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2022.09.08 NEW

【スーパーシティ構想】空飛ぶクルマや無人タクシー、SF映画の世界は実現するのか

【スーパーシティ構想】空飛ぶクルマや無人タクシー、SF映画の世界は実現するのかのイメージ

空飛ぶクルマや無人タクシーが当たり前の未来都市を目指す、「スーパーシティ構想」が動き出していることをご存じだろうか。次世代型の都市といえばスマートシティを連想するかもしれないが、スーパーシティはスマートシティと異なり、規制緩和とIT技術の活用によって私たちの暮らしを根本から変えようという取り組みだ。

日本では、2020年の国家戦略特別区域法改正により、新たに国家戦略特区のひとつとして「スーパーシティ型国家戦略特区」が創設され、つくば市と大阪市が特区に指定された。スーパーシティ構想が実現すると、私たちの暮らしはどう変わるのか、構想の先にある近未来像を見てみよう。

スーパーシティを解説する前に、まずはスマートシティについて整理する。

スマートシティは都市を効率的に管理・運営する構想

スマートシティは、IT技術を活用して、私たちの暮らしに必要なインフラやエネルギーなどを効率的に管理・運営することで、暮らしをより快適にする次世代型の都市のことだ。国土交通省は「都市の抱える諸課題に対して、ICT(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義している。

たとえば、都市に人口が集中すると、交通渋滞の増加や大気汚染、災害による被害拡大、エネルギーの非効率な利用による温室効果ガスの排出量増加といった問題が懸念される。そこで、IoT(インターネット・オブ・シングス)やビッグデータなどのIT技術を活用して効率的にマネジメントし、渋滞緩和や大気汚染の低減、災害に強い街づくり、エネルギーの効率的な利用など、生活の質の向上を目指す。国内では、さまざまな自治体や企業が、スマートシティに向けた街づくりを始めており、一部ではサービスの提供も始まっている(図1)。

図1:国内のスマートシティ事例
千葉県柏市
柏の葉スマートシティ
千葉県柏市は、柏の葉キャンパス駅を中心に大学や病院、商業施設などを集めることで、ヒト・モノ・情報を集中させた街づくりを推進している。
街づくりのテーマは、人と地球にやさしく災害にも強い「環境共生都市」、日本の新しい活力となる成長分野を育む「新産業創造都市」、すべての世代が健やかに、安心して暮らせる「健康長寿都市」の3つだ。
2021年9月には、柏の葉キャンパス駅周辺街区にAIカメラ29台を設置し、リアルタイム画像分析による、住民が安心・安全に生活できるタウンマネジメントを始めている。
東京都港区
スマートシティ実証実験
SMART CITY TAKESHIBA
国内大手通信会社と大手不動産会社が、竹芝エリアで最先端のテクノロジーを街全体で活用するスマートシティのモデルケース構築に取り組んでいる。
デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出し、都民の暮らしの質を高める「スマート東京」の実現に向け、東京都が公募したプロジェクトに採択された。
同地区において収集した人流データや訪問者の属性データ、道路状況、交通状況、水位などのデータを、さまざまな事業者がリアルタイムで活用できるデータ流通プラットフォームを開発し、混雑の緩和、防災の強化などを実現、同地区と周辺地区が抱える課題の解決を目指す。

スーパーシティはスマートシティの先にある構想

スーパーシティも、IT技術を用いて都市を変革させようとしている点はスマートシティと同じだ。しかし、スマートシティが都市機能の効率化や最適化など、IT技術を用いた都市化の推進を想定しているのに対し、スーパーシティは住民の暮らしに重点が置かれている。つまり、大胆な規制緩和によって、暮らしや社会の仕組みそのものを大きく変えようという構想だ。都市化のための“手段”より人々の“暮らし”が重視されるため、地方都市で地方創生事業として推進させることもできる。イメージとしては、SF映画に登場するような未来都市を創出するのがスーパーシティで、エリア内はすべて自動走行、取引もすべてキャッシュレス・ペーパーレス、観光は無人タクシーや空飛ぶクルマ、宅配はドローンによる輸送など、複数の先端的なサービスが共通のデータ基盤を通じて提供される(図2)。

図2:スーパーシティ構想のイメージ

図2:スーパーシティ構想のイメージ

出典:内閣府地方創生推進事務局「『スーパーシティ』構想について」(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/190418/pdf/shiryou3-3.pdf)をもとに編集部作成

スーパーシティ特区に指定されたつくば市、大阪市の構想は?

日本では、2020年の国家戦略特別区域法改正により、新たに国家戦略特区のひとつとして「スーパーシティ型国家戦略特区」が創設され、スーパーシティの実現に向けて動き出した。スーパーシティ提案の公募が開始されると、31の地方公共団体から提案があり、2022年3月10日に行われた国家戦略特別区域諮問会議で、つくば市と大阪市がスーパーシティ型国家戦略特区に指定された。特区に指定されると、国や自治体が保持するデータの提供を受けるための基盤が法定化され、事業の実施主体は、住民の合意を得たうえでデータの活用が可能になる。

ここで、つくば市と大阪市が掲げるスーパーシティ構想を見てみよう。

つくば市の「つくばスーパーサイエンスシティ構想」は、研究機関の研究結果を活かし、デジタルやロボティクスなど、最先端技術を社会問題解決のために応用・展開し、都市機能の最適化を目指す構想だ。「移動・物流」「行政」「医療」「防災・インフラ・防犯」「デジタルツイン・まちづくり」「オープンハブ」の6つの分野で先端的サービスの提供を目指す(図3)。

図3:つくば市 「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の概要

図3:つくば市 「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の概要

出典:内閣府地方創生推進事務局「つくばスーパーサイエンスシティ構想」(https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/senmonchyousakai/dai3/shiryou_3.pdf)をもとに編集部作成

大阪市は大阪府とともに、関西経済の中心エリアに位置する「うめきた2期地区」と、大阪・関西万博が開催される「夢洲(ゆめしま)地区」で、スーパーシティの実現を目指す。見据えるのは、空飛ぶクルマによる観光周遊や、自動運転(レベル4)(注)による万博会場へのアクセス、遠隔医療や遠隔投薬、AIやロボットによる診療支援などだ(図4)。

(注)クルマの自動運転はレベル分けされており、レベル4は特定条件下においてすべての運転制御を車両システムが行うドライバー不要の走行システムで、限定されたエリアでの実現が想定されている。

図4:大阪府・大阪市スーパーシティ構想の概要

図4:大阪府・大阪市スーパーシティ構想の概要

出典:内閣府地方創生推進事務局「大阪府・大阪市スーパーシティ構想」(https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/senmonchyousakai/dai3/shiryou_4.pdf)をもとに編集部作成

スーパーシティに向けた取り組みは始まったばかりで、日本は2030年ごろの実現を目指している段階だ。海外に目を向けると、カナダのトロント市では、市政府に採択された企業があらゆる場所、ヒト・モノの動きをセンサーで把握し、ビッグデータを活用した街づくりを計画した例がある。しかし、コロナの影響で採算が取れないことを理由に事業から撤退しており、実現に向けての課題は多い。

スーパーシティ構想が実現すれば、空飛ぶクルマや自動運転車、先端医療などが当たり前になり、社会システムそのものが大きく変わる可能性がある。具現化すれば世界から大きな注目を集めることは間違いないだろう。その一方で、解決しなければならない課題は多く、世界中の企業が競って技術革新に取り組んでいる。関連企業の動向に注目しておけば、ビジネスや投資の面で、チャンスを手にすることができるかもしれない。

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