2026.02.20 NEW

経済アナリスト・馬渕磨理子さん「NISAは若い人がやるものという誤解」

経済アナリスト・馬渕磨理子さん「NISAは若い人がやるものという誤解」のイメージ

撮影/北原裕司

インフレ環境下で、資産形成の重要性が高まっています。ただ、NISA(少額投資非課税制度)を使って投資したいけれども、「株価が急上昇した今、遅いんじゃないか」「もう若くないから今さら積立投資を始めても」という思いから、踏み切れない方もいるかもしれません。日本金融経済研究所代表理事で経済アナリストの馬渕磨理子さんに、改めてNISA投資の考え方について、野村證券の東英憲が聞きました。

(本コラムは2026年2月12日に収録した、マーケット解説動画(「NISAの日」特別対談 馬渕磨理子さんに聞く「NISA “再”入門」)の内容を再構成したものです。特別対談動画はこちら。視聴期限:2026年3月31日)。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん「NISAは若い人がやるものという誤解」のイメージ

馬渕さんが「50代からNISAを始めても遅くはない」と考える理由

東英憲(以下、東)

NISAは2014年からスタートし、口座数や買付額は着実に増加しています。NISAと聞くと若い人がやるイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際、どのような年代の人が利用しているかを詳しく見てみましょう。「20歳代」「30歳代」の若い世代も多いですが、実は最もNISA口座数が多いのが「50歳代」、次いで「40歳代」と続きます。

年代別NISA口座数

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(出所)金融庁Webサイト「NISA口座の利用状況(令和7年6月末時点)」より野村證券マーケティング部作成。口座数は千の位以下切り捨て。

馬渕磨理子さん(以下、馬渕)

利用者の年代を見ると、若い人ばかりではないことが分かりますよね。40代、50代の方の中には「NISAは若い世代のためのもので、私たちが始めるには少し遅いかもしれない」と誤解されている方もいますが、NISAは全世代対象で、むしろど真ん中の世代と私はお伝えしています。人生100年時代を考えると、60代の方がNISAで資産形成を始めても、十分間に合うと思います。

例えば、65歳までに3,000万円を準備したい場合、毎月いくら積み立てる必要があるかを考えてみましょう。下の図表は開始年齢と利回り別に毎月の積立金額をまとめています。

65歳で3,000万円:毎月いくら積み立てる?

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(出所)各種資料より日本金融経済研究所作成

20歳から始めると、45年間という時間を味方につけることができます。将来の投資成果を保証するものではありませんが、利回り5%で仮に運用ができた場合は、毎月の積立金額は1万4,804円となります。オール・カントリー(全世界株式インデックス)の過去20年間の平均利回りに相当する利回り7%の試算では、毎月の積立金額は7,910円となります。20歳から毎月約8,000円で積立投資を始めて、65歳で運用資産が3,000万円になる可能性があると思うと夢がありますよね。

開始年齢が遅くなると、必要となる毎月の積立金額は大きくなりますが、収入も増えていることが考えられます。利回り5%の場合の毎月の積立金額は、30歳からでは2万6,406円、40歳は5万377円です。利回り7%の場合では、30歳では1万6,657円、40歳では3万7,034円を投資に回すと、十分な老後の資産を確保することができる可能性があるでしょう。早く始めるほど毎月の積立投資額の負担は軽くなるため、今すぐ始めることが重要です。

馬渕さんの試算では60歳からの5年間で、3,000万円を準備しようと思うと、積立金額が40万円超えます。この金額を毎月、収入から積み立てようと思うと大きいですが、退職金を含めた預貯金から考えれば、無理ではないかもしれませんね。

馬渕

おっしゃる通りですね。インフレになっていくと、現金の実質的な価値は目減りしていくので、お金の置き場所は変えていく必要があると思います。また50代、60代の方は、積立投資のタイムリミットを65歳にしないで延ばすという選択肢もあると思います。

例えば、80歳で2,000万円を目標に試算すると、50代からでも遅くありません。50歳から運用を開始した場合、30年間の年月があります。5%の利回りの場合、毎月の積立金額は2万4,031円、7%の利回りでは1万6,394円で80歳に向けて資産形成できることになります。

80歳で2,000万円:50代からでも遅くない

経済アナリスト・馬渕磨理子さん「NISAは若い人がやるものという誤解」のイメージ

(出所)各種資料より日本金融経済研究所作成

年齢に関わらず、今日が一番若い日だと思っていただきたいです。始めるのに遅すぎるということはないのかなと思います。株価は日々値動きがあり、乱高下することもありますが、長期的に積立投資を続けることが最終的に良いパフォーマンスにつながる可能性があります。私もそういう投資の仕方をしています。若い方も、50代、60代の方もNISAをぜひ始めていただき、老後生活を安心して過ごせるようになればと思います。

年齢・資金の性格別で考える金融商品の選び方

経済アナリスト・馬渕磨理子さん「NISAは若い人がやるものという誤解」のイメージ

2つのシミュレーションで、年齢と利回りに応じた毎月の積立金額の目安は分かりました。次のステップとして、どのような金融商品を選んだら良いでしょうか。馬渕さんのお考えを教えてください。

馬渕

年齢や資金の性格別にどのようなものに投資していくかがポイントになります。私は株式は成長を取りにいく商品、プロが運用する投資信託は分散と銘柄選択の手間を軽減する商品、債券は安定性を補完する商品と位置付けています。どれが良いかではなく、組み合わせが重要になります。

年齢・資金の性格別 選定ポイント

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(出所)各種資料より日本金融経済研究所作成

例えば、20代~40代の現役世代の場合、働いた収入がベースにあるため、基本的には時間を味方につけた長期的な運用で、株式や投資信託を中心に、少し攻めた運用が可能になるでしょう。大きな値動きで元本を割ってしまうことがあったとしても、収入でカバーすることができるため、成長を重視するようなポートフォリオを組むことができると思います。

50代以降になると、徐々に働いて収入を得る期間が短くなってきます。株式一辺倒ではなく、債券や投資信託を組み合わせ、安定性を重視していくことがポイントになると私は思います。値動きの非常に大きい株式の比率を調整していき、株式であれば高配当株を持つ、あるいは債券の比重を増やすといった選択肢があるでしょう。

なるほど。年齢に応じて取れるリスクを考え、商品の組み合わせを変えていくんですね。年齢に加え、自分のお金を資金の性格で仕分けしてみることも重要ですね。

馬渕

そうだと思います。例えば、インフレ対策で、「生活防衛資金」を作っていきたいのか、あるいは「余裕資金」で大幅な利益を目指していくのかによっても、投資対象は異なるでしょう。生活防衛資金ならば、価格変動が大きいとすぐに引き出したい時に、損失が出ていると、なかなか引き出しにくくなってしまいます。価格変動が比較的穏やかな商品を優先し、短期的な変動リスクを避けるということがポイントになります。一方で、ある程度、余裕資金で、中長期視点で投資ができるのであれば、株式投資で成長性の高い銘柄を選択することもできます。

馬渕さんが考える「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の投資先

馬渕さんが考えるNISAの投資先についても伺いたいと思います。NISAの年間投資枠は「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円です。非課税保有限度額(総枠)は1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円です。つみたて投資枠はインデックスファンドを中心に積立投資ができ、成長投資枠は株式やアクティブファンドを含めた投資信託など、多くの商品ラインアップから購入することができます。馬渕さんはどのような活用の仕方をお考えですか。

馬渕

私が考えるNISA枠を通じた投資先は以下の通りです。

つみたて投資枠(年間120万円)

・日本株式、世界株式に投資する投資信託

成長投資枠(年間240万円)

・株式(個別株)

・高配当ETF

・ゴールド(投資信託)

・インド株式(投資信託)

・国内REIT

まず、つみたて投資枠については、投資信託で日本株や世界株の株価指数に投資をするので良いと思います。例えば、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、オール・カントリー、S&P500指数などに積立投資をすることで、十分に資産形成できるだろうと思います。

成長投資枠については、日経平均株価、S&P500指数などに連動する投資信託でも構いませんが、もう少し積極的に投資をしたい場合は、個別株、あるいは高配当ETF、ゴールド(金)も選択肢になると思います。中でもゴールドはかなり値上がりしていますが、個人的には欠かせないと思っています。基軸通貨としての米ドルは強固なものだと思いますが、第2次トランプ政権発足後、ロシアや中国などで米ドル離れの動きが強まっており、米ドルの信頼が低下してきています。ドル離れによって、明らかにゴールドに資金が流れていることを考えると、持っておきたい投資先の1つです。

さらに新興国の成長を取りに行くことを考えると、米国や日本だけではなく、第3極のインドに注目しています。加えて、国内REIT(不動産投資信託、J-REIT)は分配金の利回りがまだ高く、魅力的な水準だと思います。東京証券取引所に上場するJ-REIT全体の予想分配金利回り(時価総額加重平均)は4%台後半で推移しています。

馬渕さんが注目されているインドは、人口増による経済成長期待に加え、地理的にも良いポジションにいると思います。米国以外で他の経済圏との連携を考えると、ヨーロッパはインドとの連携を強化しており、新興国の中でもインドの存在感が高まっています。そのような意味でハブとなるインドは、今後の成長が楽しみな国というイメージがありますね。

馬渕

そうですね。私が考える現役世代を想定したポートフォリオについては、こちらの動画で詳しく説明しています。具体的な資産クラスごとの資産配分についてもご紹介しておりますので、ご関心ある方はぜひご覧ください。

※本コラムで取り上げられた馬渕氏のマーケットや投資に関する考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。本コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。本コラムの内容等は野村證券において確認したものではなく、また、将来変更される場合があります。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん「NISAは若い人がやるものという誤解」のイメージ
日本金融経済研究所 代表理事/経済アナリスト
馬渕磨理子(まぶち・まりこ)さん
京都大学公共政策大学院 修士課程を修了。トレーダーとして法人のファンド運用を担う。その後、金融メディアのシニアアナリストを経て、現在は、一般社団法人日本金融経済研究所 代表理事として企業価値向上の研究を大学と共同研究している。イー・ギャランティ社外取締役。楽待社外取締役。国会 衆議院「財務金融委員会」で参考人として意見陳述し、事業性融資の法案可決に寄与。フジテレビ「LiveNewsα」、TBS「Nスタ」、TokyoFM「馬渕・渡辺のビジトピ」、読売テレビ「ジグザク」「関西情報ネット.ten」などレギュラー出演中。NHK「日曜討論」、フジテレビ「日曜報道」など討論番組にも活動の幅を広げる。
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野村證券 営業企画部/投資情報部 エグゼクティブ・ストラテジスト
東英憲(ひがし・ひでのり)
1990年野村證券入社。4ヶ店の支店長を歴任し、本社において事業承継とM&AをサポートするS&S部長、投資情報部長を経て現職。全国で金融経済・投資・ビジネス環境の講演等を行う。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)でCFP(日本FP協会認定)

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