2024.11.11 NEW
株価チャート分析 3つの“売られすぎ”シグナルを知る 野村證券ストラテジストが解説
株価が大幅に下がったときに早めに損切りしようと株式や投資信託を売却したものの、その後株価が戻ったという経験をした方もいらっしゃるでしょう。株価下落が継続するのか、それとも売られすぎ、つまり株価は下がりすぎているのかを見極める方法はないでしょうか。チャート分析(テクニカル分析)における「売られすぎシグナル」を見るのがひとつの選択肢です。野村證券投資情報部ストラテジストの岩本竜太郎が解説します。
売られすぎシグナルは3つある
- 株価が下落した後に、すぐ上がりそうなのか、それともこのまま下がるのかを知りたいという投資家は多いと思います。チャート分析の観点からはどのようなシグナルに注目しますか。
- 今の相場が短期的に見て売られすぎであるかどうかは、相場の転換点が来ているかどうかを見ます。売られすぎの可能性が高いことを示す、相場転換のシグナルは3つあります。①25日移動平均線からの乖離率、②RSI、③騰落レシオです。順番に説明します。
売られすぎシグナル①25日移動平均線からの下方乖離率
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まず、注目したのは移動平均線からの乖離率です。株価が移動平均線からどれくらい離れているかを数値化したものです。短期的な売られすぎシグナルを見るには、日足チャートの25日移動平均線をよく使います
(注)イメージ図です。
(出所)野村證券投資情報部作成
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計算式はこのようになります。
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移動平均線から大きく上振れている「上方乖離」なら、買われすぎであり、株価が反落しやすいことを意味します。逆に移動平均線から下振れている「下方乖離」は、売られすぎで株価が反発しやすいことを意味します。
乖離率が何%のときに「大きい」とみなすかどうかは、見ているチャートの種類や過去の推移によります。日経平均株価であれば、5%乖離していれば移動平均線から一つの目安となります。個別株は変動が大きいので、10%程度が目安となる場合が多いでしょう。
移動平均線から大きく離れていればいるほど、戻る力も強くなると考えます。米国の著名チャーチストのJ.E.グランビル氏が、移動平均線と価格の位置関係に着目してまとめた「グランビルの法則」に含まれる有名な理論です。
売られすぎシグナル②RSI
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次に、RSI(相対力指数)という指標を見てみましょう。一定期間の値動きの合計値のうち、上昇した日の変化幅の合計値の比率を百分率で表示したものです。短期の売られすぎシグナルを見るには、14日間のRSIをよく使います。以下のように計算します。
(注)株価は説明のために作成したものです。「経過日数」欄は当日が「0」であり「-1」は1営業日前を意味します。
(出所)野村證券投資情報部作成
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上の例ではある14日間で、株価が230上がり、110下がりました。計算すると、RSIは67.6%ということになります。
極端な例を言うと、14日間毎日株価が上がったとするとRSIは100%となります。毎日株価が下がったとするとRSIは0%ですね。そのような極端なことはめったに起きず、多くの場合株価は上がったり下がったりを繰り返し、おおむね30~70%のなかにおさまります。その範囲を超えた場合、つまり70%以上だと買われすぎの可能性が高く、30%以下だと売られすぎの可能性が高いと判断できます。
特に、株価が下落基調なのにRSIが上がっている際、「ダイバージェンス(逆行現象)が発生している」と表現します。株価の下落方向のエネルギーが切れて、相場転換しやすいサインと見ています。
(出所)野村證券投資情報部作成
売られすぎシグナル③騰落レシオ
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もうひとつ、別の視点で売られすぎを見極めるシグナルが、騰落レシオです。これは、一定期間の下落銘柄数合計に対する上昇銘柄数合計の比率で相場の過熱感を測る指標です。短期の売られすぎシグナルを見極めるためには25日期間で算出することが多く、以下のように計算します。
(注)数値は説明のために作成したものです。
(出所)野村證券投資情報部作成
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例えば、ある株価指数が下がっている場合に、そのなかで限られた銘柄の急激な下落がけん引していると仮定すると、騰落レシオの数値は下がりません。その母集団全体でのトレンドがあるかどうかを見ることができる指標なのです。25日という比較的長い期間で見ることもあり、発現する頻度が低いシグナルです。これが出たときは大底を付けたと見ることもできます。
騰落レシオは、120%を超えると相場の過熱感を示し、70%を下回ると相場が売られすぎ状態にあり底値ゾーンに入っている可能性が高いことを示すとされています。ただ、直近の経験則で言えば、東証プライム市場において、80%割れの水準が大底圏を示すシグナルとして機能しているようです。
では3つのシグナルを最近の日経平均株価チャートで見てみましょう。まず、25日移動平均線からの乖離率とRSIがこちらです。8月5日に株価が下落した際に、両方のシグナルが出ているのがわかります。
(注)直近値は2024年10月25日時点。
(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成
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次に東証プライムにおける騰落レシオを、日経平均株価と重ねて見てみましょう。東証プライム騰落レシオの線が赤色の帯に達しているときに、70~80%台になっているという見方です。
(注1)直近値は2024年10月25日時点。
(注2)東証プライム騰落レシオの主なボトムと、その前後の日経平均株価を赤丸囲みで示した。
(注3)東証プライム騰落レシオが70~80%の箇所を赤色で網掛けしている。
(出所)日本経済新聞社、東京証券取引所より野村證券投資情報部作成
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やはり、8月5日には東証プライム騰落レシオも発現しており、3つのシグナルがそろったことがわかります。また、2年間で東証プライム騰落レシオが70~80%台に入っていたのはわずかな期間に過ぎません。
- 3つのシグナルを見たほうがいい理由はなんでしょうか。
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3つとも見ている視点が違うので、組み合わせてみることで売られすぎシグナルをより確実にとらえることができます。1つ目、2つ目の移動平均線からの乖離率とRSIは比較的シグナルが発現しやすいのですが、3つめの騰落レシオは上で見たようになかなか発現しません。3つとも発現した場合は、より売られすぎとなっている可能性が高まります。
- 逆のシグナルが出た場合、買われすぎと言えるのでしょうか。
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基本的にはその通りなのですが、上昇と下落で全く同じことが言えるわけではありません。上昇相場は下落相場と比べて、やや緩やかに一方向に動き続けることが多くあります。そのため、中長期的な上昇局面においては、短期的な過熱感を伴ったまま株価が上昇するケースも多くみられます。
つまり、買われすぎシグナルが出ていてもそれはすぐに株式を売ったほうがいいとは限らず、中長期トレンドとして株価が上昇している場合は、保有し続けるほうがいいということもあります。
相場に中長期的な大きな動きが発生していないか、注意深く見ながら、これらのシグナルを活用してみてください。
いずれにせよ、チャート分析は株価を予測する手法のひとつであり、さまざまな要因を加味して判断する必要があります。
- 野村證券 投資情報部
ストラテジスト 岩本竜太郎 - 2005年野村證券入社、北九州支店を経て、2008年より投資情報部。以降、テクニカルアナリストとして国内外のチャート分析を手掛け、お客様向けの冊子「週刊チャート展望」などの制作を担当している。日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。
※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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