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【ヘッドハンター特集:前編】ヘッドハンティングから考える、キャリア設計の論点

【ヘッドハンター特集:前編】ヘッドハンティングから考える、キャリア設計の論点のイメージ

新卒で有名企業に入社し、定年まで勤め上げることが幸せなキャリア――こうしたキャリア観は古い価値観とされ、現在では活躍の場を求めて転職することが珍しいことではなくなってきた。近年ではスカウト型の転職サイトも増え、かつては一部の人のみが対象とされていた“ヘッドハンティング”が身近な存在となりつつある。

特に昨今の人材不足の状況下では、「転職サイトに登録した途端にヘッドハンターから声がかかった」という経験をした読者も少なくないのではないだろうか。

「ヘッドハンターから声をかけられた事実は、素晴らしいことです。ただ、選ばれたという喜びや高額の年収に惹かれて、自分が進みたいキャリアではないのに安易に転職してしまうのは危険です」

そう語るのは東京大学でキャリアデザインの講義を担当し、「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門初代MVPでもある渡辺秀和さんだ。

ヘッドハンティングの実情

今は未曾有の売り手市場。「名門大学を出て、有名企業に勤めている若手・中堅層の方が転職サイトに登録した場合、数百通のスカウトメールが届くことも珍しくありません」と渡辺さんはいう。

しかし、それらのスカウトに惑わされてはいけない。大半のヘッドハンティングは、企業の空いているポストと合致する経歴を持つ人に声をかけているにすぎない。それゆえ、そのスカウトが自分のキャリアにとって価値があるか否かは別問題だというのだ。

本当に価値のあるキャリアを築きたいのであれば、大切なのはヘッドハンターや会社の人事にいわれるがままの“受け身のキャリア観”を捨て、“攻めのキャリア観”を持つことであると渡辺さんは主張する。

その理由として、渡辺さんはビジネスパーソンのキャリアを取り巻く二つの変化を挙げる。

1つめは、日本の大企業の雇用安定神話の崩壊だ。今や日本を代表するような大企業でも、リストラや外資系企業によるM&Aなどが珍しくない。もはや、有名企業に勤めていても定年まで安泰だとは言い切れなくなった。

“受け身のキャリア観”でいると、こういった“いざ”というときに自分のキャリアを守ることができない。

2つめは、転職市場の発達だ。従来は、社内の重要なポジションへ中途採用者を登用するケースは稀であった。しかし今では、経営幹部や幹部候補などのポジションへ中途採用者を登用することはごく普通のこととなっている。それゆえ、“受け身のキャリア観”でいることは、それだけで大きなチャンスを逃しているといえるのだ。

「つまり、キャリアを自分で選べる自由が得られたとも言えますし、自分でキャリアを守る責任を持たざるを得なくなったとも言えます。だからこそ、会社に依存しない、自分の目指すキャリアを主体的に創っていく“攻めのキャリア観”が必要となるのです」

こうした観点から、渡辺さんの会社ではヘッドハンティングを行うことよりも、キャリア相談に訪れる主体的な転職希望者のへの支援に重きを置いているという。

総合職採用の功罪

これからの時代、誰かにキャリアを任せる発想でいてはいけないと指摘する渡辺さん。しかし、そもそも日本社会には、こうした“受け身のキャリア観”を醸成しやすい背景があるという。

「日本の多くの大企業は長い間、総合職採用を行ってきており、学生は自分が何の仕事に就くのか分からないまま入社するのが、当たり前となっていました。また、部署異動願いを出しても、その希望が通らないことが少なくありません。これが就職ではなく、就社と言われるゆえんです」

日本ではこのような採用形態、組織運営が前提となっていたため、キャリアを主体的にコントロールするという発想が芽生えにくかったのは無理もないことだと渡辺さんはいう。

しかし、昨今の学生はこのような就社的発想に疑問を感じ始めているという。「配属リスク」という言葉で、総合職採用を行う日本の大企業を優秀な学生が敬遠するケースも少なくないというのだ。

「今後はこうした状況から、日本の会社も変わっていくでしょう。そうした中で“受け身のキャリア観”を持ちつづけることは、ますますリスキーになっていくといえるでしょう」と渡辺さんは指摘する。

「好きなことを仕事にしよう」の勘違い

しかし、“攻めのキャリア観”を持つといっても、具体的にどうすればよいのだろうか。大切なことは「具体的な転職先を探す前に、まずは、自分が目指すキャリアのゴールを設定し、そこに至るまでのステップを考えることです」と渡辺さんは説く。

「ゴールを設定する際におすすめしているのが、自分の好き・嫌いを軸に考える方法です。好きなことであれば、没頭できてスキルも磨きやすく、結果的に高い収入や高いポジションを得やすくなるでしょう。同じ職種でもスキルレベルによって、何倍も収入が変わることは珍しくありません。また、好きなことを仕事にした方が楽しく充実した人生となるでしょう。業界の平均年収や企業のブランドなどに惑わされずに、自分の価値観を軸にすることが大切です」

しかしこれは、単純に「好きなことをそのまま仕事にしろ」という意味ではないと渡辺さんは補足する。

「将棋が好きな人は、将棋に関わる仕事に就きなさいという意味ではありません。将棋のどのようなエッセンス(要素)が好きなのかを分析してみて欲しいのです。作戦を考えることが好きなのか、勝負のスリルが好きなのか、それとも、最新の定跡を学ぶことが好きなのか……。そこで見つけた要素から自分の好きなことを探り、そこから自分の理想の働き方を考えるのです」

キャリア設計において大事なことは、高い年収の案件を探したり、ブランド力のある企業へ入社したりすることではない。ましてや、ヘッドハンターに勧められるがままに企業の面接を受けることでもない。自分の理想を見据え、そこに至るまでのギャップを埋めていくことだ。

もちろん、在職している企業に対して高い価値を生み出し、恩返しをすることは前提。しかし、そのギャップを今の会社では埋められないのであれば、転職という“飛び道具”を使い、ステップアップしていく必要もある。

ヘッドハンターは、そういったときに「利用」すべきものなのである。

売り手市場は、キャリア実現の追い風に

以上、転職市場の現状、そしてその中で価値あるキャリアを築くために必要な考え方を紹介してきた。

「ヘッドハンティングに惑わされるのは考え物ですが、売り手市場の今はキャリアチェンジがしやすいというのも事実。自分の望むキャリアへ踏み出すチャンスです」と渡辺さん。

「ただし、選考に合格しなければ、せっかくのキャリア設計も画餅に帰してしまいます。また、入社できたとしても、入社後にしっかりと活躍できなければ仕方がありません。転職を成功させるには、さまざまな準備や心構えが必要なのです」

続く後編では、理想のキャリアに近づくためのスキルや、求められる能力などについて紹介していく。

【お話をお伺いした方】
渡辺 秀和(わたなべ ひでかず)
コンコードエグゼクティブグループ代表取締役社長CEO。株式会社三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティングを経て、2008年、株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立。マッキンゼーやBCGなどの戦略コンサルタント、投資銀行・ファンド、外資系エグゼクティブ、起業家などへ1,000人を越えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援。
第1回「日本ヘッドハンター大賞」のコンサルティング部門で初代MVPを受賞。
2017年に東京大学で開講されたキャリア設計の正規科目「未来をつくるキャリアの授業」(全12回)のコースディレクターとして、企画・講義を担当。著書に『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社刊)など多数。

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