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2022.11.24 NEW

AIOpsという概念。システム運用自動化でIT運用が劇的に効率化される?

AIOpsという概念。システム運用自動化でIT運用が劇的に効率化される?のイメージ

ITがわたしたちの暮らしに欠かせないものになり、多くの企業が何らかの形でITを取り入れている。しかし、IT運用の現場では、膨大なデータの処理や活用ができていない、システム間のデータのやり取りができない、IT人材が足りないといった課題が散見され、システムを安定的に運用するために多くのコストと労力がかかっている。そんな中、新たな概念AIOps(エーアイオプス)が提唱され、システムを効率的に運用することが可能になってきている。そこで今回は、まだ多くの人に認知されていないであろうAIOpsがどのような概念で、どんな効果が期待できるのか解説する。

AIOpsとは?

近年、AIOpsという概念が提唱されるようになった。AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)とは、人工知能(AI)と運用(Ops)を組み合わせた言葉で、「AIを活用したIT運用」を意味する。アメリカの調査会社が提唱した概念だ。

AIOpsとは、機械学習(ML)(注1)とビッグデータを組み合わせ、AIの支援を受けながら、システムを安定的に運用しようという考え方だ。取り扱うデータの量や種類が増えると、それらを従来のシステムで処理するには、遅れやトラブルといったさまざまな問題が生じてくる。そこで、データを速く・正確に処理できるというAIの特徴を活かし、運用を効率化しようという「AIOps」が提唱されるようになった。

(注1)機械学習(ML)…人間が経験から学ぶように、「機械=コンピューター」が膨大なデータをもとに学習すること。AIを実現するためのデータ分析技術の一つ。

ITの運用でAIOpsが提唱され始めている背景は?

では、AIOpsがなぜ提唱され始めるようになったのか、具体的に見てみよう。

まず背景として考えられるのは、現在の情報システム運用が、多様化している企業の情報システムに対応しきれなくなっているケースがあることだ。企業によっては部署ごとに異なるツールやルールで運用されていることも珍しくなく、次々に生成される膨大なデータを速やかに処理することが困難になっている。自動化が困難な場合には、人の手によって処理が行われることになるが、それではヒューマンエラーが発生する可能性があり、処理できるデータの量も限られてしまう。増え続ける膨大なデータを正確かつ迅速に処理するには、AIによる効率的な運用AIOpsが求められるのだ。

また、ITサービスの中には、社会インフラの一部となっているものがあり、これまでの運用方法ではユーザーが求める品質でサービスを提供することが難しくなっていることも背景にある。高いレベルでシステムを安定的に運用するには、ビッグデータを活用して最適な環境を構築するAIOpsツールが欠かせない

さらには、IT人材の不足も背景にある。経済産業省の調査では、IT需要の伸びが高水準で推移した場合、2030年には約78.7万人のIT人材が不足すると試算(注2)している。また、企業の人事担当者を対象にした調査では、人材不足を感じている企業の2割が「技術職・エンジニア(WEB・システム・ネットワーク)」が不足していると回答している(図1)。こうしたIT人材の不足に対して、AIOpsによる効率化を行うことで人的リソースを削減できる。

(注2)出典:経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT人材等育成支援のための調査分析事業)―IT人材需給に関する調査―調査報告書」

図1:人材が不足している職種

図1:人材が不足している職種

出典:エン・ジャパン株式会社「2022年『企業の人材不足』実態調査」をもとに編集部作成

企業の人事担当者を対象にしたインターネット調査。有効回答数は525社。2022年2月21日~5月24日に実施。

AIOpsの導入で可能になること・もたらされるメリットは?

AIOpsを活用するメリットはさまざまだ。その事例をいくつか見てみよう。

パフォーマンスの監視と分析でエラー修復のスピードが向上する
ビッグデータをもとにした分析はAIが得意とする分野で、発生する大量のデータを分析してパフォーマンスが適正な値を保っているのか監視し、パフォーマンスが低い場合には自動で修正することができる。システムの変化にも対応が可能だ。

また、AIには学習するほど能力が向上するという特徴があり、エラーの検知やその対応といった学習をすればするほど、問題解決と修復スピードの向上が期待できる。ストリーミングサービスを提供するIT企業のケースでは、AIOpsによる迅速な復旧によりネットワーク変更の問題による停止時間を93%削減したとの報告がある。

判断するのが難しい異常を検知し、きめ細やかな対応ができる
ソフトウェアの異常検知は、システムダウンなど原因が明らかなもの以外は自動化するのが難しいとされている。例えば、システムの応答が遅くなるといったソフトウェアのエラーでは、自動化をする際に「A以上の値を示した場合がエラー」という具合に、基準値を人が入力して運用する。そのため、基準値にわずかに届かないケースでは、システムで検知できないエラーが発生してしまう。しかし、AIOpsを導入すれば、発生の状況に応じて適切な値をAIが導いて判断することから、きめ細かく異常を検知できるようになる

人が判断するより、迅速・正確に対応できる
AIの作業は自動で行われるため、迅速で正確な処理が期待できる。ビデオオンデマンドサービスを提供する企業では、ネットワークのエラーの原因をAIOpsで特定し、顧客クレームが発生する前にオペレーションセンターが問題を認知できるようになった。また、IVR(自動音声応答システム)の設定を自動化することで、顧客連絡とコールセンターの負荷軽減という効果も得られた。

また、原因が分からないと対処できないシステム障害の場合も、AIOpsを導入していれば、AIが大量のデータを解析して迅速にその原因を分析してくれる。さらに、学習経験をもとに、発生しても対処しなくてもいいエラーと対処が必要なエラーに分類し、対処が必要なエラーに対しては対処法を検索することも可能になるため、エラーに対して素早く対応できるようになる。

AIOpsコスト削減が可能になる
AIOpsの導入がコスト削減につながるのは、人の手によって行われていた作業を単に自動化できるためだけではない。プロバイダーサービスを提供する企業は、インフラの更新によって発生するエラーの原因を特定できず、トラブルが起こるたびに技術者が顧客のもとへメンテナンスに駆けつけていた。しかし、AIOpsの導入で問題の原因が特定され、迅速に修正することが可能になり、技術者の訪問にかかるコストを大幅に削減することができた。

AIOps市場の展望

AIOps市場は成長が期待されている。株式会社グローバルインフォメーションによると、世界のAIOps市場は、2021年の30億米ドルから、2026年には94億米ドルに達し、その間の年平均成長率は26.1%に達すると予測されている。

いまやITは暮らしに欠かせない社会インフラとなっており、効率的に運用するためのAIOpsの重要性は高まっている。ビジネスシーンで導入が進むのにあわせ、業界の動向には注目しておきたい。また、投資を考えたときにも成長が見込める有望な市場になるだけに、関連業界の様子もチェックしておくといいだろう。

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