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社会人が知っておきたい保険の話 第2回 企業・団体の制度を活用しよう

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前回、公的保険だけでは対応できないリスクについて、民間の保険で対応することを説明しました。民間の保険加入を検討する前にお勤めの企業・団体がどのような福利厚生を用意しているかを把握して、これらでは補えない場合のみ、必要な部分について個人契約の民間保険に加入すれば、余分な保険料を支払うことなく、必要な保障を受けることができます。

企業・団体にお勤めの方には、企業・団体が福利厚生制度として、従業員や職員向けにライフイベントに備える制度を用意しています。これらの多くは民間保険を個人で契約するよりも費用が少なくて済みます。

今回は、公的保険の種類と内容と、企業・団体が提供するリスクに対応するための制度について解説していきます。

ビジネスパーソンに関係が深い公的保険(労災保険・雇用保険・介護保険)

日本は公的な保険が充実した国の1つです。健康保険と年金については第一回で解説しているのでこちらの記事を参照してください。

企業や団体に勤めるビジネスパーソンに関係の深い労災保険、雇用保険、また40代以降、負担する介護保険について順番に見ていきます。

労災保険

正式名称は、「労働者災害補償保険」といいます。労働者が職場や通勤途中で事故にあった場合や病気にかかることを労働災害、通勤災害と言います。

その際に、経済的なサポートを提供する社会保険制度です。全労働者が対象で、事業主が保険料を支払います。労働災害、通勤災害に遭ってしまい、病院にかかった場合は、健康保険は使えず、労災保険を使う必要があります。

労災保険と健康保険の違いとして、労災保険が適用されると、療養費の自己負担が必要なくなることや、一般的にことが挙げられます。

受給要件
労働災害または通勤災害に遭遇し、労働者側の故意や重過失がない場合、給付が認められます。事故発生から2年または5年以内に申請を行う必要があります(補償の種類によって、手続きの期限が異なります)。

【給付の種類】
労災保険の給付の種類は8種類に及びます。①療養(補償)給付、②休業(補償)給付、③傷病(補償)年金、④障害(補償)給付、⑤遺族(補償)給付、⑥葬祭料等(葬祭給付)、⑦介護(補償)等給付、⑧二次健康診断等給付 です。

労災保険を請求するには、労働基準監督署に請求書を提出する必要があります。本人が直接提出することも、会社を通じて提出することもできます。労働基準監督署により調査が行われ、労災認定されると保険給付を受けることができます。

雇用保険

雇用保険は失業時の経済的支援を提供したり、再就職の援助をしたりする社会保険です。労働者と雇用主が保険料を負担します。

給付の種類は複数ありますが、最も代表的である手当(一般に失業保険と呼ばれるもの)について、給付条件などを解説します。基本手当とは、労働者が失業した場合に、離職前6ヶ月間の賃金日額のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)制度です。

(※基本手当の給付日数は、失業の理由や被保険者期間年齢によって異なります)

【給付条件】
離職前の2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上あることです。ただし、倒産・解雇などの場合は、離職前の1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上あれば受給できます。

基本手当を受けるには、居住地のハローワークに離職票を提出し、求職の申し込みをしなければなりません。さらに、求職の申し込みを行った日から7日間は支給されません。また、自己都合退職の場合にはこの7日間に加え原則2ヶ月間は支給されません。

【給付の種類】
雇用保険の給付の種類は、①求職者給付(基本手当)のほかに、②就職促進給付、③教育訓練給付、④雇用継続給付(育児休業給付など)があります。

(公的)介護保険

40歳以上の人が要支援・要介護状態になったときに、介護サービスを原則自己負担1割で受けることができる制度です。

【給付条件】
65歳以上の人は原因を問わず要支援・要介護状態となったときに、40~64歳の人は加齢に伴う疾病(末期がんや関節リウマチなど、16種類の特定疾病)により要支援・要介護状態になった場合に介護サービスを受けられます。

【給付の内容】
自宅で利用する訪問介護、訪問看護、福祉用具の貸与、日帰りで施設を利用する通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)をはじめ、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の利用など、様々な介護サービスを利用できます。
(参照)厚生労働省「介護保険について」「介護保険の概要」

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企業・団体が提供する福利厚生制度も

企業や団体は、その従業員や職員に対して、福利厚生として従業員・職員のリスクに対応できる制度を用意している場合があります。その1つとして挙げられるのが団体保険です。団体保険はお勤めの企業・団体に制度がある場合、活用すべき制度の一つです。その理由と代表的な団体保険の特徴や種類、メリットを解説します。

団体保険

団体保険とは、その企業や団体に所属している従業員や職員を対象に募集をしている保険で、任意で加入することができます。

団体保険の種類
団体保険は、企業や団体によって契約が異なります。代表的な例としては、生命保険では定期保険(死亡保障)、医療保険、がん保険など、損害保険では個人賠償責任保険などが提供されています。

団体保険のメリット
団体保険のメリットは3つあります。それは、保険料が割安であること、 加入が比較的容易であること、配当が受けられる可能性があることです。

【保険料が割安】
団体保険は、所属している企業・団体が契約するタイプの保険です。集団で加入すること、保険料の徴収などの事務作業を企業が保険会社に代わって行うことなどから、多くの場合、保険料は民間の保険と比較して安くなります。お勤めの企業や団体に団体保険がある場合は、まず団体保険の加入を検討する方が保険料の節約につながることが多いです。

【加入が比較的容易】
団体保険の場合、健康状況の引受基準が、個人契約時よりも多くの場合、緩くなります。

【配当金が受けられる可能性がある】
団体保険は1年ごとに収支計算を行い、余剰金が生じた場合は配当金を受け取れる場合があります。そのため、実際の掛金が当初契約時の掛金より安くなる場合があります。

団体保険の注意点
メリットの多い団体保険ですが、3つの注意すべき点があります。

【退職すると解約】
従業員や職員でないと加入できないため、退職すると解約となります。

【年齢が上がると保険料も上がる】
団体保険の契約期間は1年間のものが多く、毎年更新するものがほとんどです。そのため、年齢が上がると保険料も上がります。

【加入時期が決まっている】
多くの場合、団体保険には加入できる時期が決まっており、それ以外の期間は加入できません。

加入を検討する時にはこれらの点を踏まえることが肝心です。

その他の福利厚生は?

福利厚生制度は企業・団体によって異なり、保険の他にも様々な福利厚生が用意されている場合があります。普段福利厚生をあまり活用されていない人も、一度この機会にご自身のお勤め先にどのような制度があるかを把握しておくと、いざという時に活用できるのでよいのではないでしょうか。代表的な例について解説していきます。

慶弔見舞金
結婚したとき、子どもが小学校に入学したとき、退職したとき、家族が亡くなったとき、災害に見舞われたときなどに金銭の支給が行われる場合があります。給付事由や給付額はそれぞれの企業・団体によって異なります。

健康診断補助
病気やケガを未然に防ぎ、健康でいるために、年に1回の健康診断のほか、人間ドックの助成や健康作りのための助成(スポーツジムの割引など)を補助する企業・団体もあります。保険ばかりに目を配るのではなく、ご自身の生活習慣にも目を向けていただき、健康をキープすることが、もっとも良い保険かもしれません。

***

日本は社会保険が充実した国の1つです。さらに、企業・団体も福利厚生として従業員や職員向けにライフイベントに備える制度を用意しています。公的保険や福利厚生制度を理解し、これらでは備えられないリスクに対して民間保険を活用することで、必要な備えを準備することができます。最後に、これまで触れてきた公的保険も含めて、日本の公的保険の概要も参考にしてください。

  • このコラムは、2023年11月時点の情報に基づくものです。

編集協力:寺澤 真奈美 2級ファイナンシャルプランニング技能士/
編集・文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室

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