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人生100年時代でも怖くない。知っておきたい資産形成術とは【第2回】

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人々の寿命が延び、100歳まで生きることが珍しくない「人生100年時代」が来ると言われています。老後の生活資金はどう確保すればよいのでしょうか。

野村證券のオンラインセミナー「知っておきたい!人生100年時代の資産形成~貯蓄から投資へ~」では、CFPとDCプランナー1級の資格を持ち、資産形成のアドバイスを行う同社資産形成推進部(当時)の舟木周子が、これからの時代の資産形成の必要性やノウハウ、リスクを減らす投資のコツなどを解説しました。第1回記事に続き、その内容をご紹介します。

投資信託ってなに?

投資信託とは、専門家が投資をしたい人からお金を集め、分散投資をする商品です。プロが運用するから損が出ないわけではなく、預貯金のような元本保証はありません。

しかしながら、個人がプロの分散投資を活用することができ、ご自身に合った投資方針の商品を選ぶことができます。リスクとリターンを考慮し、国内外の株式や債券など何に投資している商品を選ぶかはとても重要なことです。

投資信託を選ぶポイントとして、インデックスファンドなのかアクティブファンドなのかという点があります。インデックスファンドは市場と同じ値動きを目指す投資信託、アクティブファンドは市場を上回る収益を出すことを目指す投資信託です。

インデックスとは市場の値動きを示す指標です。例えば日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)があります。プロに運用を任せることで、何百、何千もの企業に分散投資できます。インデックスファンドは手数料が安く設定されているものが多いこともポイントです。

アクティブファンドとは、インデックスを上回る収益を目指す商品です。ファンドマネージャーという運用の専門家がそれぞれの運用方針に従い、個別の企業を独自に調査・分析し、銘柄を選定します。

企業の成長性や株式の割安度など何に注目するか、大企業で安定を重視するか、中小企業でハイリスク・ハイリターンを狙うかなどの目的で商品が変わります。成長性が高い企業に投資することを「グロース投資」と言い、割安な株式に投資することを「バリュー投資」と言います。

投資信託を選ぶ指標「シャープレシオ」とは

大型株は知名度があり時価総額が大きく、流動性が高い銘柄が多いです。一方中小型株は知名度が低く、時価総額が小さいことや流動性が低い銘柄がよくみられます。今後飛躍的に成長する企業の原石もあり人気化する銘柄もあれば、全く見向きもされない銘柄もあります。アクティブファンドの目論見書つまり投資信託の説明書のようなものですが、ここにはこのようなどういう銘柄群に投資をするのか等の投資方針が記載されています。

ほかに着目いただきたいのが過去の実績です。過去3年や過去5年のリターンなどの年間実績を見るのはもちろんですが、やはりリスクが低くてリターンが良い商品を選びたいもの。その指標となる数値にシャープレシオがあります。

下のグラフは横軸にリスク、縦軸にリターンを取ったもので、商品ごとの矢印の傾きを求めています。リターンが良ければグラフ上の方に位置し、リスクが低くてリターンが良いものは左上の方に出てきますので、矢印の傾きは急になります。活用例を見てみましょう。

投資信託A,B、Cがあったとします。AとBを比べると、同じリスクを取るのであればリターンが高いほうがよいので、当然Aでしょう。では、AとCはどうでしょう。確かにAの方がリターンは高いのですが、リスクに対するリターンを矢印の傾きを見ると、Cの方が傾きは急で、運用効率が良い商品であることがわかります。

シャープレシオは投資信託の実績として掲載されることが多いので、投資信託を選ぶときに参考にしていただければと思います。

投資信託の選び方のキホン

投資信託の選び方のポイントをおさらいすると、まずはどのように分散投資するのかを考えて、国内外の株式が中心に組み入れられている投資信託か、債券などが中心に組み入れられている投資信託か、などを選びます。その中で市場全体と同じ動きをするインデックスファンドにするか、市場を上回る収益を目指すアクティブファンドにするかを考えます。

インデックスファンドは、手数料が安いことが多い点もポイントです。アクティブファンドを選んだ場合には、どんな方針でプロが投資対象を選んでいるかも重要です。割安重視なのか、成長重視なのか。大企業対象か、中小企業対象かといった観点がありました。

株式はどう選べばよい?

ですが、やはり応援したい企業がある、ご自身で投資先を選びたい方もいらっしゃると思います。そのような場合には、直接株式に投資することができます。ちなみに、株式に投資するとは、会社にお金を出して、事業を行ってもらうということです。事業が好調で利益が上がれば、利益の中から配当金をもらえたり、株式が値上がりしたりします。

人生100年時代、ずっと働き続けるのは難しいでしょう。働かずに年金だけで生活するのも難しいかもしれません。会社にお金を出して、自分の代わりに働いてもらうことも生活を豊かにする方法として期待できます。

では、株式はどう選べばよいのでしょうか。専門的な知識もないし、難しいと思われる方も多いかと思います。でも、ヒントは意外と身近なところにあるものです。新しい技術を利用した製品が売れているとか、お店に行列ができているとか、日ごろの生活で見たり聞いたりしたこと、自分で経験したことも判断材料になります。

「今年はインフルエンザが流行しそう」などニュースから世界の流れをつかむことも重要です。身近で気に入った企業が見つかれば、その株式の実績について客観的な数値で比較、確認したいものです。

押さえておきたい3つの数値

確認すべき代表的な3つの数値をご紹介します。PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)です。プロも株式の割安度や企業の成長性を考えて投資先を選びますが、PERやPBRはまさに株式が割安なのかがわかる数値です。ROEは企業がいかに効率的に利益をあげているかを示します。

まずPERは、企業の利益と比較して株価が割安か割高かを判断できます。具体的には分母に利益、分子に株価×発行済み株式総数である株式時価総額を置き、利益に対して株式時価総額が何倍かを見ます。数字が小さいほど割安です。

割高な株式と割安な株式だとどちらを買うべきでしょうか。例えば、利益10億円、株式が1億株発行され、株価が1株200円のA建設と、利益が40億円、株式が1億株発行、1株400円のB建設があったとします。

A建設の株式時価総額は200円×1億株で200億円なので、PERは分母に利益10億円、分子に時価総額200億円で20倍です。B建設の株式時価総額は400円×1億株で400億円なので、この場合のPERは分母に利益40億円、分子に株式時価総額400億円で10倍。この場合、PERはB建設が小さいので割安ということになります。

注意が必要なのは、株価には市場で取引している人の期待度が反映されていることです。PERが低い場合、多くの人がこの会社に期待をしていないから、利益が出ているのに株価が低くなっているとも言えます。割安なのではなく、安かろう、悪かろうの株式もあるということです。数値のみで割安と判断するのではなく、株価の推移や会社の事業内容なども見て投資を検討する必要があります。

PBRってなに?

PBRは、純資産に対して株式が割高か割安かを見る数字です。純資産とは、その会社が持っている資産から負債を差し引いた数字です。今すぐ会社が事業をやめて解散した場合に残る価値なので、純資産のことを解散価値とも言います。

例えば、純資産が60億円、株式が1億株、株価が1株100円のC建設と、純資産が60億円、株式が1億株、株価が1株50円のD開発があるとします。C建設の株式時価総額は100円×1億株で100億円ですので、この場合のPBRは分母に純資産60億円、分子に株式時価総額100億円で、1.67倍。一方で、D開発の株式時価総額は50円×1億株で50億円、PBRは分母に純資産60億円、分子に株式時価総額50億円で、0.83倍です。数字が小さいD開発のほうが割安ということになります。

PBRが1倍を割り込んでいるのは、株式時価総額が解散価値である純資産より小さいことを意味します。これは、株式を全部買い占め、その会社を解散させた方が利益になるくらい株価が安いということになります。

実は日本の上場企業では、PBR1倍を割り込んでいる企業も多いとされます。これらの企業の株価は割安ではありますが、日本企業に対する期待が低いことの裏返しとも考えられます。こちらもPER と同様に数値のみで割安と判断するだけではなく、今後株価が上がっていくか、会社の事業内容を見る必要があります。

ROEでわかるのは「経営効率」

次に、ROEについて説明します。ROEは、株主が出資したお金を企業がどれだけ増やせているかを示します。自己資本とは、株主が出資したお金(資本金)と、会社が事業を行って増やした部分(剰余金)などの合計です。この自己資本に対し、企業が1年間でどのぐらい利益が上げられたかというのがROEです。

例えば、自己資本が60億円の企業が利益10億円を出していれば、10÷60で、ROEは16.7%です。ROEが高ければ高いほど、その利益で株主に配当を行ったり、自己資本をさらに増やしたりでき、経営効率が高い企業と言えます。最低8%はある企業を選択するのも一つの考え方です。

ただし、株主の持ち分である自己資本が少なく、負債が多い企業もROEが高くなりがちなので、注意する必要があります。

配当をどう考える?

利益を上げる企業は配当を出しやすく、その水準を比較する指標もあります。配当利回りです。配当利回りは株価に対してどのぐらい配当金がもらえるかを示す数字です。仮に株価が1000円、1株当たり年間20円配当が出れば、配当利回りは2%。投資した企業を応援しながら、配当という形でお小遣いを受け取るというイメージです。ただ、業績などによって配当は増減します。

配当が増えれば配当利回りは上がりますが、株価が下がっても配当利回りは上がります。配当利回りが高い企業であっても、株価が下落して配当利回りが上昇している場合は、今後の株価がどうなりそうか注意する必要があります。

配当は企業の業績によって変わり、約束されたものではありません。現在の国債や預金はリスク(価格の振れ幅)は小さいものの、利回りや利息は高くありません。一方、株式の配当利回りは非常に高い水準を維持しています。2022年4月時点で東証プライム市場の平均配当利回りは1.88%です。配当利回りが1%を超える銘柄が8割を超え、2.5%を超える銘柄も5割以上あります。

さらに、配当金を増やせる会社は、業績が安定的に上昇している底力のある会社です。次のグラフはある程度規模が大きく、過去19年以上連続で配当金が増えている企業の株価の平均と、日経平均株価と比較した表です。日経平均株価は2004年比で2.5倍以上になりましたが、連続増配企業の平均は5倍以上に上昇。配当金に注目することで、配当金だけでなく、値上がり益も狙えるかもしれません。

株主優待も魅力

また、株主優待も株式投資の魅力です。優待を実施する企業はここ20年で2倍以上に増えました。多くは自社製品やサービスを提供するものですが、テーマパークや映画の招待券、買い物時のキャッシュバック、商品券やカタログギフトなどを株主に贈る企業もあります。ライフスタイルに合わせ、ご自身にとって効果が大きい優待銘柄を選定するのも一つの視点です。

【第3回へ続く】

  • この記事は、2023年4月時点の情報に基づくものです。

文責・野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室

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