【3分で読める】日本は高スキル評価。しかし社会人にはリスキリングが必要?!

最近、社会人の学び直しとして【リスキリング】という言葉をよく聞きます。リスキリングとは既存のスキルや知識を新しい技術や職務に適応するために再度習得したり、新たなスキル・知識を身に付けたりすることです。政府も急速な技術革新や市場の変化に対応するための施策としてリスキリングを推進しています。
では、OECD(経済協力開発機構)が実施した「Survey of Adult Skills 2023」の結果を踏まえて、リスキリングの必要性について見ていきましょう。
社会生活で求められるスキルを測定するOECD調査で日本は上位
OECD主催で2022年から2023年にかけて、16歳から65歳の成人を対象に各国の成人の社会生活で求められるスキル「成人力」を測定する調査が31ヶ国・地域から約16万人が参加して実施されました。調査項目は①読解力(文章を読んで理解、評価、熟考する能力)、②数的思考力(数学的な内容、情報、アイデアを考え、利用して推論する能力)、③問題解決能力(解決方法が即座に利用できない状況において、目標を達成できる能力)の3分野で、日本は3分野共に第2位と高得点を獲得しました。
順位 | 読解力 | 平均得点 | 順位 | 数的思考力 | 平均得点 | 順位 | 問題解決能力 | 平均得点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | フィンランド | 296 | 1 | フィンランド | 294 | 1 | フィンランド | 276 |
2 | 日本 | 289 | 2 | 日本 | 291 | 2 | 日本 | 276 |
3 | スウェーデン | 284 | 3 | スウェーデン | 285 | 3 | スウェーデン | 273 |
4 | ノルウェー | 281 | 4 | ノルウェー | 285 | 4 | ノルウェー | 271 |
5 | オランダ | 279 | 5 | オランダ | 284 | 5 | オランダ | 265 |
6 | エストニア | 276 | 6 | エストニア | 281 | 6 | デンマーク | 264 |
7 | ベルギー | 275 | 7 | ベルギー | 279 | 7 | エストニア | 263 |
8 | デンマーク | 273 | 8 | デンマーク | 279 | 8 | ベルギー | 262 |
9 | 英国 | 272 | 9 | スイス | 276 | 9 | ドイツ | 261 |
10 | カナダ | 271 | 10 | シンガポール | 274 | 10 | カナダ | 259 |
OECD平均 | 260 | OECD平均 | 263 | OECD平均 | 251 |
若年層の調査でも日本は上位
2022年にOECDが実施した、PISA(Programme for International Student Assessment : ピザ)と呼ばれる国際的な調査でも、日本は上位という結果になっています。
PISAは、義務教育終了段階の15歳の生徒を対象に、読解力や数学、理科などの能力を測定した「学習調達度調査」です。
2022年の調査結果では、数学的リテラシー(OECD加盟国中:1位)、読解力(同:2位)、科学的リテラシー(同:1位)と3分野全てにおいて世界トップレベルという結果になっており、若年層においても日本のレベルの高さが示されています。
日本の年齢層別読解力では、年齢を重ねると落ち込み幅が大きくなる
「Survey of Adult Skills 2023」で高得点の国々の各分野における得点を年齢層別に見ると、概ね得点は25-34歳をピークに、年齢を重ねると徐々に低下していく傾向が見られます。日本も同様の傾向ですが、読解力で25-34歳から55-64歳の得点の落ち込み幅が33ポイントとOECD平均の30ポイントを上回る点が目立っています。OECDはその理由として世代間の教育・訓練の質・量の差を指摘しています。

高齢化・人口減少の中で物価と賃金の好循環が求められている日本では生産性向上が必要となっています。OECDのデータは、そのためにリスキリングが欠かせないことを示唆しています。
まとめ
社会人の多くが労働の場とする企業では、人的資本経営の重要性に注目が集まっています。人的資本の中心である人材の価値を高め、エンゲージメントや生産性を高めていく動きの中でも「リスキリング」は注目されるキーワードとなっています。また、企業等が従業員のリスキリング支援をする動きもあります。人生100年時代、自分らしく、自分の経験を存分に活かした働き方を実現するためにも、リスキリングについて考えてみてはいかがでしょうか。
編集協力:野村證券株式会社 投資情報部 服部 哲郎
編集/文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部
記事公開日:2025年4月14日