
ファイナンシャル・ウェルネス
(お金の健康度)アンケート
(2023年実施)
―上場企業従業員1万人の声― Financial Wellness survey
- ファイナンシャル・ウェルネスの
高い人と低い人
本レポートでは、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人の特徴を捉えるため、お金や経済面に関して①現在どう感じているか、②将来についての安心・不安についての設問を盛り込みました。上場企業従業員1万人の回答者のうち、現在順調で、将来安心と回答した3,607人(全体の33%)をファイナンシャル・ウェルネスの高い人、反対に、現在低調で、将来不安と回答した4,386(40%)人を、ファイナンシャル・ウェルネスが低い人と定義し、その差異を検証します。
ファイナンシャル・ウェルネスの高い人・低い人の割合
年代別・年収別の特徴について
年代別では、60代はファイナンシャル・ウェルネスの高い人がやや多いのに対し、40代や50代はファイナンシャル・ウェルネスの低い人がやや多く、子供の教育費や住宅ローン等が影響していることが考えられます。
年収別では、年収が高い人程ファイナンシャル・ウェルネスも高く、年収が低い人程ファイナンシャル・ウェルネスも低く、年収とファイナンシャル・ウェルネスの強い相関関係が確認されました。
金融資産保有額について
金融資産の保有額では、2,000万円以上保有している割合は、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人が40%なのに対し、低い人は11%に留まっており、金融資産保有額とファイナンシャル・ウェルネスとの相関関係も確認されました。なお、ファイナンシャル・ウェルネスの低い人の33%は「分からない・答えたくない」と回答しており、まずは現在の経済状況を把握する必要性があると考えられます。
勤務先の福利厚生制度のラインナップについて
ファイナンシャル・ウェルネスの高い人の方が、低い人に比べ勤務先の福利厚生制度の認知度も、利用度(制度を知っている人のうち、利用している・利用した人の割合)も、総じて高く、勤務先の福利厚生制度を上手に活用していることが窺えました。また、ファイナンシャル・ウェルネスの低い人も、利用した福利厚生制度への満足度は高い傾向にあり、制度の情報提供を徹底し、利用さえしてもらえれば、その有用性を十分に理解してもらえることが示唆されました。
福利厚生制度の利用状況:企業型DC加入者の資産配分について
企業型DCの運用では、投資信託での運用を行っている人の割合(元本確保型との併用も含め)が、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人が64%だったのに対し、低い人は46%に留まり、運用に対するスタンスの違いが明確に表れました。また、ファイナンシャル・ウェルネスの低い人は半数近くが企業型DCの運用について「わからない」と回答しており、現状を把握することが運用に対して意識を向けるきっかけになると考えられます。
勤務先の福利厚生制度のサポート体制について
勤務先の資産形成に関するセミナー等の利用経験は、ファイナンシャル・ウェルネスが高い人の方が低い人に比べ多いものの、高い人でも25%は何が提供されているのかを把握しておらず、また34%は提供されても利用しないと回答する等、利用促進のための工夫が必要であることが示されました。
福利厚生制度のラインナップ・サポート体制への満足度について
勤務先の福利厚生制度のラインナップについては、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人では74%が満足と回答したのに対し、低い人はわずか38%と2倍近い差異が見られました。サポートについても同様で、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人の77%が満足だと回答したのに対し、低い人は38%に留まりました。
勤務先以外での資産形成について
勤務先の福利厚生制度以外での資産形成では、株式と投資信託を保有している割合で、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人と低い人とでは倍近い差が見られました。
NISAの利用状況について
NISAの利用状況や新NISAへの利用意欲においても、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人と低い人には、大きな差異が見られました。また、ファイナンシャル・ウェルネスの低い人は、新NISAへの利用については、制度をよくわかっていないとの回答が42%を占めることから、制度への理解を促すことの重要性も示されました。職場つみたてNISAについても同様な傾向が見られました。
金融リテラシーについて
金融リテラシーを問う5つの設問に関して、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人の方が、全問正解者が19%と高く、全問不正解者が6%に留まりました。低い人とはそれぞれ倍以上の差異が見られました。また、全問正解者の中に、ファイナンシャル・ウェルネスの低い人が24%含まれており、これらの人々は理解していても行動できていない可能性も示唆されました。
勤務先への誇り、仕事の生産性、人生への満足度について
ファイナンシャル・ウェルネスの高い人は、勤務先の社員であることを誇りに思うとの回答が84%に上るのに対し、低い人は53%に留まりました。また、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人は、1日を通じて仕事への活力を維持できているとの回答が82%であったのに対し、低い人は50%と、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人は、勤務先へのエンゲージメントも、仕事の生産性も高いことが示されました。
転職希望について
ファイナンシャル・ウェルネスの低い人の転職希望割合(40%)はファイナンシャル・ウェルネスの高い人における同割合(29%)を上回っています。また、ファイナンシャル・ウェルネスの低い人が転職希望の主な理由に、「給与水準の低さ」を1位に上げた一方で、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人の転職希望の理由の第1位は、「昇進・キャリアアップが望めない」でした。