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2022.11.10 NEW

注目が高まる「スマートグラス」とは? メガネ型デバイスがつくる近未来の生活

注目が高まる「スマートグラス」とは? メガネ型デバイスがつくる近未来の生活のイメージ

メガネ型のウェアラブルデバイス、スマートグラスの進化が著しい。

一見するとただのメガネだが、スマートグラスはレンズがディスプレイになっている。そのため実際に見えている光景に、インターネットで取得した動画、写真、文章、音声などさまざまなデジタルデータが重なって表示される。ハンズフリーで、かつ視界も確保した状態で、必要な情報をレンズに映して閲覧・視聴できるのだ。

富士キメラ総研の調査によれば、スマートグラス市場は2030年に14兆円近くの市場規模になる予測だ。現在は主に産業分野での業務用デバイスの普及が中心だが、今後は個人用スマートグラスの開発・実用化も進んでいくことが予想される。

スマートグラスは、私たちの生活にどう活用できるのか。種々の活用事例を基に、スマートグラスの展望を見ていきたい。

現実世界にデジタル情報を追加する「スマートグラス」とは

スマートグラスとは、ディスプレイになっているレンズを通して、インターネット上のさまざまなデジタルデータを表示できるウェアラブルデバイスだ。メガネと同じように装着できるため、両手を自由に使いながらインターネットの映像や情報を見ることができる。

もちろん、動画の視聴やインターネットの情報を見るだけなら、スマホやパソコンでも事足りる。腕時計型のウェアラブルデバイスであるスマートウォッチでも、動画や音声の再生、メールの確認といった機能がある。スマートグラスがこれらのデバイスと違うのは、肉眼で見える現実世界の上にデジタルデータを重ねて表示でき、かつハンズフリーで扱える点にある。

スマートグラスはレンズの上に映像や情報を表示しても、視界が遮られることはない。たとえば、ジョギング中の道にデジタルの地図を重ね、手ぶらで走りながらレンズに道順を表示できる。スマホを取り出す必要はなく、走りながらメールを確認したり、電話を取ったりできる。

「目の前に情報を広げながら手ぶらで何かをできる」この自由度の高さが、スマートグラスの大きな特徴だ。

今、スマートグラスでできること

2022年現在、販売されているスマートグラスには以下のような機能がある。

【見る・聞く】動画、写真、音楽、資料、メールなどのデジタルデータの閲覧・視聴
【通話】動画または音声通話
【録音・撮影】音声の録音・写真や動画の撮影
【健康管理】センサーでまばたきの速度や視線移動などを把握して健康を管理する
【翻訳】レンズで撮影・写した文字の翻訳機能

スマートグラスでできることのイメージ1

【現実を拡張】肉眼で見える現実の光景に動画や資料、メールなどのデジタルデータを重ねて表示
【共有】肉眼で見える現実の光景を映像や音声で共有、インターネットを介した画面共有

スマートグラスでできることのイメージ2

いずれもハンズフリーで活用できるため、多様な使い方が可能だ。

近年は「遠方の人と資料やファイルを共有できる」という特性を活かした業務用スマートグラスが、建設業や製造業などの産業分野や医療の現場で急速に普及している。

業務用の進化がめざましいスマートグラス。ビジネスシーンの活用事例

機能面の高さとハンズフリーの利便性から、近年は業務用スマートグラスを導入する企業が増えている。特に目立つのは、製造・建設・物流業など両手を使う作業が多い産業分野での活用事例だ。

・遠方現場の作業支援(遠隔支援)
遠方にいる管理者と作業者をリアルタイムに繋ぎ、遠隔地の作業を支援。作業者はスマートグラスのレンズにマニュアルを映して作業ができ、レンズを通して現場の様子を管理者に報告できる。管理者は遠方から複数の作業者の様子を確認し、指示出し・管理がリアルタイムに行える。

・熟練者の技術継承
熟練者の作業の流れをレンズ越しに録画保存したり、レンズ越しにリアルタイム中継したりできる。複数のデバイスと繋げれば、熟練者の技術を全国の現場の作業者に同時に承継できる。

・情報共有の強化・迅速化
スマートグラスを通じて現場の様子を映像・音声でリアルタイム共有することにより、情報共有をより正確に、より迅速に行うことができる。

現在は製造業・物流業での活用が多いスマートグラスだが、2022年5月には、救急医療の現場でもスマートグラスの試験導入が行われた。救急隊員がスマートグラスを装着し、患者の状態・容態・心電図などの情報を搬送先の病院にリアルタイムに共有する試験だ。実現すれば、より的確な緊急処置ができるようになる。今後は一分一秒を争う医療現場でも、スマートグラスの活用は広がっていくだろう

遠方にいる者とレンズ越しで繋がるスマートグラスの機能は、作業ミスの軽減から業務効率化、人手不足の解消や技術継承など、さまざまなメリットがある。少子高齢化による人手不足やコロナ禍による人員の配置・移動が課題になっている時代だからこそ、求められる機能といえる。

個人用の開発も着々と。スマートグラスがあると近未来の生活はどうなる?

先んじて業務用が普及しているスマートグラスだが、実は個人用の開発・販売も着々と進められている。個人用スマートグラスで現在普及している機能と、今後一般化が期待される機能を見ていこう。

・個人用で現在普及している機能
現在多くの製品で普及しているのは、レンズで動画視聴や音楽再生を楽しむ機能。電車や大きなモニターを置けない部屋など、空間に制限がある場所でも小さなレンズで大画面視聴できるのが特徴だ。メガネ型なら人目も気にならず、屋内外問わず利用できる。ジョギング中に手ぶらで地図やメールの着信を確認したり、料理中で手が汚れていても料理の手順を確認したりできる。スマホを取り出すことなく、目の前の日常にデジタルデータを映せる機能にはさまざまな魅力がある。

・今後一般化が期待される機能
写真や動画の撮影、翻訳機能などは、まだ一部のハイエンドモデルのみにしか展開されていない。今後これらの機能が普及して一般化すれば、スマートグラスの活用シーンはさらに広がりを見せるだろう。

たとえば海外の旅行先では……お店の看板やメニューを即時翻訳して気に入ったお店をピックアップ。すてきな景色を見つけたらすぐに写真・動画を撮影してSNSでシェア。地図走行アプリが現地でのナビゲーションをしてくれるため道に迷うこともない。歩いている道上にさまざまなデジタルデータが自動で反映されるため、普段何気なく歩いている道はもちろん知らない土地でも気兼ねなく楽しめる。
習い事や講座の受講は……モニター越しからレンズ越しでの受講に変わり、リアルな体験が可能になる。両手を使うピアノや絵画、書道などのレッスン受講がより手軽に自宅で行えるようになるだろう。

スマートグラスが進化して高機能モデルが浸透していけば、こんな未来が当たり前になるかもしれない。

今後のスマートグラス市場 「ネクストスマホ」になる可能性も

「いくらスマートグラスが便利でも、すでにスマートフォンがある以上、一般的には浸透しないのでは」

そう考える人もいるだろう。しかし先述したように、スマートグラスの技術開発と機能拡充が進み、スマートフォンと同等の機能を備えるようになれば状況は大きく変わるだろう。スマートフォンの機能をスマートグラスに凝縮できれば、動画視聴も撮影も通話も、すべて手ぶらで行えるようになる。まさに「手を使わないスマートフォン」の誕生だ。目の前のレンズいっぱいに情報を広げながら、耳も手も使わず、同時に違うことができる。この利便性に慣れてしまえば、スマートフォンを“持って入力すること”すら煩わしいと思うようになるかもしれない。

実際、オーディオグラスと呼ばれるメガネ型デバイスは一般市場でじわじわと売れている。オーディオグラスには動画視聴・画面共有機能はないが、耳をふさがずにハンズフリー通話や音楽を聴くことができる点に魅力を感じている一般ユーザーは少なくないことを示している。

米国の調査会社によれば、世界のスマートグラス市場規模は 2022から2030年にかけて年平均10.3%で成長し、2030年には127億6,000万ドルに達する見込みとなっており、スマートグラス市場が大きな飛躍を遂げると想定されている。

現在子どもから大人まで日常生活に欠かせないほど普及しているスマートフォンも、世界で初めて発売されたときはさほど普及しなかった。しかし2007年により洗練されて一般化したスマートフォンが登場してから、15年で一気にデジタルデバイスの主役となったのだ。スマートグラスはまだ黎明期にあるが、変化が激しいIT業界で10~15年もたてばスマートフォン並みの機能を備えていてもおかしくない。「ネクストスマホ」として期待されるスマートグラス市場に、今から注目してみてはどうだろうか。

【関連リンク】

近未来のような世界が現実世界にも?

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