筋腫、子宮がん、乳がん、月経不順、更年期障害などが増えます。そのため30代に比べ、医療機関を受診する機会が高まります。そのようなリスク回避のためには、定期的な婦人科検診が必要です。また疾患になる時には、治療費がかかるので、健康やお金にもますます気を遣うようになります。

そのようなリスクに備え、女性疾病保険に加入される方も散見されます。しかし、「本当に必要なのか?」、「健康保険、貯蓄で賄えないのか?」など、リサーチしたうえで加入しましょう。大切な自分のお金です。万が一の時のための保険料として使うのか、将来の自分の健康のために今投資するのか、しっかり考えることをお勧めします。

生き生きと豊かな老後を送るためには、お金も大事ですが、健康であることも重要です。健康は、人が生きる上での最も大事な基礎になります。元気なうちからできることは、健康診断や人間ドックを定期的に受診し、健康に気遣うことです。健康保険組合・協会や会社の福利厚生制度では、健康に関する情報やサービスを提供し、人間ドックの受診料やスポーツクラブの会費の補助など、健康をサポートする様々な制度が用意されていることがあります。例えば、適度な運動は、ストレス発散にも美容にも役立ちます。独身だからこそ使える時間と資金を積極的に活用して、健康寿命と美容寿命を延ばしましょう。

独身女性の人間関係の不安と解消方法

女性は、共感や感情の共有を重視する傾向にあると言われています。女性のライフスタイルが多様化しているなかで、40代になると、友人たちとの共通の話題が減ったり、会う機会が減ったりすることで、必要な情報を収集できない可能性も高まり、疎外感や孤独感が深まることもあります。

しかし、頼れる第三者やコミュニティを得ることが出来れば、経済的・精神的不安から解放され、安心感が生まれます。身内だけでなく、「ゆるくつながる人間関係」を作ることが最も重要です。周囲の人から情報収集できれば、悩みの大半は解決するものです。40代・50代の今なら十分間に合います。家族や友人との交流を大切にしながら、さらに人間関係の輪を広げ、趣味の場、学びの場、地域のコミュニティなど、職場以外のサードプレイスをぜひ探してみてください。そのためには、生活消費だけでなく、趣味やコミュニティ活動に投資できるお金を用意することも大切です。

豊かで充実した人生のためにライフプランを立てる

仕事をやめた後も、健康的で良い人間関係を持ち、豊かで充実した日々を過ごすためには、早い時期からライフプランとファイナンシャルプランを立てて準備をする必要があります。将来的な収支を想定し、キャッシュフロー表を作成して、将来の資金計画を具体的にすることをおすすめします。公的年金では老後資金に不安を感じる状況下で、国民に老後に備えた十分な資産形成をして欲しいという観点から、政府はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金制度)などの制度を拡充しました。ぜひ、NISAやiDeCoの活用も検討してみてください。

また、インターネット上には様々なライフプラン試算ツールがあります。金融庁のサイトにはライフプラン作成ツールがありますので、これも活用してみてください。

参考:ライフプラン作成ツール

例えば、40代から資産運用をはじめた場合でも、定年65歳までは最大25年間あります。50代からでも最大15年間です。老後までの時間を味方につけて、長期・積立・分散を心掛けた投資を行いましょう1

1 資産運用は金融商品のリスクをよく理解した上で行うことが大事です。例えば、毎月同額、国内外の株式と債券に分散して積立投資を行うことで、20年後には100万円が186~331万円のパフォーマンスになるというデータがあります。(金融庁『NISA特設ウェブサイト・教えて虫取り先生』

もし資金計画などで困った場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家を頼ることも効果的です。先延ばしにせず、今行動を起こすことが重要です。身近に頼れる人やコミュニティを持つことで、必要な時に必要な情報が入ってきやすくなります。

独身だからこそ、自分らしい人生をデザインしたいものです。今から計画的に準備を始めることで将来の選択肢を広げれば、安心して老後を迎えることができます。このコラムを読まれた方が、自分らしく、心身ともに豊かな人生を送れるように願っています。

編集協力:寺澤 真奈美 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
編集/文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室

記事公開日:2025年3月24日

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