2025.11.21 NEW
日経平均株価1,000円超急落 エヌビディア決算後の株高続かずも、過度な悲観は禁物 野村證券・岡崎康平
撮影/タナカヨシトモ(人物)
11月21日の東京市場では日経平均株価が反落し、値下がり幅は一時1,200円を超えました。20日の上昇分(1,286円)をほぼ打ち消した格好です。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平は、足元の株価下落の背景について①AI(人工知能)・半導体ブーム終焉への懸念、②前日発表された9月の米雇用統計の2つを挙げ、いずれも「悲観視するのは行き過ぎ」と述べています。詳しく解説します。
日経平均株価急落の背景
- 21日の株式市場では日経平均株価が大きく値下がりしました。
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背景には2つの理由があると考えています。まず1つ目は海外市場でのAI・半導体関連銘柄の調整です。20日の米国株式市場では大手テクノロジー株を中心に値下がりが目立ちました。米半導体大手エヌビディアの8-10月期決算発表を受けて投資家心理が改善する場面もありましたが、長続きしませんでした。AI・半導体ブームの先行き不安が根強く、エヌビディアの決算発表が割高な銘柄に利益確定売りを出すきっかけになったのではないでしょうか。こうした流れが日本の株式市場にも波及したのでしょう。
2つ目は20日に発表された9月の米雇用統計です。米政府閉鎖の影響で1ヶ月半ほど遅れての公表となり、最も注目が集まる非農業部門の就業者数は前月比11万9000人増と、市場予想を上回りました。
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長やほかのFOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバーはこのところ、米利下げに慎重な姿勢に傾いています。米雇用統計がさえない結果となれば、利下げ期待は高まりやすかったでしょう。しかし堅調であれば、FRBはインフレを警戒して利下げを見送らざるを得ません。今回の結果を受けてFRBの利下げが遠のくとの見方が広がったことも、金利動向に敏感なグロース株の代表格であるテクノロジー関連銘柄への売りにつながったと見られます。

- 米国の雇用情勢は回復基調にあるのでしょうか。
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非農業部門の就業者数こそ良好な結果でしたが、雇用統計の内容を分析すると労働需給の緩みが示唆され、決してポジティブであるとは言い切れません。FRBが重視する失業率は4.4%と、前月比で0.1%ポイント上昇しました。労働参加率も上昇しています。つまり、「働かないとダメだ」と考える人が増えているということです。インフレ高進が背景にあると見られ、生活が苦しくなっていることを示しているのかもしれません。実際、平均時給も前月比で0.2%増と、8月(0.4%増)と比べ減速しており、米雇用情勢は決して強くはないと言えます。
TOPIXは一時上昇、先行きは悲観視する必要なし?
- AI・半導体ブームの先行き不安と米雇用の弱さは、日本株の重荷になりそうでしょうか。
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AI・半導体関連銘柄の先行きですが、ただちに「バブル崩壊」といった状況に陥る可能性は限られていると思います。こうした分野は安全保障など国家の根幹にかかわっているうえ、巨大テクノロジー企業が技術革新を主導しています。実体の有無があいまいなベンチャー企業が数えきれないほど生まれた2000年前後のIT(情報技術)バブルとは、少し違う状況と言うべきでしょう。足元の相場環境は、急ピッチの株価上昇を受けた後の調整という面が大きいと考えます。
また、米雇用情勢の弱さを踏まえれば、たとえ12月のFOMCでFRBが利下げを見送ったとしても、2026年中の利下げ余地は十分にあります。FRBの利下げによって米国景気が下支えられたり、金利低下そのものがAI・半導体関連銘柄の追い風になったりする可能性も十分にあり、先行きを悲観視するのは行き過ぎでしょう。
21日の東京市場で株価指数やAI・半導体関連株の値下がり幅の大きさを見て、びっくりしてしまう人もいるかもしれません。しかし、よくよく見ると、21日は不動産や生活必需品など、内需銘柄を中心に堅調に推移している銘柄も多いです。自動車株なども上昇しています。株式市場全体で見れば、一部のハイテク銘柄の比重が大きい日経平均株価の下げ幅が1,000円超に達する一方で、自動車や銀行といったセクターの比重が大きい東証株価指数(TOPIX)は一時上昇するなど、全面安となった18日とはかなり様子が違っています。
実は、日経平均株価やAI・半導体関連銘柄が示すほど、株式市場の動揺は大きくありません。外部環境を冷静に見極め、銘柄選別をすることが大切です。
- チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎康平 - 2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。
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