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2021.08.26 NEW

ゲーム機や自動車などが品薄に。深刻な「半導体不足」がなぜ世界中で起きているのか?

ゲーム機や自動車などが品薄に。深刻な「半導体不足」がなぜ世界中で起きているのか?のイメージ

ゲーム機やパソコンなどが、人気商品を中心に昨年から品薄の状態が続いている。また、自動車は注文しても納車が数カ月先というケースもある。

コロナ禍の不景気でも、比較的売れ行きが良さそうな商品にも関わらず、なぜ積極的に販売されていないのか?こうした背景には2020年秋以降から特に目立つ、世界的な半導体不足がある

産業のコメとも呼ばれる半導体は、家電や自動車、飛行機など、大小さまざまなモノに使われており、私たちの生活に欠かせない存在だ。今回は、世界で半導体が不足している要因と、デジタル化が進む中で期待される、半導体業界のニーズを考えていこう。

半導体不足の2つの要因

半導体不足には、主に「需要の急拡大」と「供給体制のひっ迫」の2つの要因がある。まずは、「需要の急拡大」から見ていこう。

コロナ禍の影響で、工場の操業停止や物流の停滞で入手困難な部材が出るなど、サプライチェーンが混乱した。半導体市場も同様にサプライチェーンが混乱し、それに加え、テレワークの急速な普及と巣ごもり需要の拡大で、はじめにパソコンなどに搭載されるPMIC(パワーマネジメントIC)が2020年の春頃から不足し始めた。PMICは、5Gスマホへのシフトでコロナ以前からひっ迫していたが、コロナ禍による需要の急拡大で製品不足に拍車がかかった。

その後、パソコンに加えテレビなどの需要が増加し、ディスプレイ用の半導体DDIC(ディスプレイドライバーIC)にも不足の波が広がった。そして、2020年9月以降は、自動車市場が急速に回復。その結果、自動車の動作制御も担っているMCU(マイクロコントローラー)も不足し、自動車メーカー各社は2021年に入って操業停止や減産を余儀なくされた(図1)。

図1:2020年に需要が急拡大した主な半導体
2020年春 5Gスマホへのシフトでコロナ以前からひっ迫していた電源管理用の半導体PMIC(パワーマネジメントIC)が、テレワークの普及などによるパソコン需要などの増加で不足し始める。
2020年春 パソコンなどに加え、テレビなどの需要が増加し、DDIC(ディスプレイドライバーIC)にも不足の波が広がった。
2020年秋 自動車市場の回復で、MCU(マイクロコントローラー)も不足し、調達できなくなった自動車メーカー各社は、2021年に入って操業停止や減産を余儀なくされた。

次に、2つめの要因の「供給体制のひっ迫」だ。PMICやDDIC、MCUなど、製品不足が深刻化している半導体の多くは、最先端の半導体が生産されている工場(12インチウエハー工場)ではなく、一世代前の半導体工場(8インチウエハー工場)で生産されている。一方、一世代前の半導体工場は老朽化が進んでおり、半導体メーカーはコストのかかる自社生産から、ファウンドリー(半導体を受託で生産する企業)への製造委託に切り替えるケースが増えていた。

こうした状況下で、一世代前の半導体の需要が急拡大し、ファウンドリーへの注文が殺到。しかし、ファウンドリーの多くは、半導体の生産能力を拡張させておらず、急増した注文に供給が追い付かない状況に陥った。さらに、2020年4~6月頃はひっ迫していたパソコン用などの半導体の製造に、需要が落ち込んでいた自動車向けの半導体の生産能力を振り分けていた工場が多く、自動車需要が回復して以降は、供給のバランスが大きく崩れていた。

そこに追い打ちをかけたのが、2020年12月のアメリカ政府による中国のファウンドリー大手企業への事実上の禁輸制裁であり、その影響で台湾や韓国のファウンドリーへ注文が集中し、半導体不足が加速した。

また、2021年以降、相次いで発生した自然災害や事故が追い打ちをかけた。

2021年2月、アメリカテキサス州の大寒波の影響で、同州にある半導体工場が閉鎖を命じられた。また、同月は、台湾で過去に例のない深刻な水不足が発生し、大量の水を必要とする半導体の生産に影響を及ぼした。

日本に目を向けると、国内自動車メーカー最大のMCU調達先が、2021年2月に発生した福島県沖地震の影響で、安全確認と装置や製品の被害状況の確認のため、工場の操業を一時停止。さらに3月には同工場で火災が発生し、半導体の生産がストップする事態に陥った。

現在、ファウンドリーを含め、半導体メーカー各社は急ピッチで半導体の増産を進めており、休止していた工場を再稼働させる動きも見せている。ただ、半導体は通常、材料を投入してから製品が出来上がるまでに3カ月以上かかると言われており、半導体不足の解消にはある程度の時間がかかる見込みだ。

益々欠かせない存在になる「半導体市場」は、約100兆円規模に成長見込み

半導体市場は、2030年までに約100兆円規模に到達すると見込まれている成長産業である(図2)。

自動車関連では、EVの普及と自動運転技術の進展で、半導体の重要性は一層高まっていく。また、さまざまなモノがインターネットに接続するIoT社会の実現も、今後本格化していくはずだ。こうした社会の変化に伴い、全体の消費電力も増大することが見込まれる。今後は半導体業界でも脱炭素社会へ向け、省エネを実現する部品などの新たなニーズも生まれるだろう

図2:世界の半導体市場

図2:世界の半導体市場

製品例
ロジック(制御用) プロセッサー、GPU、SoCなど
メモリ(データ記憶用) DRAM、NANDなど
その他 アナログLSI、パワー半導体、イメージセンサーなど

先を見据え、世界各国が半導体の安定調達を目的にした国産化や輸出管理に動き出している。日本も経済産業省が主体となって、国内半導体製造の強化を目指す方向性を打ち出しているが、1988年に約50%を占めていた日本企業の半導体売上高シェアは、残念なことに現在は10%以下まで低下している(図3)。

図3:日本の半導体産業の現状(国際的なシェアの低下)

図3:日本の半導体産業の現状(国際的なシェアの低下)

しかし、日本は半導体材料の製造にトップクラスの技術とシェアを持つ。例えば、半導体の基板となる材料「シリコンウエハー」では、日本は世界シェアの約6割を占めている。その他、集積回路を焼き付ける工程で使用される「フォトレジスト」や、半導体を熱やほこりなどから保護する「封止材」などでも、日本企業が高いシェアを有している。

日本が半導体市場の地位を取り戻すとすれば、現状の強みを維持しつつ、海外企業と協業するか、今後IoT社会が実現した際に求められる、新たな半導体需要に参入できるかにかかってくるだろう。

世界で起きている事象を表面的に見るのではなく、その背景や経済動向、政治動向に注視すると、自分の生活に深く関わっていることに気付くことが多い。今回は半導体市場の動向を紹介したが、さらに広い視点を持つためにも、さまざまな経済動向に注視してみてはどうだろうか。

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