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20代の社会人が知っておきたいお金の話――第3回「自分で資産形成」

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今回は、自分で工夫する「自助」の視点から、自分自身で資金を調達したり、資産を形成したりする方法について考えてみます。

最近、物価上昇(インフレ)が話題です。一般的に賃金の上昇はインフレに「遅行」するものといわれます。「資金ができてから資産形成について考えよう」と考えるのではなく、できることから始めていくのが肝要です。

給与増加率の鈍化とその対策

国税庁の「令和3年(2021年)分民間給与実態統計調査」によると、日本の労働者の年間平均給与額は443万円で、1990年代より低い水準でした。20年もの間、企業の業績が伸び、株主還元も増えても、賃金の伸びは停滞していたのです。

最近になって給与を増やす企業が相次いでおり、平均給与額も1990年代の水準に並んで、それを超える水準に達する可能性はありますが、欧米など主要先進国の給与水準に追い付くには、まだ時間がかかると言えそうです。

こういった状況に打ち勝つには、目先の支出を減らす節約だけでは限界があります。自分自身の「市場価値」を高めて給与を増やすか、自ら金融の知識を身に着けて積極的に投資をし、資産を形成する方法を検討してもよいかもしれません。

自らの市場価値を高めるには、副業を始めたり、資格を取得してスキルアップを図ったりすることが有効でしょう。

一方、20代から投資を始める意義は大きいと言えます。少額からの積立投資を長期間続けることで、今後の人生で待ち受けるイベントに備えた資産形成をすることができます。積立投資は、始めるのが早ければ早いほど大きな効果を期待できるのも特徴です。

長期投資の重要性

長期投資の効果を実感するため、野村證券の「みらい電卓」を使ってみましょう。

【毎月積み立てる】

例えば、25歳から40年間、毎月5万円を年利3%で運用すると、40年後には4,585万円になります。

【元本を増やす】

もし、資金を全額用意してから運用を開始しようと考えた場合、40年後に4,500万円まで資産を増やすには、約1,400万円の資金を一度に用意することが必要だとわかります。20代の方が簡単に用意できる金額とは言えないでしょう。

5万円をコツコツと積み立てていけば、大きな元本を増やす場合と同じく、利息分を「再投資」する形で再び元本に組み入れ、その合計を次の年の利息計算の元本とする「複利」の効果も十分享受することができます。

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ファイナンスの3つの要素

では、資産を増やすために「長期の積立投資」だけを意識しておけばよいのでしょうか。ここで重要になってくるのは3つの「ファイナンス」の手段、「ローン」「保険」「資産形成」の3つです。まずは、それぞれの手段について説明します。

ローン

ローンは欲しいものをすぐ手に入れるためのサービスで、主に銀行が提供しています。住宅や自動車の購入資金や子どもの教育資金などが必要になった際、ローンを利用してお金を借りることで、手元にお金がなくても物を買ったりすることができます。

ローンを使う上で注意すべきことは、返済額には利子が上乗せされるため、必ず借りた以上の金額を返済しなければならないという点です。

つまり、金利が高ければ高いほど返済すべき金額が増え、返済期間も長くなる可能性が大きくなります。金利が1%異なるだけで負担額には大きな差が生じます。

金利には「固定金利型」と「変動金利型」があり、変動金利型を選んだ場合はローンを組んだ当初の金利は低くても、将来的に金利が上がって毎月の返済額が増える可能性があることに注意しましょう。

特に、インフレが進み、日本銀行の金融政策の修正がなされている現在のような状況下では、変動金利型を選ぶと想定外の事態に陥る可能性もあります。

また、高額な住宅ローンを組む場合は、ボーナスや将来の昇給、転職の可能性などについて深く考え、返済できなくなる事態も想定しなければなりません。ローンの年間返済額をできるだけ抑えられるよう、頭金を用意するなどして借入額を調整するようにしましょう。

保険

保険はリスクをカバーするための仕組みです。病気やケガ、死亡のほか、自動車事故などさまざまなリスクに備えてみんなでお金(保険料)を出し合って保険会社に支払い、保険会社がリスクに遭った人に必要なお金(保険金)を支給したり、サービスを提供したりするものです。

生命保険については、20代のうちは病気になるリスクが低く、加入する必要をあまり感じない人も多いでしょう。

例えば、結婚して家族ができた後、子どもが経済的に自立するまでの期間に、自身や配偶者に万が一のことが起き、収入が途絶えてしまった際などに、保険に加入していれば、当面の生活資金を得ることができるかもしれません。

いつ起こるかわからないリスクに備えるのが保険です。長期にわたり「保険料」を払い続けることになります。同じ条件で同じ程度の保険金を得られる複数の保険があれば、できるだけ保険料の低い保険を選びたいものです。第2回でご紹介した個人で加入するより低コストな「グループ生命保険」はよい選択肢になるはずです。

資産形成

毎月の所得の一部を、長期にわたって投資信託などの金融商品に投資して積み立てていくことを「資産形成」と呼びます。

ここでいう「長期」とは20~30年という単位です。なるべく運用手数料などが低い商品を選びつつ、企業型確定拠出年金(企業型DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)、NISAなどの非課税投資枠を上手に活用することが、着実な資産形成につながります。

では、期待できる収益率(利回り)は平均で年何%程度を見込めばよいのでしょうか。

まず、為替変動などのリスクもなく、あらかじめ利回りが確定している定期預金などは、低金利な状況が続く中、「資産形成には向いている」とは言えないのが実情です。そのため価格が変動する商品に目を向ける必要があります。ただし、将来の利回りが約束されているわけではないため、過去の結果を一つの参考として見てみます。

金融庁の「NISA早わかりガイドブック」によると、1989年以降に毎月同じ額を国内外の株式と債券に均等配分して、計100万円、20年間にわたって積み立てた場合、始めた時期がいつであっても1年あたりの収益率は2~8%になったとしています。

より大きなリスクを許容できる人なら、全世界株式のインデックス(株価指数)に連動する投資信託を積み立ててもよいかもしれません。リスク許容度のほか、投資目標、投資期間などを考慮し、投資する商品を選びましょう。

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3つのファイナンス、重要な点は?

そして、最も重要なのが「ローン」「保険」「資産形成」の3つのファイナンスを組み合わせて利用することです。例えば、ローンの返済が必要な時期は、万一に備えて医療保険にも加入しつつ、将来のために適切な額の資産形成も合わせて行うことが重要になってきます。

改めて、ファイナンスの手段を活用する際に、検討・注意すべき点を考えてみましょう。

欲しいものをすぐ手に入れるための「ローン」は、できる限り用途を絞って活用することが肝要です。ボーナスの金額や将来の昇給など、自らの所得などに「不確実性」があることも踏まえて検討し、慎重に年間の返済額を決めましょう。

いつ起こるかわからないリスクや出費に備える「保険」に加入する際は、できる限り保険料を抑えられるよう検討しましょう。その分を貯蓄や投資に回すことができます。

将来に向けて、計画的にお金を準備する「資産形成」は、自分のリスク許容度や投資目標、投資期間、手数料などを踏まえ、無理のない金額で行うよう心がけましょう。また、投資による資産形成はあくまで余剰資金で行うことが推奨されており、その点も考慮に入れる必要があります。

つまりローン、保険、資産形成のいずれも

1)自分にとって妥当かどうか――多くの商品やサービスを比較してから選ぶ
2)長期戦のため、コスト意識が重要――保険料や手数料などのコストもしっかりチェックする
3)「なんとなく」は失敗の始まり――しっかりと調べて、計画的に利用する

これらのポイントが大切、といえます。
「3つのファイナンス」のカタチを理解し、自分の人生設計と合わせて上手に組み合わせて活用していきましょう。

「お金の話」に初めて触れる方は難しく感じるかもしれませんが、一つひとつ着実に身に着けていけば、豊かな人生を送れるのではないでしょうか。

  • このコラムは、2023年8月時点の情報に基づくものです。

文責 野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室

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