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ガソリン暫定税率廃止へ どうなる?ガソリン価格とその影響

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私たちが日常的に利用するガソリンに、2025年12月31日に歴史的な変化が起きます。政府の決定により、50年以上続いてきた「暫定税率」がこの日をもって廃止されるのです。しかし、この変化は単純な「値下げ」にとどまらず、家計や社会に様々な影響を及ぼす制度変更です。本コラムでは、この変化が家計や社会にもたらす影響を、わかりやすく解説いたします。

ガソリン暫定税率とは

ガソリン暫定税率とは、1974年に道路整備を進めるための財源として導入された税金の上乗せ分です。1リットルあたり25.1円が課されており、本来は2年間の「暫定措置」として始まりましたが、50年以上にわたり延長され続けてきました。

ガソリン税の仕組み

ガソリンにかかる税金の構造は非常に複雑です。
国税の揮発油税と地方税の地方揮発油税があり、暫定税率はこれらの税率に上乗せされている部分です。
現在、私たちがガソリンスタンドで支払うガソリン代のうち、約4割が税金にあたります。例えば、160円のガソリンなら約71円が税金、残りの約89円がガソリン本体の価格です。

税の主な内訳(1リットルあたり160円の場合)
●揮発油税+地方揮発油税:合計53.8円(うち暫定税率分25.1円)
●石油石炭税:2.8円
●消費税:約14.5円(本体価格と上記税を合算した金額に対して10%)

暫定税率が廃止されると、53.8円のうち25.1円分がなくなり、消費税の軽減分も含めて1リットルあたり約28円の値下がりが見込まれます。

現行と暫定税率廃止後のガソリン価格構成について説明している図
出所:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部作成

暫定税率廃止の実施スケジュールと価格変動

政府はガソリン価格の急激な変動を避けるため、暫定税率廃止に向けて段階的に補助金を拡充します。
2025年11月13日から補助金を段階的に引き上げ、12月11日には暫定税率と同水準の25.1円を支給します。そのため、12月31日の廃止時点には補助金効果で価格の下落がすでに浸透しており、原油価格や為替の急変がない限り、当日の急激な店頭価格の変動は生じにくいと見込まれます。

暫定税率廃止の実施スケジュールと価格変動について説明している図

出所:経済産業省「資源エネルギー庁ホームページ」より野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部作成

廃止によるメリット

暫定税率廃止による主なメリットから見ていきます。

家計負担の軽減

最も直接的なメリットは家計負担の軽減です。
暫定税率廃止により、ガソリン1リットルあたり暫定税率25.1円+消費税軽減分の値下げが実現します。
参考までに、一般的な車種での月間コスト減を試算します。

軽・コンパクトにおいて現在は4,800円 (月額)かかるが、暫定税率廃止後は3,960円 (月額)、月間840円お得で年間10,080円の節約になる。普通車において現在は8,000円 (月額)かかるが、暫定税率廃止後は6,600円 (月額)、月間1,400円お得で年間16,800円の節約になる。大型車・SUVにおいて現在は11,200円 (月額)かかるが、暫定税率廃止後は9,240円 (月額)、月間1,960円お得で年間23,520円の節約になる。

計算条件:現在価格160円/L、廃止後価格132円/Lで算出(月1回満タン給油の場合)

実際の燃費や価格変動により異なります。

出所:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部作成

地方経済への好影響

特に公共交通機関が限られる地方部では、ガソリン価格の低下が家計の負担軽減につながり、消費行動の活性化が期待されます。また、観光地への移動コストも下がり、観光業にも好影響をもたらす可能性があります。

都道府県庁所在地別1世帯あたり年間ガソリン購入量ランキング(二人以上の世帯)

購入量が多いトップ5
1 鳥取市 664.01ℓ
2 津市 655.99ℓ
3 前橋市 643.60ℓ
4 山口市 638.15ℓ
5 松江市 619.49ℓ
購入量が少ないワースト5
1 東京都区部 131.80ℓ
2 大阪市 168.79ℓ
3 神戸市 234.68ℓ
4 京都市 241.50ℓ
5 さいたま市 249.25ℓ
出所:総務省統計局「家計調査年報(家計調査収支編)2024年」より野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部が作成

物価下落効果

ガソリン価格の下落は運送費の削減につながり、食品や日用品などの物価下落も期待できます。インフレで家計が圧迫されている世帯にとっては、支出負担を和らげる一助となる可能性があります。

廃止によるデメリット

次に、暫定税率廃止に伴う主なデメリットを見ていきます。

巨額の税収減と財源問題

暫定税率廃止による最大の問題は、年間約1兆円(ガソリン分のみ)に上る税収減です。全国知事会の試算では、地方分だけで約5,000億円の減収になるとされ、安定的な代替財源の確保が求められています。

インフラ整備財源の不足

暫定税率はもともと道路の整備のために導入されました。廃止により、老朽化が進む道路や橋梁の維持管理、新規インフラ整備のための財源が不足する懸念があります。

脱炭素政策との矛盾

ガソリン価格の下落により自動車利用が促進されると、CO2排出量増加に繋がる可能性があります。政府が進める脱炭素政策との整合性を問われることが想定されます。

最後に

ガソリン代は目先では安くなりますが、現在のガソリン税は、道路以外の様々な政策にも使える『一般財源』となっているため、長期的には別の形で負担が生じる可能性があります。
恩恵の度合いは生活や仕事のスタイルで変わるため、自分の給油量や通勤状況に照らして影響を確認しておきましょう。
50年続いた「暫定」制度の終了は、私たち一人ひとりの家計に変化をもたらします。この歴史的な政策転換を単なる値下げとして受け止めるのではなく、将来の負担や生活の質への影響も含めて総合的に捉え、変化を最大限に活用していきましょう。

編集/文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部

記事公開日:2025年12月17日

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