
ファイナンシャル・ウェルネス
(お金の健康度)アンケート
(2024年実施)
―上場企業従業員1万人の声― Financial Wellness survey
- ファイナンシャル・ウェルネスの
高い人と低い人
本レポートでは、ファイナンシャル・ウェルネスの高い人と低い人の特徴を捉えることを試みます。具体的には、上場企業従業員1万人の回答者のうち、現在順調かつ、将来安心と回答した3,775人(全体の34%)をファイナンシャル・ウェルネスの高い人(以下、「FWの高い人」)、反対に、現在低調かつ、将来不安と回答した4,202人(38%)を、ファイナンシャル・ウェルネスの低い人(以下、「FWの低い人」)と定義し、その差異を検証します。
年代別の特徴
年代別では、60代はFWの高い人がやや多いのに対し、40代や50代はFWの低い人がやや多いという結果でした。子供の教育費や住宅ローン等が影響していることが考えられます。
年収別の特徴
年収別では、FWの高い人の24%が1,000万円以上と、FWの低い人の8%に比べ大きな差異が見られました。ただし、FWの高い人でも年収が600万円未満の人が30%に上ることから、年収以外の要因もファイナンシャル・ウェルネスに影響している可能性が示唆されました。
金融資産保有額
金融資産の保有額では、FWの高い人は低い人に比して金融資産保有額が相対的に高く、「わからない」「答えたくない」といったネガティブな回答の割合が低い結果でした。
勤務先の福利厚生制度のラインナップ
FWの高い人の方が、FWの低い人に比べ勤務先の福利厚生制度の認知度、利用度が総じて高く、勤務先の福利厚生制度を積極的に活用していることが窺えました。また、FWの低い人も、利用した福利厚生制度への満足度はFWの高い人とあまり差異がない制度が多く、利用さえしてもらえれば、その有用性を十分に理解してもらえることが示唆されました。
株式報酬
FWの高い人の方が、勤務先から株式報酬を供与された経験がある割合が高い傾向が見られました。また、FWの高い人は供与されたことについて、「会社へのロイヤリティが高まった」、「仕事へのモチベーションが上がった」という回答が多い一方で、「現金報酬の方が良かった」という回答が少ない結果となりました。FWの高い人には、株式報酬を通して、従業員に業績向上の恩恵を共有したいという会社側の意図が適切に伝わっている傾向があると言えます。
企業型DC加入者の資産配分
企業型DCの運用では、投資信託での運用を行っている人の割合(元本確保型との併用も含む)が、FWの高い人が63%だったのに対し、FWの低い人は45%に留まり、FWの高い人の方が運用に積極的に取り組んでいる様子が窺えました。また、FWの低い人は半数近くが企業型DCの運用について「わからない」と回答していました。現状把握を促すことが運用に対して意識を向けてもらう第一歩になると考えられます。
福利厚生制度のラインナップ・サポート体制への満足度
勤務先の福利厚生制度のラインナップについては、FWの高い人では80%が満足と回答したのに対し、FWの低い人は47%と大きな差異が見られました。サポートについても同様で、FWの高い人の76%が満足だと回答したのに対し、低い人は38%に留まりました。他方、ラインナップやサポート体制に満足していない理由については、FWの高い人、低い人共に「どのような制度があるのか分かりにくい・把握しづらい」が最も多く、似たような傾向が見られました。
勤務先以外での資産形成
勤務先の福利厚生制度以外での資産形成では、毎月3万円以上を預貯金や投資に充てている人の割合が、FWの高い人は55%であったのに対し、FWの低い人は25%に留まりました。また、株式と投資信託を保有している割合について、FWの高い人はそれぞれ52%と55%であるのに対し、低い人は34%と40%と差異が見られました。
新NISAの利用状況
FWの高い人の65%が新NISAを利用しているのに対し、低い人は56%が利用していないとの結果が得られました。また、FWの低い人は職場つみたてNISAが導入されても利用しないとの回答が41%に上り、利用意欲が低い結果が示されました。
金融リテラシー
金融リテラシーを問う5つの設問に関して、FWの高い人の方が、平均正解数が多く、設問毎に見ても、全てにおいて正解率が高い結果となりました。FWと金融リテラシーには一定の相関関係が見られました。
勤務先への誇り、仕事の生産性
FWの高い人は、「今の勤務先の社員であることを誇りに思いますか」との設問に対し、「思う」※との回答が82%に上るのに対し、FWの低い人では52%に留まりました。「一日を通じて、仕事への活力を維持できていますか」、「熱意を持って仕事に取り組んでいますか」、「仕事に没頭出来ていますか」、「同じような仕事をしている人と比べ、生産性が高いと思いますか」、という設問についても、同様にFWの高い人の肯定的な傾向が見られました。
※「そう思う」と「まあそう思う」の合計。本節ではいずれも同じ。
人生満足度
人生への満足度については、FWの高い人のうち、「とても満足」、「少し満足」と回答した人の割合は合計87%に上ったのに対し、FWの低い人は43%と2倍もの差が見られました。満足であることの理由として、FWの高い人の1位が「健康」であったのに対し、FWの低い人は「人間関係」でした。不満の理由としては、FWの高い人は「人間関係」なのに対し、FWの低い人は「お金」が圧倒的に多い結果でした。
離転職希望
FWの低い人の離転職希望の割合は38%と、高い人の28%に比べ高い結果でした。また、FWの低い人が離転職希望の最も大きな理由に「給与水準の低さ」を挙げた一方で、FWの高い人は「昇進・キャリアアップが望めない」でした。