2024.02.16 NEW
桐谷広人さん「新しいNISAでの優待株投資は配当も重視」、桐谷選定の11銘柄
撮影/藤井洋平
投資歴40年、保有銘柄1,200超の桐谷広人さんは、株主優待株に詳しい投資家として有名です。「非課税保有期間が無期限化した新しいNISAは、私のような優待投資家にとっても非常にありがたい制度」と言います。桐谷さん自身が新しいNISAを活用した場合の投資スタイルについて話を聞きました。
農耕的な投資スタイルで株主優待生活を楽しむ
- まず、桐谷さんの投資スタイルを教えてください。
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桐谷:私の投資スタイルは「株主優待がもらえる銘柄をなるべく安い時に買って、長期で運用する」です。1984年に投資を始めた当初は、株価の値上がりを狙うキャピタルゲイン重視の投資スタイルだったんですが、これが本当に難しく、過去に何度も大損をしています。キャピタルゲイン重視の投資スタイルは狩りのようなもので、ライオンやクマなど大物に出会えることもあれば、一日中歩き回っても何も狩れないこともあるし、逆に襲われることもあります。
一方で、株主優待は大きく変わることが少なくて、いつ頃どういうものがもらえるのか予測できます。だから今は、安くなった銘柄を買って、じっくり持って、株主優待をいただいて人生を楽しむ、そんな農耕的な投資スタイルの方が自分には合っているんだろうなと思っています。時々、株主優待が廃止になってがっかりすることはありますが、株価の上げ下げを気にせずに投資し続けられることで精神的にも安定し、非常に調子がいい気がしています。
株主優待で手に入れた愛車を乗り回し、有効期限が迫った株主優待からどんどん使っています
桐谷さんが新しいNISAで運用するなら
- 桐谷さんご自身が新しいNISAを活用する際の考え方についてうかがいます。2023年9月にダイヤモンド社から発行された『一番売れてる月刊マネー誌ZAiと作った桐谷さんの株入門 改訂版』(桐谷広人/ダイヤモンド・ザイ編集部:編)の中で、桐谷さんは「配当も高い株主優待株」を挙げていました。
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桐谷:新しいNISA制度では、得た配当にかかる税金が非課税になるので、これを活かさない手はないですよね。株主優待がもらえる銘柄の中でも特に配当利回りが高い銘柄は新しいNISAを活用した方がいいだろうなと考えています。
また、新しいNISA制度が始まる前からではありますが、減配せず、配当の維持または増配を続けている累進配当銘柄にも注目しています。
- 新しいNISAでは非課税期間が無期限なので、長期運用を前提とすると、配当が安定していそうな銘柄は良さそうですね。他に、長期運用の観点から見た時に重視したいポイントはありますか。
- 桐谷:長期運用を前提としているので、株主優待に長期保有優遇がある銘柄もチェックしています。長く持ち続けることで、優待の内容が良くなるのでうれしさも増しますよ。
- 2024年1月現在、桐谷さんご自身が新しいNISAを活用して株式を買うとしたらどんな銘柄を候補に挙げますか。
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桐谷:すでに私が投資している銘柄も含めて紹介します。株主優待もしくは、公式には株主優待制度に含まれていないものの企業から贈呈される“隠れ株主優待”がある銘柄の中から、配当利回りが高い銘柄、累進配当銘柄、長期保有優遇があるという観点で10銘柄、加えて株主優待はないものの高配当という意味で新しいNISAでの運用に良さそうな1銘柄を候補に挙げました。
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株価を含む各種データは2024年1月31日時点のものであり、実施されている株主優待が変更、廃止される場合もあります。【優待内容】の欄には優待内容の一部を抜粋して記載しています。お買付を検討される際は、必ず「詳しくはこちら」と記載してあるリンク先のページで、正確な内容や留意事項などをご確認ください。
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三菱商事(8058)
【株価】2,565円
【予想配当利回り】2.73%
【予想1株当たり配当】70円(東洋経済新報社予想)リコーリース(8566)
【株価】5,080円
【予想配当利回り】2.95%
【予想1株当たり配当】150円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
100株保有:1年未満で2,000円相当のQUOカード、1年以上3年未満で4,000円相当のQUOカード、3年以上で5,000円相当のQUOカード(3月のみ)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=8566&MKTN=アグレ都市デザイン(3467)
【株価】1,626円
【予想配当利回り】4.8%
【予想1株当たり配当】78円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
100株保有:1,000円相当のQUOカード(3月のみ)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=3467&MKTN=ケイアイスター不動産(3465)
【株価】3,500円
【予想配当利回り】5.14%
【予想1株当たり配当】180円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
100株保有:1,000円相当のQUOカード(9月のみ)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=3465&MKTN=バロックジャパンリミテッド(3548)
【株価】822円
【予想配当利回り】4.62%
【予想1株当たり配当】38円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
100株保有:当社の日本国内の店舗(一部除く)及び通販サイト「SHEL’TTER WEB STORE」で利用できる2,000円分のクーポン(2・8月)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=3548&MKTN=ベルーナ(9997)
【株価】636円
【予想配当利回り】3.22%
【予想1株当たり配当】20.5円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
100株保有:(1)と(2)(3・9月)
(1)以下からいずれか一つ
(A)当社運営の通信販売で使用できる1,000円相当の優待券
(B)ベルーナオンラインストアで使用できる1,000円相当の優待ポイント
(C)当社取り扱いの1,000円相当の食品、お菓子、ワイン、日本酒のいずれか
(2)ベルーナグループが運営及び提携するホテル、飲食店、小幡郷ゴルフ倶楽部、SPA&SAUNA コリドーの湯で使用できる1,000円相当の優待割引券2枚
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=9997&MKTN=日本エスコン(8892)
【株価】1,018円
【予想配当利回り】4.72%
【予想1株当たり配当】48円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
1,000株保有:1年以上2年未満で1,000円相当のQUOカード、2年以上で3,000円相当のQUOカード(9月のみ)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=8892&MKTN=山陰合同銀行(8381)
【株価】1,046円
【予想配当利回り】3.44%
【予想1株当たり配当】36円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
1,000株保有:1年未満でVJAギフトカード1,000円分、1年以上で5,000円相当の特産品など(3月のみ)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=8381&MKTN=稲畑産業(8098)
【株価】3,225円
【予想配当利回り】3.72%
【予想1株当たり配当】120円(東洋経済新報社予想)
【優待内容】
100株保有:6カ月未満で500円相当のQUOカード、6カ月以上3年未満で1,000円相当のQUOカード、3年以上で2,000円相当のQUOカード(9月のみ)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=8098&MKTN=サムティ(3244)
【株価】2,520円
【予想配当利回り】3.73%
【予想1株当たり配当】94円(サムティ予想)
【優待内容】
200株保有:当社が関与する全国各地のホテルの無料宿泊券1枚(12月のみ)
詳しくはこちら→
https://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/users/kabunushi/yutai_d.asp?RCODE=3244&MKTN=ラサ商事(3023)
【株価】1,697円
【予想配当利回り】4.01%
【予想1株当たり配当】68円(ラサ商事予想)
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(注1)株価は2024年1月31日終値、予想1株当たり配当は2月1日時点、予想配当利回りは1月31日終値を基に計算
(注2)予想1株当たり配当は東洋経済新報社より、予想値がレンジの記載である場合は下限値を採用(東洋経済新報社の予想がない銘柄は、会社予想を記載)
(出所)東洋経済新報社より、野村證券投資情報部作成
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桐谷:総合商社の三菱商事(8058)は2024年1月1日(効力発生日)に1株を3株に分ける株式分割を実施し、個人投資家にも手が届きやすい銘柄になったことでも注目している累進配当銘柄です。株主優待はありませんが、カレンダーとともに静嘉堂文庫美術館のペア招待券(一人1,500円相当)、東洋文庫ミュージアム招待券2枚(一人900円相当)という“隠れ株主優待”があるのがうれしいです。
金融事業会社のリコーリース(8566)も累進配当銘柄です。100株保有で初年度が2,000円分、1年以上3年未満で4,000円分、3年以上で5,000円分のQUOカードがもらえるという長期保有優遇があります。
不動産会社のアグレ都市デザイン(3467)は配当利回りが5%弱、ケイアイスター不動産(3465)は5%以上と、特に利回りが高めです。加えてともに、100株保有でQUOカード1,000円分がもらえます。ケイアイスター不動産はさらに500株以上保有すると、QUOカード3,000円分と優待の内容が良くなります。
保有数によっても株主優待の内容が変わらない場合は、一つの銘柄に集中して投資するよりも複数の銘柄に分散して投資するようにしています。
総合アパレル会社のバロックジャパンリミテッド(3548)も、配当利回りが4.5%前後と高いことに加え、100株保有で半年に1回、店舗(一部除く)及び同社の通信販売サイトで使える2,000円分のクーポンがもらえます。クーポンを使った通信販売サイトでの買い物は金額にかかわらず送料が無料になるので、女性の友達にピアスをプレゼントしました。
通信販売総合商社のベルーナ(9997)は、100株保有で年に2回、通信販売優待割引券1,000円分、ネット専用優待ポイント1,000円分、食品やワインなど自社取扱商品1,000円相当(送料無料)の中から一つ選べるようになっています。さらに、ベルーナグループが運営及び提携するホテルや飲食店などで利用できる1,000円分の優待割引券が2枚もらえます。現在、株価が600円強で1単元(100株)6万円台からと、比較的買いやすい銘柄だと言えるのではないでしょうか。
右の椅子はベルーナの株主優待で購入したもの
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不動産会社の日本エスコン(8892)は一度、累進配当方針を見直したものの、その後に継続することを改めて発表しています。配当利回りが5%弱と高く、1,000株保有で初年度は1,000円分、2年以上で3,000円分のQUOカードが届きます。私は最初に累進配当が発表された2016年10月に1株310円で1,000株買いました。それからどんどん配当が増えていったため、計算すると投資金額に対する累計リターンは15%台にもなり、加えてQUOカード3,000円分を毎年もらっている状況になっています。
山陰合同銀行(8381)も累進配当銘柄です。1,000株保有で初年度はVJAギフトカード1,000円分、2年目以降はシャインマスカットや梨など5,000円相当の地元特産品などがもらえるのが楽しみとなっています。
化学品専門商社の稲畑産業(8098)は100株保有では、6カ月未満で500円分、6カ月以上3年未満で1,000円分、3年以上で2,000円のQUOカードがもらえるという長期保有優遇があります。
不動産会社のサムティ(3244)は、200株保有で同社が関与する全国各地のホテルの無料宿泊券が1枚、300株保有で2枚が届くので、講演で全国に行く私には非常にありがたいです。また、株主優待ではありませんが、議決権を行使すると謝礼としてQUOカード1,000円分がもらえるという“隠れ株主優待”もあります。
株主優待がない銘柄ではありますが、専門技術商社のラサ商事(3023)は配当利回りが4%前後と高く、新しいNISAを活用して買う銘柄の候補に挙げたいと考えています。今はだいぶ株価が上がりましたが、私は2013年3月に1株668円で100株買っています。1株当たりの配当金が68円(年間)なので、6万6,800円の投資金額に対して毎年約10%の配当をもらっているようなものです。割安な株式を長期保有していると、こうした楽しみが生まれる時もあります。
- 桐谷広人(きりたに・ひろと)
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1949年広島県生まれ。25歳でプロ棋士になり、東京証券協和会将棋部の師範をしていたことをきっかけに投資と出会う。リーマン・ショックでの損失を機に優待株式への投資に切り替え、ノウハウを確立。2024年2月現在、資産は5億円に到達した。株主優待で暮らす投資家として、テレビや雑誌、講演活動を中心に活躍。著書には『一番売れてる月刊マネー誌ZAiと作った桐谷さんの株入門 改訂版』(桐谷広人/ダイヤモンド・ザイ編集部:編)などがある。
※本コラムで取り上げられた投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。
※ご投資に際しては、株主優待以外の要素についてもご確認の上、ご自身でご判断ください。