
ファイナンシャル・
ウェルネス研究会 Financial Wellness Research Institute
有識者:大阪大学 大竹文雄教授、早稲田大学 大湾秀雄教授、日経新聞 田村正之編集員、一橋大学 伊藤邦雄名誉教授(ご登壇回順)
アドバイザー:フィンウェル研究所 野尻哲史代表
参加企業:味の素、クボタ、積水ハウス、双日、日立製作所、三菱重工業 ※五十音順、「株式会社」は省略しております
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1.ファイナンシャル・ウェルネスとは:問題意識の明確化
ファイナンシャル・ウェルネスとは、個人の経済的な健康、すなわち、足元の金銭的な義務を果たすことができ、将来の金銭的な状況について安心感があり、生活を楽しむための選択ができる状態を意味する。企業は、社員の多様性を前提に社員の幸福度を高めることで、人的資本拡充を図り、生産性の向上、企業価値向上を実現することが重要であるという認識が広がっている。幸福度を高める要素の一つとしてファイナンシャル・ウェルネス向上があり、欧米の先進的企業は社員のファイナンシャル・ウェルネス向上を支援する取り組みを具体化し始めている。
第一章
ファイナンシャル・
ウェルネスとは:
問題意識の明確化View Report -
2. 中長期的なファイナンシャル・ウェルネスの前提となる公的年金制度
社員のファイナンシャル・ウェルネスの出発点とも言える公的年金制度については、必ずしも十分な理解が得られていない。「マクロ経済スライド」による給付抑制は行われるが、所得代替率の2割引き下げが実額の2割引き下げと混同されるなど、過度に悲観な誤解も見られる。正確な理解を得ることが極めて重要となる。
第二章
中長期的な
ファイナンシャル・
ウェルネスの
前提となる
公的年金制度View Report -
3. ファイナンシャル・ウェルネスへの行動経済学の応用
ファイナンシャル・ウェルネス支援において、ナッジやデフォルトといった行動経済学の知見を活かす余地は大きい。人事部から社員に向けた発信において、詳細な制度の説明よりも先に「いつまでに何をする必要があるか」を簡潔に記述するといった工夫を行うことが、会社全体の生産性向上に繋がる可能性もある。社員が多様で一律の対応では行き届きにくい場合、ピア効果(人は身近な存在の影響を大きく受けること)の応用なども考えられる。
第三章
ファイナンシャル・
ウェルネスへの
行動経済学の応用View Report -
4. ファイナンシャル・ウェルネスと生産性
技術革新が急速に進み雇用制度・報酬制度の変革が必要となる中で、社員がリスキリング等により外部オプション価値(会社の外で活動することにより得られる効用)を高めることができれば、本人と会社の両方にとって最適な退職時点を設定することが期待できる。その際、社員が十分な資産を築き、老後の安心感を得ていれば、学び直しや起業といったリスクテイクも行いやすく、将来の選択肢が増加する。その観点からも、ファイナンシャル・ウェルネスの重要性は増している。
第四章
ファイナンシャル・
ウェルネスと
生産性View Report -
5.ファイナンシャル・ウェルネスと人的資本
近年、優秀な人材確保の観点で、社員のwell-being(幸福)の重要性が高まっている。Well-beingの構成要素に、ファイナンシャル・ウェルネスも含まれる。企業は、社員のwell-beingを測定・可視化することにより、有効な施策に繋げることができる。日本企業が伝統的に採用してきたメンバーシップ型雇用は限界に直面しており、人的資本経営への移行が求められる。その際、社員のwell-beingと会社の成長を同期化させることが重要である。人的資本経営は日本企業再生の重要なテーマである。
第五章
ファイナンシャル・
ウェルネスと
人的資本View Report