気になる『幸せ』と『お金』の関係
昨今、ウェルネス(Wellness)とかウェルビーイング(Wellbeing)という言葉をよく目にするようになってきました。
日本語では「幸せ」とか「健康」に相当する言葉ですが、米国ではこの言葉の前にFinancialをつけた“Financial Wellness Program”という企業従業員向けの福利厚生が定着してきています。この背景には、米国では従業員の一番の悩みがお金に関連する内容であることに起因していて、このお金の悩みを改善すると従業員の満足度が向上し、生産性も上がるという研究結果が出ているからです。
日本でも同様の取り組みを行えばウェルネスの改善につながるはずだと考え、現状把握のため野村證券では2023年10月に「ファイナンシャル・ウェルネス(お金の健康度)」というタイトルのアンケート*を実施しました。
このアンケートでは、個々人のお金や金融にまつわる内容のみならず、「人生の満足度」や最近の流行り言葉のエンゲージメントにまつわるような質問なども行いました。
本稿では、このアンケート結果から特に人生の満足度を軸にして、みなさんにご興味を持っていただけるかなと思った事項をいくつかご紹介いたします。
『人生の満足度』と『現在のお金・経済面での順調度合い』について
これは、みなさん想像に難くないと思いますがいかがでしょうか。
結果は下記の通り、ご自身の人生の満足度合いと現状のお金や経済面での順調度合いは比例関係にあるという結果になっています。
因果関係までは分かりませんが、この2つには少なからぬ関係があるようです。
この結果を見て思い出したのが、『月と6ペンス』の作家であるサマセット・モームの言葉です。
『お金だけが人生ではないが、
お金のない人生もまた人生とは言えない。
十分なお金がなければ、
人生の可能性の半分は締め出されてしまう。』
確かにそうですよね。
特にリタイア後にお金がなくなってしまうと、人生の可能性・やりたいことはかなり減りますよね。
『人生の満足度』と『金融リテラシー』
金融リテラシーは5つの設問があり、ここでは全問正解者と全問不正解者の2つのデータと人生満足度を分析してみました。
結果としては、人生の満足度と金融リテラシーはある程度比例関係にあると言えるでしょう。
また、前出の『現在のお金・経済面での順調度合い』と『金融リテラシー』をクロス分析してみると、下記の通り金融リテラシーの高い人はお金・経済面で現在順調である割合が高い結果となっています。
こちらも因果関係までは分析できませんが、金融知識があって損はないのではないでしょうか。
古代ギリシャの哲学者のプラトン曰く、
『いかに知識を身につけたとしても全知全能になることなどはできないが、
勉強しない人々とは天地ほどの開きができる。』
金融知識がつけば、すぐに満足した人生が送れるわけではないでしょうが、そういった知識も満足した人生を送るための一要素になり、その積み重ねが人生を満足に導くのでしょうね。
積み重ねといえば、投資でいえば『積立投資』ということで、積立投資のひとつである企業型DC(確定拠出年金)における投資信託への配分比率と金融リテラシーのアンケート結果をクロス分析してみると下記の通り、金融リテラシーの高い人は投資信託への配分割合が高い傾向が見て取れます。
『人生の満足度』と『会社の福利厚生制度以外での資産形成』
アンケートでは、福利厚生制度以外で資産形成実施の有無と利用商品についても聞いており、これを人生の満足度とクロス分析した結果、人生の満足度の高さと株式や投資信託で福利厚生以外での資産形成実施に一定の比例関係が見て取れます。
ちなみに、投資の神様といわれているウォーレン・バフェットは
『お金を使った後で、残った分を貯金するのではない。貯金したあとで、残った分を使うのだ。』
(Do not save what is left after spending; instead spend what is left after saving.)
と言っています。
言うは易し行うは難し、と思ってしまいますが、確かに正論、心がけたいものです。
ここまでご覧いただいた内容をまとめますと、
- 人生の満足度とお金・経済面での順調度合いや金融リテラシーには一定の相関がある
- 人生の満足度が高い人は資産形成にも前向きな傾向があり、会社の福利厚生以外でも資産形成を行っている割合が相対的に高い
- 金融リテラシーの高い人は企業型DCでの運用も積極的な傾向
- 人生満足度の高い人は株式や投資信託の利用にも積極活用している割合が高い
ということになります。
みなさんも金融知識を身につけ、更なる資産形成を進めて、もっと幸せを目指してみませんか?
出所:*野村證券「第3回ファイナンシャル・ウェルネス(お金の健康度)アンケート」
調査期間:2023年10月3日(火)~2023年10月13日(金)
調査方法:リサーチ会社を利用したWEBアンケート
調査対象:従業員数1,000人以上の上場企業従業員
回答者数:11,052名
本コラム記載のデータは、すべて当該アンケート回答によるものです。
文責:野村證券株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室 兼 ワークプレイス・ソリューション部 籔内 大助