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2023.03.09 NEW

ハイテク化する現代生活は半導体に支えられている。激化する国際競争と日本の戦略

ハイテク化する現代生活は半導体に支えられている。激化する国際競争と日本の戦略のイメージ

ここ数年、ニュースでたびたび「半導体不足」が報じられてきた。実際、エアコンなどの家電を買おうとしても入荷まで半年待ちだったり、車の場合は納車の目途が立たなかったりと、半導体不足を身近なこととして実感した人も多いのではないだろうか。

半導体が使われる製品には、スマートフォンやパソコン、自動車がまず挙がる。それだけでなく、エアコンなどの家電や家庭で使用する遠隔操作機能付きのガス給湯器と、身の回りのあらゆる製品に搭載されている。

私たちの生活に必要不可欠な半導体だが、そもそも半導体とはどういうものなのかを知らない人もいるのではないだろうか。そこで半導体の基本をおさらいし、各国の製造状況や技術開発に関する動向、そして半導体がもたらす未来について考えてみよう

暮らしのハイテク化で半導体の需要はどんどん高まる

半導体は、本来、ある特性をもった物質のことであり、鉄や銅のように電気をよく通す「導体」と、陶器やゴムなど電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ。半導体物質の代表としては、シリコンが挙げられる。
一般的に「半導体」と呼ばれているのは、半導体物質を用いた電子部品の場合も多い

電子部品としての半導体は、機能の集積度により主に3種類に分類される。

最も単純なものが、電流を一方的に流すダイオードや、電流をコントロールするトランジスタを代表とする「ディスクリート半導体」だ。そして、単一の機能だけを持つディスクリート半導体を組み合わせて基盤に付けた電子部品が「IC(集積回路)」であり、ICよりもさらに集積度が高いものが「LSI(大規模集積回路)」だ。ICやLSIが演算処理や電圧の制御といったさまざまな機能を果たす。

この記事では、これらの電子部品についても「半導体」とする。

半導体は、ICT(情報通信技術)やビッグデータの処理、AI(人工知能)を支えている。最近注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)も、ビッグデータやAIなどを駆使しているので、半導体技術の恩恵を受けているといえるのだ。

「半導体は産業のコメ」と30年以上もいわれ続けてきたが、現代のようなICTを中心とした社会ではさらに重要な位置を占め、多くの産業を支えるキーデバイスとなっている

図1:身の回りの製品に使われる主な半導体

図1:身の回りの製品に使われる主な半導体_スマートフォン 図1:身の回りの製品に使われる主な半導体_自動車 図1:身の回りの製品に使われる主な半導体_家電製品類

普段利用している家電には、もともと半導体が使用されてきたが、最近ではインターネット接続ができる、いわゆるIoT化の機能を盛り込むため、さらに多くの半導体が使われるようになった(図1)。

たとえば最近のエアコンには、従来の機能である温度調節に加え、スマートフォンを使う遠隔操作や、AIで部屋の間取り・家具の配置・人の動きなどを認識し運転を自動制御するような、快適な暮らしを追求する機能が次々に搭載されている。

各国が半導体のサプライチェーン強化に動き出している

「半導体不足」というキーワードのほかに、「サプライチェーンの混乱」を耳にする機会も多くなったのではないだろうか。

サプライチェーンは、原料の調達、部品の製造、製品の完成を経て、消費者に届くまでの一連の流れのことで、供給網(サプライ)が鎖(チェーン)のように連なっている状況をいう。

たとえばスマートフォンの人気ブランドは、600を超える世界の拠点で部品の製造、組み立てを行っている(図2)。

図2:人気ブランドのスマートフォンのサプライチェーンマップ

図2:人気ブランドのスマートフォンのサプライチェーンマップ

出典:Apple, Inc.「2022 Supplier list」をもとに編集部作成

スマートフォンのデジタルカメラに使われるイメージセンサーの製造は日本の電機メーカー、半導体チップの製造は台湾の半導体メーカー、組み立ては中国やインドで行っている。部品ごとに製造拠点を集中させることでコストを削減できるメリットがある。しかし、地政学リスクや自然災害などで、何かの部品が製造できない、または輸入できない問題が起きると、製品そのものが作れなくなる状況は容易に想像できるだろう。とりわけ半導体の供給が停止すると、多岐にわたって混乱を招く。

だからこそ、世界の主要国では近年、半導体の生産基盤を自国で安定させるために、製造工場の誘致や技術開発に莫大な予算を投じる政策を打ち出している。アメリカのバイデン政権も、半導体工場を誘致、のちに工場建設が発表され、その投資額は400億ドルに上る。

また2022年2月には、欧州委員会も欧州域内で半導体の研究開発や生産の強化を図り、安定供給を目指すための法案を発表した。2030年までに次世代半導体のEU域内生産の世界シェアを20%以上得ることを目指す。さらに、アメリカの大手メーカーは、ドイツに工場を建設することを皮切りに、欧州域内で今後10年間、総額800億ユーロを投じる半導体バリューチェーンの構築を行う予定だ。研究開発から、製造、最新のパッケージング技術までを一貫体制で行い生産能力を強化するのだ。

日本も、半導体の開発・製造を推し進める。経済産業省は、2021年6月、「半導体・デジタル産業戦略」を策定。「半導体分野の目指すべき方向性」と題して、海外メーカーとの合弁工場を設立して先端ロジック半導体の国内製造基盤の確保や、次世代半導体の製造技術の確立を盛り込んだ。

また、2022年11月に、日本の大手企業8社が出資した半導体メーカーが国際的大手IT企業と提携し、次世代半導体の技術開発を進めていくと発表。2027年にも国産化の開始を目指す。

現在、半導体製造において重視されているのは、より微細化した半導体を安定して量産することだ

半導体は回路線幅が細いほど高性能になる。最新スマートフォンになると4nm(ナノメートル)幅(1nmは10億分の1m)が使われているモデルもある。大手半導体メーカー間では、より高性能な半導体を生産するための開発競争が激化しており、今後は3nm、2nmの半導体量産技術の確立がトピックとなってくる。

台湾や韓国などの有力企業がすでに、ICチップなどを専門に生産する半導体ファウンドリとして存在しているなかで、日本は、最先端半導体の「2nm世代」の量産体制を国内に整備して、国際競争力を高めたい考えだ。

半導体がもたらす未来

欧米、アジアとのし烈な半導体競争は日本の国力、将来の国際的地位にも影響を与える重要なポイントになる。半導体の製造体制が安定し、半導体が日常生活のあらゆるシーンでさらに活用されていけば、暮らしの自動化が進み、より便利で快適な、環境にもやさしいライフスタイルを実現できるだろう

たとえば、半導体が支える新技術にロボティクスがある。産業用だけでなく、ファミリーレストランで料理を運搬するロボットや、家庭用のお掃除ロボットなど、気が付けば身近な存在になっているが、今後もロボティクスは発展していくだろう。

上述のように、自動車には多くの半導体が使われ、「走る半導体」ともいえるが、高性能な上級車種になるほど、その種類も数も増える。目下、技術開発の焦点となっているのは自動運転だ。この技術にも、自動ブレーキのような運転支援から完全自動運転まで段階があり、2025年を目途に高速道路での完全自動運転の実現を目指している。

さらに、5Gインフラの整備やICT技術を活用する「スマートシティ構想」もある。これは、災害時のスムーズな情報の取得・発信や遠隔医療など生活のあらゆる分野をデジタル化する街づくり計画だ。そうなると、処理すべきデータ量が膨大になり、電力消費が大幅に増加することが予測される。さらなる省エネ技術の開発が急がれるが、ここでも半導体が欠かせない。シリコンに代わる新素材を用いた新世代パワー半導体は、消費電力を大幅に下げることを課題の1つとして技術開発が進められている

ロボットや自動運転、スマートシティ……。まるでSF映画のように思えていた生活スタイルの実現が近づいている。そのカギを握るのが半導体技術の革新なのだ。
現代生活をさらに発展させるだろう半導体業界の動向に注目したいところだ。

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