2025.02.28 NEW

日経平均株価一時37,000円割れ 急落の背景と今後の見通し 野村證券ストラテジストが解説

日経平均株価一時37,000円割れ 急落の背景と今後の見通し 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

写真/稲垣純也

2月27日の米国株式市場では、ナスダック総合株価指数が前日比-2.78%の大幅下落となりました。本日28日の日本株式市場も大幅に下落、日経平均株価の終値は3万7,155円(前日比-2.88%)となり、一時3万7,000円台を割り込みました。日米両市場が揃って大幅な下落となった背景について、野村證券投資情報部のシニア・ストラテジスト、尾畑秀一が解説します。

トランプ関税政策についてマーケットの見方が変わった

今回の日米株式市場の下落の引き金の一つとして、2月27日(日本時間2月28日早朝)にトランプ大統領が追加関税に関する発言を行ったことが挙げられます。

トランプ大統領は就任前に、全世界に対して一律の関税引き上げを行う、特に中国には60%の関税を課すなどの発言をしていました。しかし、1月20日に大統領に就任した直後には関税政策を発動させませんでした。

具体的な政策が出てきたのは2月1日で、カナダとメキシコには25%、中国には10%の関税を課すという大統領令にサインをしました。ただし、カナダとメキシコへの関税発動は延期し、実際にすぐ発動させたのは中国に対する10%の関税のみでした。これは大統領就任前の発言と比較するとかなり小規模な政策であり、マーケットでは「関税政策は各国とディールするためのカードであり、ブラフ(脅し)に過ぎないのではないか」という楽観的な見方が広がっていた側面があると思います。

しかし、2月27日のトランプ大統領の発言により景色が一変しました。3月4日に延期していたメキシコとカナダに対する追加関税を予定通り課すと発言しました。そして中国に対してはさらに関税を10%上げて、20%の関税を課すと宣言しました。これによりマーケットの見方は「トランプ大統領の発言はブラフではなかった」というものに変わり、株式市場の下落に結びついた可能性はあります。

今後のスケジュールとしては、3月12日に、鉄鋼とアルミへの関税が適用されます。次は、4月1日に各省から大統領への通商政策に関する報告の期限がきます。そして4月2日には、相互関税の詳細など関税政策の全貌が明らかになります。そこに向けては、貿易赤字額が中国に次いで大きいEU(欧州連合)への追加関税など、さらに新しい政策が出てくる可能性もあります。

トランプ政権の「米国第一の通商政策」の概要と進捗状況

トランプ政権の「米国第一の通商政策」の概要と進捗状況のイメージ (注)巻頭のアルファベットはホワイトハウスによる。全てを網羅している訳ではない。
(出所)ホワイトハウス、JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)資料より野村證券投資情報部作成

2月、米国株式市場にあった不透明感

そもそも2月中旬から米国株式市場は不安定でした。主要株価指数のひとつであるS&P500指数は、2月18日、19日と2日連続で終値ベースでの史上最高値を更新したものの、その後は軟調に推移していました。

背景には、米国の消費減速が意識されたことがあります。2月22日発表のミシガン大学の消費者マインド指数は67.8から64.7へと大きく悪化しました。また、5年から10年のインフレ期待が、3.3%から3.5%へと上昇しました。強弱様々な統計があるなかでも、インフレ懸念が高まって消費者マインドに悪影響を与えているという印象が出てきていました。ちょうど米国の2024年10-12月期決算発表が一巡したところで、特に消費関連では生活必需品セクターのモメンタムが弱くなっているのではないかという見方も出てきました。そこへきて、トランプ関税の見方が変わったことで大きく下落したといえます。

半導体市場への懸念

その他の株安の要因として、半導体市場への懸念も挙げられます。前日の米国株式市場では、エヌビディアが決算発表を受けて前日比で8%以上下落し、市場全体の下げを主導しました。また、本日の各国株式市場を見ると、本来関税の影響が大きいはずの中国市場よりも韓国市場の下落が顕著であり、半導体関連の懸念が相場に影響を与えていると考えられます。日本市場でも半導体関連株の下落が目立っています。

今後については、AI関連が引き続き半導体需要をけん引するというのが基本的な見方ですが、米国による対中半導体輸出規制の強化などの動きも浮上しているため、半導体市場の動向には引き続き注視する必要があります。

米国経済の腰折れの可能性は低い?

消費減速懸念はありつつも、ではこれから米国経済が腰折れするのかというと、そうではないと思います。米国の労働需要は堅調で、賃金もしっかり伸びているのがその根拠です。

ただし、イーロン・マスク氏が主導する政府効率化省(DOGE)により、政府職員のリストラが大きくクローズアップされており、消費者マインドが下がりやすい状況は続くと思います。

週明けに発表される、ISM製造業指数、非製造業指数、雇用統計などの重要統計は特に注目です。ここで米国景気減速の兆しが見られなければ、今回の楽観論からの調整という相場は落ち着くでしょう。

野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
尾畑秀一
1997年に野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。入社後、一貫してエコノミストとして日本、米国、欧州のマクロ経済や国際資本フローの調査・分析に従事、6年間にわたり為替市場分析にも携わった。これらの経験を活かし、国内外の景気動向や政策分析、国際資本フローを踏まえ、グローバルな投資戦略に関する情報を発信している。

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