「ローンと信用」の基礎知識 第3回 ローンってなに?

買い物をするときに、手持ちの資金賄えない場合に利用するのがローンです。
ローンには私たちの生活の利便性を向上させる役割がありますが、使い方を誤ると人生設計を狂わせてしまう可能性もあります。本稿では、ローンについて知識をつけて、ローンと正しく向き合えるように、ローンの定義や種類を整理しつつ、ローンの目的や注意点、ローンを利用した信用の「作り方」を解説します。
ローンの定義
「ローン」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?「借金」というイメージを持つ方もいるのではないかと思います。ローンは確かにお金を借りることなのですが、金融機関や貸金業者から借り入れた資金を、一定の期間内で元本と金利を合わせて返済する商品でもあります。
具体的には、借り手が一定の金額を借り入れ、それを指定された期間と回数で分割して返済する仕組みのことです。ローンは、(表1)の要素で構成されています。
基本要素 | 説明 |
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元本 | ローンで借り入れる元本は、実際に借りた金額です。この金額を基にして利息が計算されます。 |
金利 | 金利は、借り入れた元本に対して支払う利息のことです。金利はローンの条件や契約に基づいて設定され、返済期間中に支払われます。 |
返済期間 | ローンの期間は、借りたお金を返済するための期間です。住宅ローンや自動車ローンなど、目的によって期間が異なります。 |
返済スケジュール | ローン元本と金利をどのように返済するかスケジュールを設定し、毎月の返済額が計算されます |
ローンの種類
ローンには大きく分けると2つの種類があります。「使う目的が限定されているローン」と「使う目的が限定されていないローン」です。それぞれの例を挙げると、(表2)のようになります。
(表2)ローンの種類の例目的が限定されているローン | 目的が限定されていないローン |
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住宅ローン | フリーローン |
アパートローン | カードローン |
自動車ローン | |
教育ローン | |
医療ローン |
目的が限定されているローンは、特定の目的のために数百万円から数千万円以上といった、高額な借り入れができるローンです。住宅ローンなどは身近な例として思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。目的が限定されているローンは、目的が限定されていないローンに比べて金利が低い傾向にあります。
一方、目的が限定されていないローンは、好きな目的に借りたお金を使うことができます。例えば、生活費に充てることもできますし、旅行や冠婚葬祭に使うこともできます。一方で、金利は目的が限定されているローンに比べると高い傾向にあります。フリーローンとカードローンの大きな違いは、取り扱っている会社の違いです。フリーローンは、主に銀行が取り扱っており、カードローンは、銀行の他、信販会社やクレジットカード会社、消費者金融業者などが取り扱っています。
ローン利用の目的と注意点
次にローンの目的と注意点について解説します。前項では、目的が限定されているか、されていないかで、それぞれのローンの代表例を挙げました。もう少し、ローンの目的について深掘りしていきます。ローンは適切に利用することで、様々なニーズに対応し、人生を豊かにしてくれます。ローンの目的は、大きく次の3つに分けることができます。
住宅など高額な買い物のため
ローンの最も一般的な目的の一つは、大きな資産を取得するためです。住宅ローンは家を購入するために利用されます。これにより、一括で購入するのが難しいほどの大きな金額を分割して返済できるため、住宅の所有が可能となります。自動車ローンも、住宅ほど高額ではないものの、同様です。
教育資金として
教育資金は、事前に貯めておくなどの準備も必要ですが、事情により、必要金額を貯めることができなかったということもあるかもしれません。教育ローンには保護者の名義で借りる「教育ローン」と、子どもの名義で借りる「貸与奨学金」があり、いずれも教育機関での学費や生活費を賄うことを目的としています。大学などの高等教育では高額な学費がかかるケースもありますが、教育ローンや奨学金を利用することで、手元に十分な教育資金がなくても、子どもが大学に通うことができたり、より良い環境で学べたりすることもあるでしょう。
緊急時の資金として
予期せぬ出費や緊急の支出が生じた場合、ローンは急な資金調達手段として利用されることがあります。医療費や壊れたモノの修理費、災害などによる被害復旧のための資金の調達などに使うことができます。
一方で、ローンの使い方を誤ると、逆に人生を大変なものにしてしまうのも確かです。目的を理解した上で、しっかりと注意点にも目を向けましょう。ローンを組む際のポイントを5つまとめました。
1.経済状況の確認
自身の経済状況を正確に把握することがとても大切です。収入、支出、貯蓄などをしっかりと洗い出し、将来的な返済能力を見極めましょう。ローンの返済は中長期にわたります。無理な借り入れは後の人生の長い負担となりかねません。
2.返済計画
返済計画を慎重に検討しましょう。月々の返済額や期間を理解し、自身のライフスタイルや将来の予定に合わせて選択することが重要です。無理な返済計画はストレスを生むだけでなく、信用にも悪影響を及ぼします。
3.金利
金利はローンを組む上で重要なポイントです。金融機関や貸金業者によって金利条件は異なります。どこで借りると金利は何パーセントなのか?など必ず借りる前に比較しましょう。先述のように、ローンの返済は中長期です。金利は低い方が返済額も低くなり、負担が減ります。しかし、低金利が魅力的でも、その後の変動金利や固定金利なども確認し、将来の金利変動に備えることも大切です。
4.契約書の確認
文字が細かいからといって、契約書や細則を読み飛ばさないでください。手数料や違約金など、見逃しがちな隠れたコストがあるかもしれません。契約内容を確認し、不明点があれば遠慮なく質問しましょう。
5.ライフプランを考える
ローンを組む際にはしっかりとライフプランをたてて、未来を見据えて組みましょう。そして、将来のライフプランやキャリアの変化、急な支出などの際も返済を続けられるよう、余裕を持たせた返済計画を立てましょう。
ローンを組む際は、急いでローンを組むのではなく、落ち着いて、複数の金融機関のローンのサービス内容を比較・検討するための時間を確保することも大切です。焦って契約すると、後で後悔することになりかねません。できる限り多くの情報を収集し、時間的な余裕をもって、冷静に判断できるようにしたうえで時間に余裕をもってローンを組みましょう。
ローンを利用した信用の構築方法
第1回、第2回と信用の重要性について解説してきました。ローンを適切に利用することで、あなたの履歴が信用情報機関に管理・保管され、信用を構築することができます。最後にローンを利用した信用の構築方法について解説します。
ローンの利用における信用の構築で最も大切なことは、ローンの返済期限を守り、定時に返済を行うことです。定時返済は信用の向上に直結し、支払いが滞ることなく借り入れを返すことが信頼性を示すポイントとなります。
支払いが滞ると、その情報が信用情報機関に登録され、信用を傷つけることになります。まずは、毎月の支払いをしっかりと行うことを意識しましょう。ボーナスがあるビジネスパーソンには、繰り上げ返済の検討も一つの手段です。
繰り上げ返済をすることで、元本を早く減らすことができます。これにより、返済期間を短くしたり、毎月の返済額を低くしたりすることができます。ただし、手数料などがかかる場合があります。事前に確認しましょう。そして、定期的な返済を行うためには、安定した収入があることが欠かせません。安定した収入を得ていることを証明できることや、どれくらいの収入を得ているかということは、ローンを組む上でも、返済する上でも大切です。
ローンを利用しない場合、信用はどうなる?
また、ローンを全く使わないのも、信用を構築できないことにも触れておきます。「ローンを使わなければ、信用を傷つけにくいのだから、結果的に信用が高まるのではないか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
今まで1度もクレジットカードやローンの契約を結んだことがなく、信用情報機関に信用情報がない人のことを「スーパーホワイト」といいます。
一方で、過去に長期延滞、債務整理、強制解約などの金融事故を起こし、長期にわたってクレジットカードを利用できずに、信用情報が白紙状態になっている人のことを「ホワイト」と言います。
信用情報が全くないという点は同じですが、中身は全く違います。しかし、金融機関にとって顧客がスーパーホワイトか、ホワイトかを見分けるのは難しいと言われており、一定の年齢以上のスーパーホワイトの人は、ローンの審査に通過しづらくなることがあるようです。 信用は、積み重ねが大切です。避けて通るばかりではなく、適切に利用して、上手に信用を積み重ねていきましょう。
まとめ
ローンは賢く活用すれば、夢の実現をサポートし、生活を豊かにすることができる重要な「ツール」といえます。適切な選択と計画的な返済が、家計の健全性と信用の向上に繋がります。ローンを組むには、冷静な判断と理性的な行動が大切です。未来の自分のために、ローンの基礎知識を身につけてください。
- このコラムは、2023年12月時点の情報に基づくものです。
編集協力:寺澤 真奈美 2級ファイナンシャルプランニング技能士/
編集・文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室