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データから見える20代のお金のこと・人生の満足度

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現代社会において、「お金」と「人生の満足度」は切っても切れない関係にあるようです。特に20代は、仕事や人間関係、将来の不安など多くの課題に直面することが多い世代です。 今回は、野村資産形成研究センターがビジネス・パーソン1万人を対象に実施したファイナンシャル・ウェルネス・アンケート(以下、「FWアンケート」) 1 の回答者の結果もとに「20代のお金のこと」や「人生満足度」の現状を掘り下げていきます。

20代はおトクに敏感? NISAとふるさと納税の利用傾向

まず押さえたいのは、20代の金融制度の活用状況です。FWアンケートによると、20代の2024年からのNISA(以下、「新NISA」)利用率は63%となっており、これは全世代平均の53%を上回っています。また、20代は「つみたて投資枠のみ」を利用している割合が相対的に高く、投資においても時間分散を心がけながらコツコツ資産を積み立てるスタイルが主流のようです。

「新NISA利用状況」20代の2024年からのNISA(以下、「新NISA」)利用率は63パーセントとなっており全世代平均の53パーセントを上回っており20代の新NISA利用の特徴としては「つみたて投資枠のみ」を利用している割合が相対的に高く投資においても時間分散を心がけ資産を積み立てるスタイルが主流となっている

また、「ふるさと納税」の利用率も20代は66.6%で、全世代の60.7%を上回っています。

「ふるさと納税利用者割合(20代/全世代)」ふるさと納税の利用率は20代は66.6パーセントとなり全世代の60.7パーセントを上回っている

この2つの制度利用率が高いことから、20代は「おトクな制度を積極的に使いたい」、「将来に向けて賢くお金を使いたい」と考える層が多いことが見えてきます。

持株会の加入率と満足度から見える課題

しかし、20代が全ての金融制度を十分に活用しているというわけではないようです。自社の持株会制度を「知っている人」のうち「加入している人」の割合(以下、「持株会加入率」)は20代で57%ですが、全世代平均では62%とやや下回っています。

「持株会加入率比較(20代/全世代)」自社の持株会制度を「知っている人」のうち「加入している人」の割合である持株会加入率は20代で57パーセントですが全世代平均では62パーセントとなり20代の加入率はやや下回っており、リスクがわからない不安や若い世代として仕事や生活で忙しく金融制度を詳しく調べる余裕がない背景が推測される

ただし持株会に加入している人の満足度は、20代・全世代共に79%と高い割合となっています。加入している人の多くが満足している一方で、加入率が相対的に低い理由のひとつとしては「持株会のメリットや特徴がまだ十分に理解されていない」ということがあるのではないでしょうか。若い世代は仕事や生活で忙しく、金融制度を深く調べる余裕がないことや、「リスクがわからない」という不安も要因として考えられます。

年収と人生満足度の関係性—年収が高ければ満足した人生になるとは限らない

次に人生満足度について見ていきます。20代の69%が「人生に満足している」と答え、全世代(67%)より若干高い水準となっています。

これを個人年収別に分けてみると、個人年収が高くなるほど人生満足度も高まる傾向がありますが、20代では個人年収2000万円以上の層では満足度が個人年収1000万円台の層よりも低くなるという結果が出ています。これは、年収に応じた責任やプレッシャーが大きく、心身の負担やストレスが増していることが背景の一因にあるのかもしれません。
また、下記グラフの通り年収400万円未満の層では、20代の人生に満足している人の割合が全世代より高くなっていて、全世代における年収600万円~800万円の層とさほど変わらない、という結果が出ています。

この2つの結果を踏まえると、20代では個人年収を引き上げることも大事ですが、あまりそれに執着し過ぎない方が満足した人生を過ごせるのではないでしょうか。

「個人年収別〈人生に満足している人〉の割合(20代/全世代)」人生満足度で20代の69パーセントが「人生に満足している」と答えており全世代の67パーセントより若干高い水準ではあるものの20代の個人年収2000万円以上の層では満足度が個人年収1000万円台の層よりも低くなるという結果になり年収相応の責任やプレッシャーが心身の負担になっていると推測され、年収400万円未満の層の20代の人生に満足している人の割合が全世代より高くなっており全世代における年収600万円~800万円の層とさほど変わらない結果となっている

20代の人生満足の理由と不満の要因は?

人生に満足している人にその理由を尋ねたところ、20代では「人間関係」が最も多い回答でした。一方で、全世代を通しては「健康」がトップです。

「〈人生に満足〉と回答した人の一番の理由」人生に満足と回答した20代では「人間関係」38パーセントが最も多い回答であり全世代を通しては「健康」31パーセントが一番の理由となった

一方で、人生に満足していない理由で最も多かったのも20代・全世代共に「お金」です。特に20代は48%とほぼ半数が金銭面の不安や不満を挙げており、2位の「人間関係」(19%)を大きく引き離しています。

「〈人生に不満〉と回答した人の一番の理由」人生に不満と回答した全世代のうち42パーセントが「お金」が一番の理由となっているが、特に20代でみると一番の理由は「お金」と回答し48パーセントにものぼり「お金の悩み」が大きなストレスになっていることがわかる

これはお金が生活の基礎であり、仕事や学業、プライベートにも密接に影響していることを示しています。特に20代は貯蓄も少なく、将来の不安や家賃、学費、交際費といった出費がかさみやすい時期です。生活費や社会人としての自立に伴う様々な負担が重なり、「お金の悩み」が大きなストレスになっていることが読み取れます。

20代の離転職意向は?なぜ?

FWアンケートでは「離職・転職の希望・予定がある」と答えた20代の割合は43%と全世代平均の33%よりも10ポイント高い結果が出ています。

「離転職希望・予定者の割合(20代/全世代)」離職や転職の希望や予定があると答えた20代の割合は43パーセントとなり全世代平均の33パーセントよりも10ポイント高い結果となっている

離転職理由のトップは20代・全世代共に「給与水準に不満」ですが、特に20代では31%がこれを理由としています(全世代では25%)。

「離転職希望・予定の一番の理由(20代/全世代)」離転職理由のトップは20代と全世代とも「給与水準に不満」となり特に20代では31パーセントの理由となっており全世代では25パーセントとなっている

さらに、離転職希望・予定の理由を「給与水準に不満」とした20代を年収別で分析すると、個人年収の低い層だけでなく、個人年収1,500万円以上の層でも22%存在するという結果になっています。

「転職希望理由が〈給与水準に不満〉の割合(20代)」離転職希望・予定の理由を「給与水準に不満」とした20代を年収別で分析した結果、個人年収の低い層に加えて個人年収1,500万円以上の層でも22パーセントも存在するという結果となっている

仕事時間の間にプライベートのお金のことも考えている?

FWアンケートでは「就業時間中にプライベートのお金の問題で仕事に集中できない時間」についても聞いています。

これを人生満足度とクロス分析すると、人生に満足している20代の59%は「全くない」と答えたのに対し、人生に不満がある20代では44%にとどまります。全世代において前者は70%、後者は53%ですので、20代のほうがよりお金に悩んでいる人が多く、これが仕事にも影響していることがわかります。

逆に言えば、プライベートのお金の悩みを職場で軽減してくれれば、その分の生産性は向上し従業員にとっても会社にとってもよい効果が生まれる、ともいえるでしょう。

「20代の就業時間中にプライベートのお金の問題で仕事に集中できない時間」20代が就業時間中にプライベートのお金の問題で仕事に集中できない時間を人生満足度別に一週間あたりの該当時間でまとめてみると、人生に満足と回答した20代では、仕事に集中できないことが「全くない」と回答した割合は59パーセントとなり、人生に不満と回答した20代では、仕事に集中できないことが「全くない」と回答した割合は44パーセントとなり、お金のことが人生の満足度に影響していることがわかる

まとめ

ここまでをまとめると、20代は以下のような特徴が見られます。

  • 「おトク」に関心を持つ人の割合が高く、NISAやふるさと納税の利用率が高い。
  • 持株会など一部の制度は若干加入率が伸び悩んでいるが、加入している人の満足度は高い。
  • 人生に不満である理由で一番多いのは「お金」。
  • 離転職希望は相対的に高く、その一番の要因は「お金」。
  • 「お金」のこと「人生満足度」は仕事にも影響している模様。これらが改善できれば生産性が向上する可能性あり。

何かと「お金」には悩まされているけど有利な制度を上手に使っている人が多い20代。
より満足した人生を送るためにも「お金」について学んでみませんか。

1 野村資産形成研究センター『ファイナンシャル・ウェルネス(お金の健康度)アンケート』

 調査期間:2024年10月21日(月)~ 2024年11月5日(火)
 調査方法:リサーチ会社を利用したWEBアンケート
 調査対象:従業員数1,000人以上の上場企業従業員
 回答者数:11,071名

本コラムのデータは全てこのアンケート結果を用いた数値です。

文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部 籔内 大助

記事公開日:2025年10月24日

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