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2021.12.16 NEW

保険×パーソナライゼーション。一人一人の健康状態に合わせたプランニングが可能に?

保険×パーソナライゼーション。一人一人の健康状態に合わせたプランニングが可能に?のイメージ

ご自身のライフプランを考えるとき、保険は欠かせないツールの一つだろう。しかし、自分に本当に合うサービスがわからなかったり、欲しい条件を優先すると不要なものも入り想像よりも保険料が高くなってしまったりと、悩んだ経験がある人も少なくないだろう。

そんな中、保険業界がユーザーごとに最適なサービスなどを提供する「パーソナライゼーション」によって、続々と新しいサービスを提供しているのをご存じだろうか。今回は、テクノロジーによってパーソナライゼーションが進む保険業界の様子や、私達への影響を見ていきたい。

「パーソナライゼーション」とは

マーケティング分野で、パーソナライゼーションが不可欠なものとなってきている。パーソナライゼーションとは、身近な例ではインターネットの閲覧履歴をもとにレコメンドされる広告のように、ユーザーそれぞれの好みや属性、行動・購入履歴などに基づいて、企業側が最適なモノやサービスを提供することを意味する

そのため、パーソナライゼーションでは、「どういった相手に」「どのタイミングで」「何の情報を提供するのか」が重要になる。しかし、おすすめの組み合わせは幾通りも考えられるため、人の力だけで最適な答えを探し当てるのは大きな労力がかかる。そこで、期待されているのがテクノロジーのサポートだ。たとえば、AIなら膨大なデータを瞬時に解析したり、斬新なおすすめをしてくれたりする可能性があり、ユーザーは知らなかった新しい商品やサービス、魅力的な情報を知るチャンスが広がる。

パーソナライゼーションが保険業界に与えるインパクト

パーソナライゼーションの導入が進んでいる業界のひとつが、専門的な情報をもとに提案型営業を展開する生命保険業界だ。保険業界全体では、保険(インシュアランス)とテクノロジーの言葉を組み合わせた「インシュアテック(InsurTech)」という造語も登場し、テクノロジーを活用した保険商品の開発や、勧誘・契約・引受などの業務プロセス効率化などが活発になっている。

アクセンチュア株式会社のレポートによると、AIをはじめとしたテクノロジーの発展や、その他のヘルスケアトレンドを前提としてパーソナライゼーションが進展した際、生命保険業界には図1のような変化が起こると仮説を立てている。現在、国内の生命保険業界では、入院や手術をした場合の保障など「治療・保障」を重視したプランが広く提供されている。しかし、パーソナライゼーションが進展すると、生活習慣を整えて病気を予防することや、「予後・介護」の観点を重視したプランニングが広がると考えられる。

個別にプランニングできるようになることで、これまでなかなか保険に加入できなかった人が提案を受けることや、最適化した価格でプランを組むことも可能になるだろう

図1:生命保険業界のビジネス構造に与え得る影響仮説

図1:生命保険業界のビジネス構造に与え得る影響仮説

出典:アクセンチュア株式会社「Financial Services Architect Vol.62|2021年夏号」をもとに編集部作成

健康増進や生活習慣の改善をコンセプトにした「健康増進型保険」でも、AIを活用した事例が見られている。たとえば、健康診断結果の提出でアドバイスとキャッシュバックが受けられ、数値が悪化した項目は早期治療の費用をサポートするといった保険や、ウェアラブル端末やスマホと連動し、歩数によってポイントが貯まる保険などが登場している。予防から重篤化の回避まで、踏み込んだサービスを提供することが可能になり、結果として、医療費削減につながると期待される。保険会社とユーザー双方にメリットを生むビジネスモデルだ

AIは保険金支払いの迅速化でも活躍している。損害保険などを扱う大手企業では、自動会話プログラム「チャットボット」とAI、ドローンを活用した水災デジタル調査を導入している。これにより、通常時、チャットボットは顧客からの問い合わせなどで活躍するが、大規模災害時では、チャットボットからの申告内容とAIとドローンによる災害調査をもとに、損害額を自動的に算出することが可能になった。

日本国内のインシュアテック市場は拡大予想

日本国内の生命保険領域のインシュアテック市場は拡大傾向にあり、株式会社矢野経済研究所によると、同市場は2020年度の1,290億円から、2023年度には2,800億円規模まで、倍以上成長する予測だ(図2)。世界でもトップクラスの生命保険料規模を誇る日本では、今後、テクノロジーの進展に伴い、さらに細分化されたサービスを受けられるチャンスが広がりそうだ。

図2:国内InsurTech(インシュアテック)市場規模推移・予測

図2:国内InsurTech(インシュアテック)市場規模推移・予測

出典:株式会社矢野経済研究所「生命保険領域における国内InsurTech市場に関する調査(2021年)」(2021年6月22日発表)をもとに編集部作成

※ 国内の生命保険会社、少額短期保険事業者、SIer(システムインテグレーター)、InsurTechベンチャー企業等を対象にした調査。2020年11月~2021年5月に実施。

※ 参入事業者売上高ベース

※ 2021年度見込値、2022年度以降予測値

ユーザーは費用対効果のあるサービスを求める傾向を強めている

最後に、保険業界でパーソナライゼーションが進展している背景を、ユーザー意識の変化から見てみたい。アクセンチュアの顧客意識調査によると、「銀行や保険会社と取引する際に最も重要視する要素は何か?」という質問に対し、2018年は「迅速な問題解決」「礼儀正しく知識豊富なスタッフ」などの項目が上位にランクインしたが、2020年は「金額に見合う価値」「競争力のある価格設定」「迅速な問題解決」「迅速かつ有効なサービス」などが上位となった(図3)。

ユーザーは、費用対効果があるサービスをより求めるようになってきている。こうしたニーズは、パーソナライゼーションが得意とするところだろう。

図3:銀行や保険会社と取引する際に最も重要視する要素は何か?

図3:銀行や保険会社と取引する際に最も重要視する要素は何か?

出典:アクセンチュア株式会社「Financial Services Architect Vol.62|2021年夏号」をもとに編集部作成

※ 重視すると回答した上位3要素の合計値ベース

インシュアテックをはじめとしたパーソナライゼーションの進展により、保険分野はさらに個別化されたプランの提供が可能になる。保険は安心して暮らしていくために欠かせないサービスだけに、保険の加入や見直しを検討する際には、こうした新しいサービスも視野に入れたい。また、このような多様化する保険への加入を検討する際には、今まで以上によく調べた上で、将来を見据えたライフプランを考えてみるといいだろう。

※ 本記事は、生命保険・損害保険など国内保険業界の現況ならびに将来の予測をお伝えするものであり、個別の保険商品のご案内を目的とするものではありません。

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