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2024.07.11 NEW

野村證券投資情報部によるチャート分析の基礎 ~目的は「相場の大局観」を得ること~

野村證券投資情報部によるチャート分析の基礎 ~目的は「相場の大局観」を得ること~のイメージ

株式などに投資している人の大半は「チャート」を見たことがあるのではないでしょうか。では、何を目的に、そしてどのようにチャートを分析するのでしょうか。野村證券投資情報部で株価や為替などのチャート分析(テクニカル分析)を約16年間にわたって手掛けてきたストラテジストの岩本竜太郎が、チャート分析の目的や手法を解説します。

チャートは市場参加者の心理を表す

株価や投資信託の値動きなどのチャートはよく目にしますが、チャート分析とはどのようなことをやるのでしょうか。

岩本竜太郎(以下、同)
チャートは「市場参加者の心理」に多大な影響を受けて形成されています。株価などが上昇しているときは市場参加者の多くが「強欲」や「楽観」、下がっているときは「恐怖」や「パニック」などの心理状態にあると言われています。過去からの知見の積み重ねで、チャート、つまり市場参加者の心理の動きにはさまざまな法則があることがわかっています。

経済の動向や企業の業績を基に、株価などを分析、予測する「ファンダメンタルズ分析」も相場の心理にたどり着くための方法です。私は、チャート分析もファンダメンタルズ分析も、いずれも正しい方法だと考えています。どちらも「山に登るため」の登山道のようなもので、どちらから登っても答えにたどり着くことができます。

チャート分析(テクニカル分析)を担当する私はひたすらチャートに冷静に向き合って、TOPIXや日経平均株価、ダウ平均株価や為替相場などの今後を予測しています。

私は毎朝、米国や欧州などの株価指数や世界の為替など、多くのチャートを見るようにしています。基本は毎日、1日ごとの値動きを追う「日足」で見て、それぞれの指数の相関などを考えています。

チャートの「値幅」が縦軸、「日柄」(年月日)が横軸です。値幅と日柄によって「波動」ができ、トレンドを形成していきます。そしてトレンドを見ながら今後の値動きを予測するのです。

相場は「値幅」と「日柄」によって波動を形成する (出所)野村證券投資情報部作成

では、何のためにチャートを分析するのでしょうか。

チャートに関しては一般的に、短期売買で細かい値動きを追うために分析をするというイメージがあるかもしれませんが、私はそうは考えていません。チャート分析の本来の目的は「市場参加者の心理を基に、市場の大局観を掴む」ことにあると考えています。中長期の市場の見通しを予測する際、チャートを過去の傾向などに照らしてみれば、上昇や下落に転じる時は波動が一定の規則性(アノマリー)に基づいていることがわかります。

値動きをチャートで探ることは本当に可能なのでしょうか 。

完全に予測するのは不可能ですが、一定程度は可能だと思います。チャートを数か月や数年というスパンで見ると、市場はランダムに動いているわけではなく、ある程度のトレンド(方向性)をもって動いているのがわかります。

株価もトレンドを形成します。そして投資家らの心理が「楽観」から「悲観」へ、逆に「悲観」から「楽観」へと変化することによって、トレンドが「折れる」瞬間があり、それらが波動を形成していきます。特に日経平均株価やTOPIXなどの株価指数は、多くの市場参加者の心理が反映されるので、よりトレンドが形成されやすいと考えています。

波動からトレンド転換が見える

では、 どのような波動が上昇や下落へのトレンド転換を示唆するのでしょうか。

前述の通り、投資家心理を示す波動にはさまざまな規則性があり、この規則性を読み解くことでトレンドを探ることができます。

下図のように、真ん中が飛び出た3つの山ができるパターンは、「ヘッド・アンド・ショルダー型(三尊型)」と言われ、トレンドが上昇から下落へと転換する典型的なチャートの形状と言えます。山と山の間の谷によって形成される「ネックライン」を割り込むとヘッド・アンド・ショルダー型(三尊型)が完成します。

高値圏(天井圏)や安値圏(底入れ)で現れやすいチャートの形 (出所)野村證券投資情報部作成

反対に、真ん中が突き出た3つの谷ができるパターンを「逆ヘッド・アンド・ショルダー型(逆三尊型)」といい、底打ちし上昇に向かうトレンド転換のサインと言えます。

その他、同じような高さの2つの山を描く「ダブルトップ型」や、2つの谷の形状になる「ダブルボトム型」などのチャートも、トレンド転換を示していると言われています。

実例に照らして見てみましょう。下の図は2015年から2018年中盤までの日経平均株価の週足のチャートです。

日経平均株価は「ダブルボトム」から上昇トレンドに転じた (注1)株価は終値ベース。
(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。
(出所)日本経済新聞社などから野村證券投資情報部作成

2015年12月に20,012円を付けた後急落し、2016年2月には14,952円まで下落しました。その後再び上昇したものの、2016年6月には再び14,952円をつけました。そこから上昇基調に転じ、17,500円前後のネックラインを突破してダブルボトムが完成し、上昇相場へと転じました。2018年1月には24,124円まで上昇しています。

コロナショックなど一時的な下落や調整局面は何度かあったものの、2024年3月には日経平均株価は初めて4万円台に到達しました。現在も日本の利上げや、米国の利下げが先延ばしになることへの懸念から上昇は一服していますが、概ねトレンドは続いているといえそうです。

このように中長期のスパンで市場の動向をつかむのがチャート分析の本当の目的です。このほかにもチャートの波動には様々なパターンがあり、それぞれを組み合わせることで、より市場の大局観に近づくことができると考えています。

野村證券投資情報部 ストラテジスト 岩本竜太郎
2005年野村證券入社、北九州支店を経て、2008年より投資情報部。以降、テクニカルアナリストとして国内外のチャート分析を手掛け、お客様向けの冊子「週刊チャート展望」などの制作を担当している。日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。
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