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2023.06.29 NEW

健康はウェアラブル端末で見える化する時代! 期待が高まるヘルスケアDX最新事情

健康はウェアラブル端末で見える化する時代! 期待が高まるヘルスケアDX最新事情のイメージ

新型コロナウイルス感染症の流行を受けた巣ごもり環境がきっかけとなり、健康に対する意識が高まりを見せている。

そんななか注目されているのが、IoTを活用したヘルスケア商品だ。特に、運動量や心拍数・消費カロリーなど身体に関するデータを確認・管理できるウェアラブル端末はさまざまな商品が普及している。

近年は国も、IoTを活用したヘルスケアを積極的に取り入れようと、健康・介護・医療など総合的なヘルスケアDX(デジタルトランスフォーメーション)改革を進めている。

着用するだけで気軽に健康管理ができるウェアラブル端末は、多忙なビジネスパーソンにうってつけのアイテムだ。さらにIoT技術の発達とともに、端末から取得した各個人の健康データを活用する取り組みも広がっている。ウェアラブル端末やデータがどのように利活用されているか、ヘルスケアDXの最新事情を追っていこう。

高まる健康志向のなか、ウェアラブル端末で健康管理する人が増加

まずは「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う健康意識の変化」についてのアンケート調査で、具体的な意識の変化を見てみよう(図1)。

「コロナ前後の健康意識変化」の質問では、コロナ禍によって健康意識が「とても高まった」「高まった」「やや高まった」と回答した人は、合計で94.5%と、9割以上の人がコロナ禍で健康意識が高まったと回答している。なかでも「とても高まった」と答えた割合は男女とも若い世代が高いことから、コロナ禍を機に若い世代にも十分に健康が意識されるようになったといえそうだ。

図1: コロナ前後の健康意識の変化

図1: コロナ前後の健康意識の変化

出典:フォーネスライフ株式会社「『新型コロナウイルス感染症拡大に伴う健康意識の変化』についてのアンケート調査」をもとに編集部作成

調査実施機関:株式会社インテージ、調査方法:インターネット調査、対象:全国の20 ~ 69歳男女 (1)スクリーニング74,905s、 (2)本調査2,074s、調査期間:2021年6月15日 ~ 2021年6月21日

このように健康志向の意識が高まるなか、注目されてきているのがウェアラブル端末だ。

ウェアラブル端末とは、身につけて使用するデジタル機器のこと。健康志向の高まりで、腕や衣服につけて自身の健康データを簡単に取得・管理できる機能を持つウェアラブル端末が人気だ。近年、技術の向上によりリストバンド型やゴーグル型などさまざまなタイプが普及しており、主に以下のようなことが可能だ。

(1)歩いた歩数を計測
(2)移動距離を計測
(3)血圧・心拍数を計測
(4)消費カロリーを計測
(5)睡眠時間と、睡眠の質を検知し記録

ウェアラブル端末の利用実態調査によると、国内におけるウェアラブル端末の保有率は11.3%だった。保有者へ使ったきっかけを聞いてみると、「健康管理のために記録を取りたかった」が40.6%と最多で、次いで「記録や計測を自動にしたかった」が29.1%だった。つまり、健康意識の高さだけでなく、健康管理の自動化も、ウェアラブル端末利用者にとっては、重要なポイントのようだ。

実際に使っている機能を聞いてみると、「歩数の計測」71.4%、「心拍数(脈拍)の計測」61.5%と、「着信・メール、SNSメッセージの通知確認」や「音楽再生」など普段の生活に使われる機能より、健康管理機能(図内青文字)の利用率が高いことが分かる(図2)。

図2:ウェアラブル端末の人気の機能

図2:ウェアラブル端末の人気の機能

出典:株式会社マクロミル「ウェアラブルデバイス認知者1,000名にきく、利用実態・意向調査」をもとに編集部作成

調査実施機関:マクロミル、調査方法:インターネットリサーチ、調査対象:「ウェアラブルデバイス認知・保有状況調査」における、ウェアラブルデバイス認知者、割付方法:上記調査対象の出現比率に基づき性別×年代で割付、調査期間:2022年4月1日(金)~ 2022年4月5日(火)

さらに、まだウェアラブル端末を持っておらず購入に興味があるという人も、健康管理機能に高い関心をもっているようだ。

持っていない人が使ってみたい機能では、「歩数の計測」が67.2%と、保有者の使っている機能同様トップとなった。次いで、「消費カロリーの計測」59.7%、「心拍数(脈拍)の計測」57.9%と続き、保有の有無にかかわらず、ウェアラブルデバイスで健康管理をしたい意向が強く表れる結果となった(図3)。

図3:ウェアラブルデバイスに興味がある人の購入予定割合と使ってみたい機能

図3:ウェアラブルデバイスに興味がある人の購入予定割合と使ってみたい機能

出典:株式会社マクロミル「ウェアラブルデバイス認知者1,000名にきく、利用実態・意向調査」をもとに編集部作成

調査実施機関:マクロミル、調査方法:インターネットリサーチ、調査対象:全国20 ~ 69歳の男女(マクロミルモニタ会員)の認知・保有状況(図2)における出現比率に基づき性別×年代で割付、調査期間:2022年4月1日(金)~ 2022年4月5日(火)

ウェアラブル端末ではどんな健康管理ができる? どんなメリットがある?

このように人気が高まってきているウェアラブル端末だが、健康管理に向け具体的に何ができて、ビジネスパーソンにとって、どのようなメリットがあるのだろうか? ここでは3つ紹介しよう。

(1)軽量で、常時身につけていられる
何より軽量なことがメリットである。常時身につけていられるため、健康状態を継続して記録することができる。

(2)健康生活に役立てることができる
いつでも運動量や脈拍などのバイタルデータを記録できるため、それぞれの生活リズムや勤務スケジュールに沿って、その後の自分の健康維持・増進の計画を設計することにつながる。目標の達成度が分かる機能を使えば、運動不足解消の励みにもなるだろう。

(3)生活習慣病の予防や、仕事などによるストレス状態のケアに使用できる
ウェアラブル端末で取得した健康データを活用して、自身の生活習慣を見直すことができる。企業や自治体・団体によっては、そうしたデータを個人の予防医療に役立てている。例えば、従業員の健康データを提携医師などと共有し、生活習慣病やストレスによる精神疾患などを事前に予防する、といった取り組みが実際になされている。

ウェアラブルヘルスケア端末の市場規模は急成長中!

健康管理できるウェアラブルヘルスケア端末の市場に目を向けて見よう。

ある民間調査によれば、2026年に市場規模は301億米ドルに達し、2021年からの年平均成長率は13.2%と、2桁に上るとされている(図4)。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で遠隔モニタリングなどの需要が大幅に増加しており、実際にほとんどの病院・医療施設では患者モニタリングを在宅ケアの現場などにまで拡大しているという。さらにメーカーは呼吸器や血糖値、心臓モニタリング、血行動態/圧力モニタリングなどのニーズの高まりに応え、生産拡大に注力中だ。同調査では健康管理機能がウェアラブル端末の需要を高めている、と分析している。

図4:ウェアラブルヘルスケア端末の市場規模

図4:ウェアラブルヘルスケア端末の市場規模

出典:株式会社グローバルインフォメーション「ウェアラブルヘルスケアデバイスの世界市場 (~2026年):製品(トラッカー・スマートウォッチ)・タイプ(診断(BP・血糖・ECG)・治療(疼痛・インスリン))・グレード(消費者・臨床)・経路(薬局・Eコマース)・用途(フィットネス・RPM)・地域別」をもとに編集部作成

日本政府もウェアラブルヘルスケア端末市場の高い将来性を見込んでいる。そこには、日本ならではの事情があるようだ。

国もヘルスケアDXを後押し。ウェアラブル端末を用いた「PHR」がカギ

日本政府の動きの背景にあるのが、世界に先駆けて進む超高齢化だ。国の医療費もほぼ毎年増え続けている。

国としては将来にわたる保健・医療・介護にかかる費用を抑えるため、保健医療情報の高度な利活用は必須である。そこで2017年には厚生労働省が「データヘルス改革」として、IT技術を利用した次世代のヘルスケアの推進を開始した。さらに2022年には、自民党政務調査会が「医療DX令和ビジョン2030」を提言し、AIなど新技術を用いた質の高い医療情報の利活用を進めようとしている。

要は、国もヘルスケアDXを大きく後押ししている、ということだ。

ここには、ウェアラブルヘルスケア端末で収集できる健康データの活用も当然含まれる。こうした医療に関わる個人データはPHR(Personal Health Record)と呼ばれ、国のヘルスケアDX推進における中枢のひとつとなっている。もちろん、PHRは極めてプライベートなものでもあり、共有していくには個人の同意が大きな前提となる。データのセキュアな扱い方も今後の課題となっていくだろう。国はそうした健康データの利活用を行うプラットフォームとして「マイナポータル」などのしくみを活かそうと検討している(図5)。

このようにして制度やウェアラブルヘルスケア端末が普及することで、国や自治体、企業によるPHR活用のメリットをだれもが享受できるようになるだろう。医師や薬剤師、管理栄養士、自治体といったサービス事業者がPHRを共有することで、よりきめ細かな医療・介護サービスや、健康増進サービスを受けることも期待できそうだ。

図5:国や医療従事者など関係者による医療PHR利活用の概要

図5:国や医療従事者など関係者による医療PHR利活用の概要

出典:厚生労働省「PHR(Personal Health Record)サービスの利活用に向けた国の検討経緯について」をもとに編集部作成

ビジネスパーソンにとって、体は資本。手軽に自分の健康管理ができるウェアラブルヘルスケア端末は、心強い味方になる。そこから得られる個人の健康・医療データ(PHR)と、PHRを用いた今後のヘルスケアDXに要注目だ。

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