2021.06.17 NEW
「オンライン」で相手との距離を縮める―営業や会議をリアルに劣らず成功させるスキル
在宅勤務やテレワークが当たり前となった今、対面での会議や交渉事が極力避けられるようになり、非接触でのオンラインを介したリモート業務が脇役から主役になっている。このようなニューノーマル時代には、まさしくオンラインの特徴を捉えて商談をスムーズにし、より高い成果を上げるスキルがいっそう求められていくだろう。
「オンラインセールス」のスキルは、画面越しでも相手との距離を縮める能力にも繋がり、社内外のオンラインミーティングなど、さまざまな場面にも活かすことが可能だ。
今回は、オンライン営業システムの開発・販売を手掛ける国内のリーディングカンパニー、ベルフェイス株式会社の取締役である西山直樹(にしやま なおき)さんに、今こそ求められるオンライン上でのセールスとミーティングの、ポイントとスキルについて聞いた。
オンラインの強みは“時間”と“商圏”
2020年4月の緊急事態宣言以降、オンラインを活用したワークスタイルが一気に広まり、定着したことが、オンラインでの営業活動、つまりオンラインセールスの可能性を広げている。
「これまで、オンラインセールスの一番のライバルは、対面営業でした。汗をかいて足を運び、お客様とお会いして……、ということが当たり前であった世の中では、お客様と直接会わない営業などうまくいくはずがないと考える人も多かったのです。ところがコロナ禍で状況はガラリと変わりました。この1年でオンラインセールスの市場が一気に認知された、というのが私たちの印象です」
オンラインセールスのメリットについて、西山さんはこう語る。
「まず、誰もが感じるのが“時間”の効率化でしょう。オンラインならお客様の会社に訪問するための移動時間は必要ありません。そのため人によっては一日数時間、デスクワークの時間が増えた、という人もいるでしょう。その時間を他の業務に活用できることは本人にとっても、会社にとっても大きなメリットです。また、移動がないためどこに居るお客様とでも商談できる。これまで関東エリアのお客様しか相手にできなかった“商圏”が、全国、あるいは海外にまで広がることも当然あります」
営業はお客様と会うことからスタートする。そんな思い込みから脱却することで、一気に時間やエリアといった壁が取り払われる。まさにオンラインによってさまざまな可能性が広がっていくのだ。
その反面、慣れないリモートでの商談がなかなかスムーズにいかなかった、と言う声も上がる。その多くが、パソコンなどの画面を通してだと、顔の表情やその場の空気感、反応がわからず、相手の感情が読みにくい、というものだ。
特にこれまで、現場での営業を大切にしてきた人ほど、相手の手応えがない、気持ちが伝わらないと不安に感じてしまうことも多い。現場での成功体験が多い人ほど、オンラインセールスを否定する傾向にあった。だが、そうした言い訳は通用しないのが、ニューノーマル時代のビジネスなのだ。
オンラインだからこその“信頼”を得る
では、オンラインでのビジネスを成功させるために、必要なものとは一体何なのか。西山さんはまず“信頼”というキーワードを挙げた。
「対面とオンラインの大きな違いは、お客様との距離の縮め方です。これまでは足繁く通ったり、雑談などをしながら人と人との距離を縮めることができました。しかしオンラインではそうした互いの空気感を共有することは難しい。そこで画面越しでも相手との距離を縮めるスキルを実践することで“信頼”ができ、自分の価値を認めてもらうことに繋がるのです。
オンラインの仕事が中心になると、時間にゆとりが生まれると先ほど言いましたが、この時間を商談の事前準備に使うことを、私はおすすめしています。企業、担当者、社長、可能な限り調べ上げて、お客様が持っている課題をしっかり想定する。その精度が高ければ高いほど、お客様との距離を縮めることができる。お客様に『君と話せば新しい視点や気づきを与えてくれる』と感じてもらうことができれば、それが信頼を築くことだと私は考えます」
特に営業の現場では、オンラインに変わったことで生まれた時間を、それだけアポイントの“数を増やす”ことに使おうと考えがちだが、むしろ数よりも一回一回の“質を高める”ことが重要だと西山さんは語る。
直接対面していない状況でも、相手の関心を高め、引きつける工夫があれば、対面とは変わらない、いやそれ以上に距離感を縮めることも可能となるのだ。
オンラインミーティングのスキルを高める基本テクニック
次に、具体的なスキルについて、4つのポイントを挙げてもらった。
(1)相手を飽きさせない工夫をする
オンラインでは、相手との対面が画面越しになってしまうため、どうしてもリアル感に欠け、緊張感や集中力が途切れがちになってしまう傾向にある。オンラインでのミーティング中に、話を聞きながら他の作業をされてしまった苦い経験がある人も少なくないだろう。
オンラインで何かを伝えようとするとついつい一方的に話をしてしまいがちになるが、それでは相手を飽きさせてしまう。コミュニケーションが一方通行にならない工夫として、こまめに相手の様子を見ながら質問を投げかけたり、プレゼンの途中でヒアリングを入れたりするなど、積極的な対話で、相手がこちらに集中してくれる仕掛けづくりを心掛けることが重要だ。
(2)相手と会話のスピードを合わせる
対話を心掛けるうえで大切なのが、会話のスピードだ。対面でのリアル感がないからこそ、お客様との会話でしっかりとコミュニケーションをとれるようにしたい。ベルフェイスの調査によると、トップセールスの特徴として、相手の話すスピードに合わせて、自分の話すスピードを調整する、というデータがある。デキるビジネスパーソンほど、相手に合わせる会話のスキルを身に付けているようだ。
(3)ミーティングの時間内に合意形成をとる
オンラインならではの機能を活用することで、商談の質を高めることもできる。そのひとつがチャット機能。商談中に、議事録をまとめてチャットで共有することで、オンライン上でリアルタイムに合意形成が取れ、お客様の信頼獲得にもつながる。
(4)受け答えははっきりと、リアクションは大きめに
オンラインでは音声がこもったり、音に遅延が生じてしまったりすることもある。相手に聞き取りにくいことがないよう、言葉は明瞭に、受け答えははっきりと言うよう、常に心掛けることが大切だ。また、画面越しでは表情や感情は伝わりにくいため、少し大きめのリアクションで、話がしっかりと伝わっていることを、画面を通して伝えていく工夫もしたい。
オンラインセールス、成功の秘訣
だが、セールスに限っていえば、相手にわかりやすく説明するスキルだけでは十分とはいえない。セールスの最終目標は、商談を成功させ、契約というゴールに至ることにあるからだ。
それではオンラインでの商談を、スムーズにクロージングまでを完結させるにはどうしたらいいだろうか。
「実際のビジネスにはさまざまな案件があります。月額数万円のものであれば担当者とのオンラインミーティングで契約まで結びつくこともあるかもしれませんが、何億円もの契約を一度も会わずにオンラインだけで完結するのは現実的に難しいでしょう。今はコロナ禍で、なるべく対面での交渉は避けたいと考えますが、今後はオンライン、電話、対面を上手に組み合わせながら、効率よくビジネスを進めていく工夫というものも必要です」
例えば、まず電話で担当者にヒアリングを行い情報収集して、精度の高い提案を準備する。その後のオンラインでの会議ではこの商談について意思決定できる人に同席してもらい、一緒に話を聞いてもらう。さらに契約は対面で行うなど、段階を踏んで準備をすることが商談成功のひとつの道筋になる。
また、オンラインは対面での会議と異なり、場所や時間的な制約も少ない。先方の興味や関心が高いうちに好機を逃さないアクションを起こすこともポイントだ。対面での会議では、次は一週間後というような場合も多いが、オンラインなら互いの空いた時間で、当日、あるいは翌日など、近めの日程でアポイントが取りやすく、比較的スピーディに商談を進めることもできる。
こうした柔軟な対応で、これまで以上に積極的にアプローチすれば、それが対面でなくても、オンラインだからこその強みを活かしたビジネスを実現することが可能となるだろう。
失敗を恐れずに、新たに得たテクニックの実践を
これまで変化を恐れて滞っていた日本のビジネス環境が、コロナ禍という状況によって大きく変わろうとしている。世の中が今、オンラインでのビジネスを当たり前にやる時代になりつつあるのだ。
多少、オンラインでの商談や会議がうまくいかなくても、数をこなすことで、対面とのギャップをおぎなうコツを得ていくことができるだろう。1つ、2つと成功体験を積むことで、これまでとは違った、新しい仕事の方法や進め方を発見する可能性も広がっていく。ぜひオンライン上で相手とのコミュニケーションに必要なテクニックをおさえて、今後の実践に活かしてほしい。
- 【お話をお伺いした方】
- 西山 直樹(にしやま なおき)
2007年に大学卒業後、営業コンサルティング/アウトソーシングを手掛ける株式会社セレブリックスに入社。大手IT企業のインサイドセールス部隊構築支援を中心に、延べ80プロジェクトの新規セールス部隊立ち上げを経験し、200名を超える営業マンの採用やマネジメントに従事。2015年同社を退職し、ベルフェイスの立ち上げに参画。現在はレベニュー部門(マーケティング/セールス/カスタマーサクセス/イネーブルメントチーム)を統括。