2025.06.16 NEW
半導体製造装置メーカーの株価は昨夏以降軟調に 「足踏み」理由と今後の見通しは? 野村證券・村山誠
写真/竹井俊晴(人物)
半導体市場は、生成AIが需要のけん引役となり、今後も拡大が予想されています。半導体を作るための機械である半導体製造装置の企業の株価は、2024年夏以降、軟調な展開が続いています。投資家は半導体製造装置メーカー株については、どのように見たら良いでしょうか。野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの村山誠が今後の展望を解説します。
中長期的に拡大予想の半導体製造装置市場
- 世界の半導体製造装置市場の見通しをどう見ていますか。
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下の図の通り、世界の半導体製造装置市場は、今後も拡大していく見通しです。
ここで、2020年以降の動きを振り返っておくと、2020年から2022年にかけて大きく拡大しましたが、背景には、コロナ禍におけるリモートワークやステイホームへの対応で、パソコンやスマホなどの電子機器への需要が急拡大したことが挙げられます。それらの需要が一巡したことで、2023年に半導体製造装置市場は、若干ながらも縮小となりました。
その後、AIの普及に伴い、AI技術実現のためのデータセンターへの投資が増加しました。それらの施設で用いられる半導体への需要が急拡大し、半導体製造装置市場も2024年には拡大に転じました。
(注)実績はSEMI(国際半導体製造装置材料協会)、予想は野村證券エクイティ・リサーチ部(2025年6月6日時点)。
(出所)SEMI、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成
短期的に減益局面を迎える
イメージ画像
- 半導体製造装置市場の拡大基調が続く中で、半導体製造装置メーカーの株価が軟調なのはなぜでしょうか。
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暦年ベースでみると、半導体製造装置市場は拡大が続く見込みですが、これから短期的には、足踏み状態となる局面を迎えるとみられます。
下の図は、調査会社ファクトセット集計によるアメリカの主要半導体製造装置メーカーの四半期EPS(1株当たり利益)の前年同月比の増減益率の推移を示したものです。これから減益局面を迎えると予想されています。
(注)予想は2025年6月6日時点のファクトセット集計による市場予想平均。アプライド・マテリアルズの直近実績は2025年2-4月期。
(出所)ファクトセットより野村證券投資情報部作成
- 減益局面を迎える理由を教えてください。
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バイデン政権以来の米国政府による対中技術規制に加え、トランプ政権による貿易・関税政策に伴う不透明感等から、設備投資に対し慎重な姿勢を示す半導体関連企業が多くなっていることが挙げられます。このため、半導体製造装置メーカーも、相応の影響を受けるとみられます。
ただ、先日のエヌビディアの四半期決算でも見て取れたように、AI向けなど最先端の半導体製品への需要は足元も旺盛です。主要半導体受託生産企業においては、能力増強投資が引き続き行われています。このため、2026年にかけて半導体製造装置市場は拡大が予想されます。
エントリーを検討するタイミングに差し掛かってきている
- 株式投資という観点からは、半導体製造装置メーカーの株価推移をどう見れば良いでしょうか。
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下記のグラフが示すように、主要半導体製造装置メーカー各社の株価は、2024年7月に史上最高値を付けた後に下落して、しばらく軟調に推移しています。株式市場では、先ほど見たような業績動向を織り込んでいるとみられます。
(注)株価は日次で、2022年末=100とする指数。直近値は2025年6月6日。
(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成
半導体や半導体製造装置のように、循環的に景気が変動する非常にシクリカルな業種では、市況が悪い局面でエントリーすることが、株式投資のパフォーマンスを上げるうえでは重要です。今後、2~3四半期で業績が大底を打つことが予想されることから、エントリーを検討するタイミングに差し掛かっていると考えています。
- エントリーする際には、どのような銘柄が選択肢として考えられるでしょうか。
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まずはアプライド・マテリアルズが挙げられます。半導体製造装置の世界的な大手企業で、多岐にわたる半導体製造工程のうち、半導体ウエハーの処理を行う前工程と呼ばれる工程において使用される装置を中心に、多くの製造装置を手掛けています。
世界の主要な半導体企業を顧客とし、保守要員として顧客の製造施設に技術者を常駐させています。この結果、顧客が製造現場で抱えている課題や将来の技術的なニーズなどについて的確に把握することができています。そして、業界最大級の研究開発費を投入し、新製品の開発や、既存製品に改良を加えることで、競争力の維持・向上を図っています。
もう1社、KLAも挙げたいと思います。同社は半導体製造における歩留まりの管理やプロセス監視、診断、制御を行う装置の設計・製造を行っていて、特に、ウエハー検査やプロセス制御分野では、圧倒的なシェアを維持しています。単なる装置販売にとどまらず、顧客の工程改善や歩留まり向上に直結するコンサルティングやデータ解析ソリューションも提供しています。
検査装置はそれなりの金額がかかる製品ですが、顧客にとってみれば、製品歩留まりの向上は収益性の向上に直結することから、KLAが提供する製品・サービスに価値を見出し、利用しています。
- 軟調だった株価が反転する兆しとなる材料として、今後の注目点は何でしょうか。
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今後、四半期決算などを通して、業績の底入れから回復の時期が見えるようになれば、株式市場ではそれを織り込むようになり、株価は上昇基調に転じると予想されます。そして、それぞれの企業が、過去最高益を更新していく確度が高まれば、株価も上場来高値を更新していくと予想されます。
株式投資という観点からは、半導体製造装置メーカーへのエントリーを検討すべき時期が来つつあると考えています。

- 野村證券 投資情報部 シニア・ストラテジスト
村山 誠 - 1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。
※記事の中で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。