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スマホで撮った写真で症状を判定? 「医療×AI」で変わる未来

スマホで撮った写真で症状を判定? 「医療×AI」で変わる未来のイメージ

医療分野でAI(人工知能)を用いて業務効率化などを目指す「医療AI」は、世界で実用化が進んでいるが、日本も政府を中心にAI活用に向けた工程表が作成され、医療AIの開発・活用の促進に向けた話し合いが重ねられている。近い将来、医療がAIでどのように発展していくのか、公表されている資料をもとに将来性を見てみよう。

「医療×AI」が目指す未来

2021年5月、アメリカの大手IT企業が、AIを活用した皮膚病判定支援ツールを開発したと発表した。このツールはWebベースのアプリケーションで、スマホで患部の写真を撮影し、いくつかの質問に回答すると、AIがデータをもとに診断をして、可能性のある疾患を画像とともに教えてくれる、というものだ。

医療分野におけるAI活用は、さまざまな企業や団体が開発を進めている。医療AIが実用化されれば、デジタル問診票により病院での待ち時間を減らせたり、近くに病院がなく、すぐに受診できない患者でも利用できたりするようになる。また、AIによる画像解析でポリープや早期のがんを見つけることができる。日本人は2人に1人が一生のうちにがんと診断されるといわれているが、これにより見逃しを減らし、がんの予防や早期発見が期待できる。

日本の医療現場は、急速に進む高齢化による負担や、医師の過酷な労働環境も問題視されており、効率化や医師のサポートが不可欠な状態にあると言えるだろう。

医療AIを活用することで、業務効率化だけでなく、医師の技量に頼らない安全な手術や、より正確な診断ができるなど、医療格差を減らす未来を目指している

日本もロードマップを策定して検討進める

では、AIの活用が期待されている医療分野について具体的に見てみよう(図1)。

図1:AIの活用が期待されている医療分野
分野 概要
ゲノム医療 ゲノム医療とは、ヒトの遺伝情報を広く調べ、その結果をもとに病気の診断をし、患者に合わせた治療を行う医療のこと。
がん患者の遺伝子変異が明らかになれば、病気のなりやすさや薬の反応などが予測できるようになるが、解析時間など膨大な手間がかかるため、AIの活用で時間短縮などの効率化が期待されている。
画像診断支援 レントゲンやエコー、MRIなどの画像から診断を行う画像診断の分野は、AIの実用化が最も早いと考えられており、作業効率化や診断の質の向上、ポリープやがんの早期発見などでAIの活用が期待されている。
AIによる内視鏡画像の解析・診断支援では、すでに医療機器として承認されたソフトウェアもある。
診断・治療支援 問診や一般的な検査などをAIが行うことで、病気の予測や医師によるカルテ作成などの作業を効率化できる。
デジタル問診票により病院での待ち時間を減らすことや、近くに病院がなく、すぐに受診できない患者でも利用できることが期待されている。
医薬品開発 AIの導入で創薬プロセスの大幅な短縮や、医薬品開発の成功確率向上が期待されている。また、人間にはない発想や、新たな法則の発見により、創薬の飛躍も期待されている。
介護・認知症 AIによる支援計画策定や、AIを搭載したロボットによる認知症予防などが期待されている。「見守りロボット」や「介護ロボット」などの開発や導入が進められている。
手術支援 手術の際に、AIを搭載したロボットが、画像から臓器や腫瘍の位置を示すなど、医師の技量によらず安全な手術ができるように支援することが期待されている。

厚生労働省は、「保健医療分野 AI 開発加速コンソーシアム」を設置し、これらの医療分野におけるAIの本格導入に向けた検討を進めている。公開されている工程表を見ると「画像診断支援」では、2021年度から医療機器メーカーへ教師付画像データ(注)の提供と、AIを活用した画像診断支援プログラムの開発を目指すとある。

また、「診断・治療支援」では、2021年度から頻度の高い疾患についてAIを活用した診断・治療支援を実用化し、2023年度には比較的稀な疾患についてもAIの活用を広げる予定だ(図2)。

このように、医療分野でAIの本格導入に向けて動き始めているが、工程表を見る限り、そのプロセスは準備段階のものが多そうだ。

(注) AIに学習させる際には、「教師あり学習」と「教師なし学習」がある。「教師あり学習」では、問題と正解がセットになったデータを使ってAIに学習させる。「教師なし学習」ではAIに正解を与えず、AI自身に定義を発見させる。

図2:AI活用に向けた工程表

図2:AI活用に向けた工程表

出典:厚生労働省「保健医療分野 AI 開発加速コンソーシアム 議論の整理と今後の方向性(令和元年6月28日策定)を踏まえた工程表について」をもとに編集部作成

AIの本格導入に向け、解決しなければならない課題は多い

AIは医療分野での活用が大いに期待されているが、本格導入までのハードルは高い。そこで、どんなリスクや課題が残されているのか整理してみたい。

最も懸念されているリスクは、AIによるシステムエラー(間違い)だろう。もしも、AIによる診断ミスが発生すれば、患者の健康上の問題につながりかねない。さらに、システムが広く普及した後であれば、一度に多くの患者が被害を受ける可能性もある。AIの誤診リスクをある程度把握するまで、十分な検証が必要になるだろう。

また、エラーを限りなくゼロに近づけるためには、大量の症例データをもとにAIに学習させる必要がある。

しかし、現時点では症例データが医療機関・診療所にそれぞれ保管されており、データのフォーマットが一元化されていないことや、プライバシーの問題から、データを一つにまとめることが難しい。仮にデータを集めたとしても、情報漏洩防止の観点から、データの集中管理を行う機関の創設が必要になる。これらの課題は早急に解決しなければならないだろう。

そのほか「稀な症例は、AIの学習不足で精度の高い診断ができない」「AIの特性上、診断に至るプロセスが人間には分からないという“ブラックボックス問題”があるため、人間が分析して医療の発展につなげるのが難しい」などの課題もある。これらは、医療分野に限った課題ではないものの、AIが活躍する社会を実現するには、解決しなければならないテーマだ。

医療AIの市場拡大と将来性

医療現場におけるAIの本格導入は、もうしばらく先になりそうだが、市場は大きく成長しそうだ。株式会社矢野経済研究所の調査データによると、国内の診断・診療支援AIシステム市場規模は2019年の3億円から、2025年には100億円に拡大すると予測されている(図3)。これは診断・診療支援における市場予測であるため、医療AI全体や世界の状況も含めれば、市場規模はさらに大きい。

図3:診断・診療支援AIシステム市場規模予測

図3:診断・診療支援AIシステム市場規模予測

出典:株式会社矢野経済研究所「診断・診療支援AIシステム市場に関する調査(2020年)」(2020年12月17日発表)をもとに編集部作成

※ 医療機器メーカー、医療IT関連企業、製薬企業、その他関連企業を対象にした調査。 2020年7月~10月に実施。

※ 事業者売上高ベース

※ 2020年以降は予測値

※ AI等を搭載した診断支援システム、AI等を搭載した診療支援システムのソフトウェアを対象として、市場規模を算出した。

自分や家族が病気になったとき、近い将来訪れる医療分野の変革に助けられることがあるかもしれない。医療分野ではAIだけでなくさまざまな先進医療に関する取り組みがされているため、引き続き注目していきたい。

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