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2021.11.25 NEW

会社員も“好きな場所”を行き来し暮らす。「デュアルライフ」の始め方

会社員も“好きな場所”を行き来し暮らす。「デュアルライフ」の始め方のイメージ

「いつか都会の喧騒を離れ、緑豊かな郊外で暮らしてみたい」。試しに物件を検索したりして、そうした想像を膨らませたことがある人は多いのではないだろうか? しかし、仕事や家庭などのことを考えれば、転居はハードルが高いだろう。

そんな中、都市と郊外や地方などの地域で二拠点生活を行う、「デュアルライフ」という選択肢を選ぶ人たちが増えている。2020年に一般社団法人不動産流通経営協会(以下、FRK)が実施した調査によれば、複数拠点生活(注)の実施者は推計約617万人だった。

(注)複数拠点生活:この調査では、自身の主な住まいとは別に、週末や一年のうちの一定期間を異なる場所で生活することを指す(出典:一般社団法人 不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査<概要版>」)

会社員でも「好きなときに好きな場所で働く」ということができるようになってきた時代、都心と地方とを自由に行き来する生活は、「憧れの生活」ではなく「手が届く現実的な選択」となってきている。デュアルライフ実施者の実態や、そんな暮らしを叶えるための方法などをまとめた。

デュアルライフ実施者の65%以上が「満足」

コロナ禍でテレワークが普及したことにより、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」の造語である「ワーケーション」などの暮らしが注目されるようになった。こうした情勢の変化も、会社員のデュアルライフ実施者の増加に一役買った可能性が考えられる。

しかし、“休暇”という意味を含むワーケーションよりも、居住する場を2つ作るデュアルライフの方が大きな選択だ。実際にデュアルライフを実施した人の感想はどうなのか? 先述のFRKの調査によれば、実施者の65.5%が総合的な満足感を得ていることがわかった(図1)。

図1:複数拠点生活の満足度

図1:複数拠点生活の満足度

出典:一般社団法人 不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査<概要版>」 より編集部作成

※ 全国の20歳~79歳の男女を対象にしたインターネット調査。スクリーニング調査は150,002名を対象に、2020年3月19日~3月29日に実施。うち海外在住者を除く149,602名を分析対象とする。本調査は5,212名を対象に、2020年3月27日~3月29日に実施。うち海外在住者を除く5,200名を分析対象とする。

※ 上記は本調査でのデータ。

※ n数=2,511は、複数拠点生活実施者。

実施者に目的を聞いた設問では、「自分の時間を過ごすため」(11.3%)、「会社都合の転勤・単身赴任」(10.2%)、「避暑・避寒・癒やし・くつろぎのため」(9.6%)などの回答が多かった(図2)。プライベート時間の充実のためにデュアルライフを実施していることが伺える。

図2:複数拠点生活の実施目的(最も大きな目的・理由)(上位15位を抜粋)

図2:複数拠点生活の実施目的(最も大きな目的・理由)(上位15位を抜粋)

出典:一般社団法人 不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査<概要版>」より編集部作成

※ 全国の20歳~79歳の男女を対象にしたインターネット調査。スクリーニング調査は150,002名を対象に、2020年3月19日~3月29日に実施。うち海外在住者を除く149,602名を分析対象とする。本調査は5,212名を対象に、2020年3月27日~3月29日に実施。うち海外在住者を除く5,200名を分析対象とする。

※ 上記はスクリーニング調査でのデータ。

2021年3月には、国土交通省をはじめとした関係省庁、地方公共団体、関係団体・関係事業者の連携の下、「全国二地域居住等促進協議会」が発足。地域振興や過疎化防止のため、デュアルライフを促進する構えだ。

デュアルライフの始め方

デュアルライフを始める場合、住まいの見つけ方には大きく2つの方法がありそうだ。

(1)腰を落ち着けるなら「賃貸・物件購入」

先述のFRKが行った調査によれば、実施者の75.3%がデュアルライフを「持ち家」で行い、意向者の63.5%が「持ち家」で実践することを希望。いずれも、持ち家の中でも「戸建て」の割合が高かった。

だが、予算や好みに合った物件が見つからない場合は、まずは賃貸でマンションや家を借りて生活し、ひとまず拠点を作ってから、腰を据えて物件を探すということもできる。もし、今後自身の労働環境やライフスタイルが変化し、デュアルライフをやめたくなった場合でも、解約できる賃貸物件であればリスクは少ない。

(2)トライアルなら「多拠点居住サービス」

「もっと気軽にデュアルライフを始めてみたい」「まだどこに住むか決めていない」といった場合は、多拠点居住サービスを利用するのもひとつの方法だ。多拠点居住サービスとは、簡単にいえば、全国各地にある居住施設を定額で利用できるサービスのこと。さまざまな企業がこうしたサービスを提供しており、多くの場合、初期費用なしでその企業が保有する物件に住むことができる。

滞在が可能な日数はサービスやプランによって異なるが、数日間程度の短いものから、制限なしで好きなだけ暮らせるものまでさまざまある。また、ひとつの住居を借り続けるものだけではなく、好きな場所を転々と移動できるものもある。お試しとして利用しながら、将来の居住先の候補を探したり、旅をするように暮らす生活をしたりするのに活用できそうだ

デュアルライフで必要になるお金

購入、賃貸、多拠点居住サービス、いずれにしてもデュアルライフを始めるには物件へのコストが発生する

たとえば、購入の場合、住宅ローン以外にかかる物件購入時の諸経費として、以下のものが必要になる(図3)。諸費用の総額は、物件の購入価格の3~10%が目安になるといわれる。一部では毎年支払う費用もあるので注意が必要だ。

賃貸の場合は敷金・礼金などの初期費用と、家賃や水道代、電気代など毎月かかる費用がある。多拠点居住サービスの場合、初期費用の有無や、水道代などが家賃に含まれるかがサービスによって異なるため、それぞれの料金プランをよく確認したい。

図3:物件購入時にかかる主な諸費用
  項目
売買契約関連 仲介手数料(仲介業者を介した場合)/印紙税
ローン関連 印紙税/保証料/融資手数料/火災保険・地震保険
税金 登録免許税/不動産取得税/固定資産税/都市計画税
その他 登記に関する費用/修繕積立金/管理費/引越し費用/リフォーム費用/建物の調査費用

出典:野村不動産ソリューションズ株式会社が提供する「ノムコム」より編集部作成

コストの面ではその他にも、「交通費」などが挙げられる。会社勤めをしながらデュアルライフを送れば、日頃リモートワークであっても、ときには会社へ出勤しなければならないこともあるだろう。

多拠点居住サービスを提供している株式会社アドレスの「多拠点生活利用実態レポート2021年版」調査で、サービスの利用者に対して通勤や通学の頻度を尋ねたところ、過半数は「通勤・通学をしない」(53.8%)という回答だったが、「週1日未満」(11.5%)「週1日」(12.5%)「週2~3日」(11.5%)などといった回答もあった。本拠地と2つめの生活拠点との移動について、勤務時間はもちろん、移動にかかる金銭的な負担についても考えておいた方が良さそうだ。

このようにデュアルライフには少なからずコストはかかるが、資金的に余裕がある人たちに限るものではないようだ。FRKの調査で、実施者の世帯年収を聞いた回答では、約半数(46.1%)が500万円未満となった(図4)。

図4:積極的な目的で実施している人の世帯年収

図4:積極的な目的で実施している人の世帯年収

出典:一般社団法人 不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査<概要版>」より編集部作成

※ 全国の20歳~79歳の男女を対象にしたインターネット調査。スクリーニング調査は150,002名を対象に、2020年3月19日~3月29日に実施。うち海外在住者を除く149,602名を分析対象とする。本調査は5,212名を対象に、2020年3月27日~3月29日に実施。うち海外在住者を除く5,200名を分析対象とする。

※ 上記はスクリーニング調査でのデータ。

※ n数=5,281は、積極的な目的で複数拠点生活を実施している人。

こうしたことを考慮し、計画的に準備すれば、誰でもデュアルライフを実践することが可能だろう。デュアルライフに限らず、今後のライフプランを自由に選択するために、必要な費用を計算し、憧れの暮らしを実践できる資金を準備しておきたい。

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