
ファイナンシャル・ウェルネス
(お金の健康度)アンケート
(2023年実施)
―上場企業従業員1万人の声― Financial Wellness survey
- 金融リテラシーと
ファイナンシャル・ウェルネス
本レポートでは、金融リテラシーがファイナンシャル・ウェルネスに与える影響を分析するべく、アンケート回答者である上場企業従業員1万人のうち、金融リテラシーに係る5つの設問において、全問正解者1,495人(全体の14%)を金融リテラシーの高い人、全問不正解者1,394人(13%)を金融リテラシーの低い人と定義し、その差異を検証しました。
金融リテラシーを問う5つの設問
本アンケートでは、2021年、2022年と同様に、金融リテラシーに関する設問として、①複利の意味、②インフレの影響、③リスク・リターンの関係、④固定金利と変動金利の違い、⑤ドルコスト平均法を知っているかの5問を盛り込みました。
全問正解者・全問不正解者の割合
なお、5つの設問の全問正解者は14%、全問不正解者は13%と、例年と変わらない水準でした。
年代別・年収別の特徴について
年代と金融リテラシーには、明確な関連性は見られませんでした。
年収別では、年収が増えるにつれて金融リテラシーの高い人の割合が増え、低い人の割合が減る等、相関関係が見られました。なお、年収1,500万円以上2,000万円未満の人では、金融リテラシーの高い人の割合が、全体平均の2倍超の32.3%に上りました。また、金融リテラシーの低い人は「わからない・答えたくない」との回答が最も多い23%に上り、自身の経済状況を把握できていない、あるいは他者に知られたくないといった傾向が見られました。
勤務先の福利厚生制度のラインナップについて
金融リテラシーの高い人は、総じて福利厚生制度の認知度、利用度が高く、金融リテラシーの低い人は、認知度、利用度共に総じて低い結果となりました。
ただし、金融リテラシーの低い人でも、持株会や企業型DC、財形貯蓄、職場つみたてNISA等、利用した制度への満足度は高く、利用まで到達してもらうことの重要性が示唆されました。
福利厚生制度の利用状況:企業型DC加入者の資産配分について
企業型DCの運用における投資信託利用(元本確保型併用者を含む)の割合は、金融リテラシーの高い人が77%と高い一方で、金融リテラシーの低い人ではわずか16%と、大きな差異がみられました。また、低い人は何に投資しているかを把握していない人が76%に上りました。
福利厚生制度のサポート体制について
福利厚生制度全般の説明会や研修では、金融リテラシーの高い人は87%が何を提供されているかを把握しているのに対し、低い人は「何が提供されているか分からない・知らない」との回答が、46%と突出して高く、勤務先の制度や支援に対して無関心であることが示されました。
資産形成について
金融リテラシーの高い人は、勤務先以外の資産形成を行っていない人の割合が3%と極めて低く、預貯金の他に、投資信託や株式を保有する割合がそれぞれ69%、60%と高いのに対し、低い人は41%が資産形成を行っていませんでした。また投資信託や株式を保有する割合はそれぞれ11%、13%と、2022年に比べ微増しましたが、未だ低い水準に留まりました。
資産形成に関する相談相手と情報源では、金融リテラシーの高い人がネットや書籍、SNSの利用がそれぞれ33%と25%と比較的高いのに対し、低い人の利用率はそれぞれ5%と7%と、著しく低い結果が示されました。また、相談等はしないという回答が、高い人が28%だったのに対し、低い人は56%にも上り、関心の低さが浮き彫りとなりました。
運用に対する考え方では、金融リテラシーの高い人の27%が「積極的にリスクをとって、ハイリターンを目指す」、50%の人が「インフレに負けないような運用を目指す」と回答し、一定以上のリターンを追求する割合が約8割に上ったのに対し、低い人ではわずか15%に留まりました。他方、低い人のうち55%は「あまり考えて入ない。わからない。」と回答する等、リテラシーの違いによって運用に対するスタンスが大きく異なることが示されました。
金融リテラシーの高い人は、NISAも積極的に利用しており、新NISAや職場つみたてNISAへの関心や利用意欲も高いことがうかがえます。特に、「奨励金がつけば利用する」との回答が、金融リテラシーの低い人の2倍近い水準に上り、勤務先からの経済的支援への感度が高い傾向が見られました。他方、金融リテラシーの低い人は、NISAの利用率が低いことに加え、新NISAや職場つみたてNISAについての知識に乏しく、まずは情報提供の必要性が示唆されました。
勤務先への誇り、仕事の生産性、人生への満足度について
金融リテラシーの高い人は低い人に比べ、勤務先の社員であることへの誇りや仕事への活力のある割合がやや高かったものの、大きな差異は見られませんでした。
人生への満足度についても、金融リテラシーの高い人の方が低い人より満足度が高いという結果がみられました。ただし、満足の理由上位3位は共に健康、人間関係、お金で、不満足の理由第1位はお金と、いずれも似通った傾向が見られました。
金融資産保有額について
金融資産保有額については、金融リテラシーの高い人では、43%が2,000万円以上の資産を保有しており、金融リテラシーの低い人の7%とは大きな差異が見られ、金融リテラシーと金融資産保有額の相関関係が示されました。また、金融リテラシーの低い人は、6割が「分からない・答えたくない」と回答しており、まずは金融資産保有額を把握することが、金融リテラシー向上のきっかけとなる可能性が考えられます。