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2024.10.25 NEW

バフェット流の日本株スクリーニング 野村證券ストラテジストが解説

バフェット流の日本株スクリーニング 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

2024年10月10日、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイが円建て社債の発行条件を決定し、発行総額は2,818億円となりました。今後、同社による日本株への投資増加が注目されやすいでしょう。今回は、バフェット流の日本株スクリーニングのアイデアについて、野村證券のストラテジストが解説します。

バフェット銘柄の特性を踏まえた日本株スクリーニング

バークシャー・ハザウェイはマグニフィセント7(大手テクノロジー企業群)ほど目立たないものの、安定してS&P500種株価指数を上回るパフォーマンスを上げています。2018年1月に著名クオンツファンドのリサーチャーらが「Buffett’s Alpha」という論文を発表し、同社の高いシャープレシオ(リスクに見合うリターンを上げているかを測る運用効率の指標)の一因を高クオリティー(優良)・低リスク株投資とレバレッジだと整理しています。

同社の保有銘柄の特性を見ると、S&P500構成企業に比べて、高配当利回り、低PBR(株価純資産倍率)、低PER(株価収益率)、やや低ボラティリティー(変動率)、高時価総額が挙げられ、ROE(自己資本利益率)はS&P500構成企業並みかやや低いことが分かります(中央値ベース)。定性的には、ビジネスモデルが単純で安定したキャッシュフローを創出する企業が好まれる傾向にあります。かつてはハイテク株や銀行株には投資しないと言われていましたが、近年は大手携帯企業や大手投資銀行がポートフォリオの多くを占めています。

同社が日本株投資を行っていると発表したのは2020年8月で、それ以降も段階的に持ち分の増加を報告しており、大量保有報告書の公表ベースで直近の規模は約3.5兆円に達しています。2024年2月の同社株主への手紙では、日本の商社の自社株買いを評価する旨が見られました。これを踏まえ、高配当利回り、低PBR、低PER、やや低ボラティリティー、高時価総額、S&P500構成企業並みのROE、過去1年間に自社株買い実施という条件を多く満たす日本株のスクリーニングを行いました。

銘柄コード 企業名 株価終値
(10月1日)
時価総額 PBR
(実績)
PER
(今期予想)
配当利回り
(今期予想)
1株当たり配当
(今期予想)
ROE
(今期予想)
自社株買い
(過去1年)
ボラティリティー
(過去1年)
(円) (10億円) (倍) (倍) (%) (円) (%) (10億円)
1605 INPEX 1,971.5 2,482.4 0.5 6.9 4.4 86 7.1 130 37.9
1808 長谷工コーポレーション 1,871.5 562.9 1.0 10.3 4.5 85 9.7 0 21.9
1812 鹿島建設 2,727.0 1,441.6 1.1 13.1 3.3 90 8.3 30 36.3
1878 大東建託 17,440 1,201.9 2.8 14.5 3.3 575 19.1 50 19.8
1925 大和ハウス工業 4,511 2,974.9 1.2 11.0 3.2 145 10.4 180 26.1
2503 キリンホールディングス 2,180.0 1,992.5 1.4 15.6 3.3 71 8.8 0 17.2
2768 双日 3,416 768.6 0.8 7.1 4.4 150 10.8 41 34.6
3231 野村不動産ホールディングス 3,881 711.8 1.0 10.0 4.3 165 9.5 7 35.9
3288 オープンハウスグループ 5,472 660.1 1.4 7.1 3.0 166 19.7 20 32.4
3861 王子ホールディングス 573.0 581.2 0.5 7.8 4.2 24 6.5 7 25.4
4182 三菱瓦斯化学 2,796.0 607.4 0.8 12.3 3.2 90 6.8 10 36.1
4204 積水化学工業 2,248.5 999.5 1.2 12.5 3.3 75 9.4 18 25.0
4528 小野薬品工業 1,932.0 963.5 1.1 12.1 4.1 80 9.3 0 23.0
5019 出光興産 1,027.0 1,430.2 0.7 10.1 3.1 32 7.1 105 37.7
5021 コスモエネルギーホールディングス 7,954 702.8 1.1 9.3 3.8 300 12.1 23 36.7
5333 日本碍子 1,897.0 591.8 0.8 10.6 3.2 60 7.4 25 29.2
5831 しずおかフィナンシャルグループ 1,246.5 723.1 0.6 11.1 3.9 48 5.1 7 34.0
6113 アマダ 1,501.0 512.0 0.9 13.0 4.1 62 7.1 20 39.2
6178 日本郵政 1,383.5 4,435.8 0.4 14.1 3.6 50 3.0 350 34.2
6301 小松製作所 4,051 3,944.9 1.2 10.2 4.1 167 11.6 100 35.2
6417 SANKYO 2,125.5 552.6 1.9 10.3 3.8 80 17.9 70 35.4
7186 コンコルディア・フィナンシャルグループ 797.1 930.7 0.7 11.6 3.3 26 6.3 7 37.8
7201 日産自動車 409.7 1,601.7 0.2 6.2 6.1 25 3.7 259 40.0
7202 いすゞ自動車 1,972.5 1,481.1 1.0 9.1 4.7 92 10.8 125 33.5
7203 トヨタ自動車 2,596.0 41,003.8 1.0 9.4 2.9 75 10.1 1300 38.1
7259 アイシン 1,604.0 1,297.7 0.6 9.1 3.7 60 6.6 100 36.9
7267 本田技研工業 1,542.0 8,141.8 0.5 7.5 4.4 68 7.2 350 37.8
7270 SUBARU 2,519.5 1,899.5 0.7 5.6 3.8 96 12.5 60 41.4
7272 ヤマハ発動機 1,312.0 1,346.6 1.1 7.5 3.8 50 14.1 20 37.1
8002 丸紅 2,380.0 3,989.8 1.1 8.0 3.8 90 13.1 70 37.4
8053 住友商事 3,318 4,018.4 0.9 7.6 3.9 130 11.4 50 34.6
8058 三菱商事 3,027 12,649.9 1.3 12.7 3.3 100 9.9 500 35.0
8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 1,479.5 18,253.6 0.9 11.3 3.4 50 7.6 500 37.7
8309 三井住友トラストグループ 3,442 2,482.9 0.8 10.3 4.2 145 7.7 20 35.8
8316 三井住友フィナンシャルグループ 3,101 12,170.0 0.8 10.9 3.5 110 7.4 250 35.9
8331 千葉銀行 1,170.0 954.2 0.7 13.3 3.1 36 5.4 10 43.6
8601 大和証券グループ本社 1,037.0 1,627.4 0.9 12.4 4.2 44 7.6 35 43.9
8630 SOMPOホールディングス 3,210 3,179.4 1.0 12.0 3.5 112 8.6 77 38.5
8725 MS&ADインシュアランスグループホールディングス 3,389 5,450.9 1.1 8.6 4.3 145 13.4 200 42.6
8750 第一生命ホールディングス 3,729 3,552.8 0.9 10.4 3.3 122 8.5 100 36.7
8766 東京海上ホールディングス 5,379 10,639.7 2.0 11.9 3.0 159 16.9 170 44.4
8795 T&Dホールディングス 2,548.5 1,386.4 0.9 12.8 3.1 80 7.2 50 41.1
9042 阪急阪神ホールディングス 4,369 1,111.0 1.0 15.2 1.4 60 6.8 7 22.4
9101 日本郵船 5,314 2,449.8 0.8 5.9 4.9 260 14.2 100 39.8
9107 川崎汽船 2,228.5 1,504.6 0.9 6.2 3.8 85 14.7 100 55.3
9147 NIPPON EXPRESSホールディングス 7,596 660.9 0.8 15.6 3.9 300 5.0 10 23.0
9201 日本航空 2,504.5 1,094.8 1.2 10.6 3.2 80 11.3 2 21.8
9432 日本電信電話 147.4 13,347.1 1.2 11.8 3.5 5.2 10.5 200 17.9
9433 KDDI 4,679 10,255.6 1.8 14.6 3.1 145 12.3 300 18.8

(注1)対象は時価総額5,000億円以上のTOPIX500構成企業。(1)時価総額9兆円以上、(2)実績PBR1.9倍以下、(3)予想PER16.6倍以下、(4)予想配当利回り3.0%以上、(5)予想ROE14.5%以上、(6)過去1年で自社株買い取得発表、(7)ボラティリティー(過去1年)23.7%以下という7条件中4つ以上を満たす企業。予想PER、予想ROEはQUICKコンセンサス(東洋経済予想で補完)、予想配当利回りは日経予想。そのほかは実績ベース。2024年10月1日時点。
(注2)アイシンは2024年9月30日を基準日として1:3の株式分割を実施した。予想1株当たり年間配当金は株式分割調整後の数値。
(注3)三井住友フィナンシャルグループは2024年9月30日を基準日として1:3の株式分割を実施した。予想1株当たり年間配当金は株式分割調整後の数値。
(出所)QUICK、東洋経済新報社、日本経済新聞社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

日本のバフェット企業を目指す企業も

光通信(9435)はバークシャー・ハザウェイ株を1,000億円以上保有しており、上場株投資上位10社や上場持分法対象32社の状況をIR(広報)資料に詳細に掲載し、さながら日本のバフェット氏を志向しているようです。その他、投資先の株価動向に左右されやすい企業としてソフトバンクグループ(9984)、京都フィナンシャルグループ(5844)、豊田自動織機(6201)、コーエーテクモホールディングス(3635)などが挙げられます。

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株メモ – バフェット氏流日本株スクリーニングを考える(2024年10月2日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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