2018.05.10 NEW
【生産性向上特集:後編】集中できないのは、「集中する時間」を予約していないせい?
まだ、タスクから時間配分してない? 生産性を上げるためには、「集中する時間」の予約から始めることが重要だった!
前編では、生産性を上げるためには集中力を測ることが必要であり、集中できる状況は個人差があるため、自分なりの「集中できるTPO」を把握することが重要だと説いた。
後編では、「集中できるTPO」の中の「TIME(時間)」の確保が難しいという人のために、「集中する時間」をどう確保するのかについて、前編に引き続き、『集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方(日本能率協会マネジメントセンター)』の著者、井上一鷹さんに伺った。
タスクから時間を配分しない。まず「集中する時間」を予約する
経営の神様と評されるドラッカーは『経営者の条件』でこう記している。
「仕事に関する助言というと、計画から始めなさいというものが多い。まことにもっともらしい。問題はそれではうまくいかないことにある。計画は紙の上に残り、やるつもりで終わる。成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」(『経営者の条件』、ダイヤモンド社)
タスク毎に時間を決めるのではなく、優先度が高くて深い集中が必要な仕事をするためには、先に時間を予約することが有効だと、60年前にすでにドラッカーが提唱していたのは驚くばかりだ。
「集中する時間」を最大化するためには、マイナス要因の排除が必要
このように、まずは「集中する時間」の確保ができるかがポイントとなる。その際、大事になってくるのは「集中を妨げる要因を取り除くこと」だと井上さんは言う。以下の3つは、誰でも簡単に取り組めることばかり。ぜひ参考にしてみて欲しい。
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デジタルデトックス
現代人は誘惑が多い。WI-FIを切り、携帯を切り、タスク以外の情報を遮断しよう。
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コミュニケーションの排除
仕事は一人ではなくチームでするものなので、急に連絡がつかなくなると迷惑がかかる。そこで、共有できるスケジュラーに「集中する時間(集中タイム)」と書き込むなど、周りに宣言してから始めよう。
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マインドワンダリングの回避
仕事中、他に気になることができたり、発想が広がったりすることがあるが、「集中する時間」では、1つのタスクに集中すること。取り組むべきタスクと無関係の資料は目に入らないようにするなど、視覚情報を限定しよう。
これらを実践して、集中できる時間を確保できたら、次にその時間を最大限に活用する方法を試してみたい。
一般の人でも取り組みやすい方法として、井上さんがおすすめするのが、「ポモドーロ・テクニック」という時間管理法だ。TO DO LISTを作り、優先度が高い業務から取り組む手法ではなく、まず「集中する時間」を決めて、そこにTO DOを当て込む手法である。
「25分集中+5分休憩」のポモドーロ・テクニックを取り入れる
では、「集中する時間」を決めて、そこにTO DOを当て込むという手法、「ポモドーロ・テクニック」とは何かを説明しよう。
ポモドーロ・テクニックとは、イタリア人起業家で作家のフランチェスコ・シリロさんによって発案されたもの。ポモドーロとはイタリア語でトマトのことで、フランチェスコさんが作業時間を計る際に使用したキッチンタイマーがトマトの形をしていたため、そのような名前がつけられたという。
「25分の作業時間+5分の休憩時間、計30分」を1セット(=1ポモドーロ)とし、4ポモドーロごとに30分の休憩を取るのが理想的なポモドーロ・テクニックだ。
作業と休憩を交互に行うことで、「飽き」を少なくする効果があるという。時間が区切られているため、集中に入りやすくなるうえに、長時間集中をキープすることができるのだ。最初から4ポモドーロ分の2時間を確保するのはハードルが高そうなら、30分間の1ポモドーロから始めてみてもいいだろう。
以上、本企画では前編と後編にわたって、生産性向上のために「集中力」をどう味方につけて過ごすべきかを紹介してきた。大事なのは、「集中できるTPO」を把握して、「集中する時間」を先に確保すること。プロのホワイトカラーとして、定時で結果を出すためにできる努力は、たくさんありそうだ。
- 監修:井上 一鷹(いのうえ かずたか)
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株式会社ジンズ JINS MEME事業部事業統括リーダー。1983年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルに入社し、大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。2012年にジンズに入社。社長室、商品企画グループマネジャー、R&D室マネジャーを経て現職。学生時代に算数オリンピックアジア4位、数学オリンピック日本最終選考に進んだ経験がある。