2025.01.15 NEW
2025年の政治リスク:トランプ次期政権発足や国内参院選に注意
※画像はイメージ
2024年の総括
2024年を振り返ると、多くの国で選挙が行われ、与党や現職政権が敗北し、退陣する事態が見られました。また、独裁政権の崩壊も発生しました。各国共通の現象として、新型コロナウイルス感染症の流行後、インフレが発生し、中低所得者層を中心に現政権の経済運営に対する不満が高まりました。インフレ抑制には財政緊縮や利上げが有効であり、自由貿易の下での安い輸入品や外国人労働者の導入が物価や人件費を抑制すると考えられます。しかし、新政権は、財政拡張や関税引き上げ、外国人労働者の排除など、インフレ鎮静化とは逆の主張が目立ちます。こうした政策ではインフレ鎮静化が遅れ、有権者の支持を失うリスクがあります。
2025年通年・時期不定の政治リスク
米国のトランプ次期政権は、イスラエルを全面的に支援すると見られ、湾岸諸国との関係樹立を通じてイランの孤立を促し、イランの原油輸出を禁じる金融制裁を続けるでしょう。イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとの戦いが続く限り、サウジアラビアなどイスラム教国がイスラエルと国交を結ぶ可能性は低く、イランは代理勢力に戦いを続けるよう促すと考えられます。シリア情勢の混乱も相まって、中東情勢の安定は難しいでしょう。
トランプ次期大統領はウクライナ紛争の停戦を目指していますが、ロシアの要求に沿った内容であるため、実現は困難と見られます。ウクライナが停戦案を受け入れない場合、トランプ次期大統領はウクライナ支援を消極化させると考えられます。一方、国境を接するEU(欧州連合)は、ロシアがウクライナ紛争で優勢になれば、軍事的脅威に直面するため、経済制裁を強化するでしょう。米中関係の懸案として台湾問題がありますが、中国による台湾への軍事侵攻の可能性は目先では低いでしょう。一方、トランプ氏の中国に対する通商政策や経済安全保障政策は関税に特化しており、この面での対立は続くでしょう。
2025年前半の政治リスク
2025年1月にトランプ次期政権が発足します。経済政策のうち、減税は所得税減税の延長にとどまるものの、対中関税の引き上げや外国人労働者規制、バイデン政権の環境政策撤回が早期に実現するでしょう。ドイツでは25年2月23日に前倒し総選挙が行われ、政権交代が見込まれます。財政規律の回復と環境政策の見直しが行われるでしょう。フランスではバルニエ内閣が総辞職し、25年は暫定予算となりました。下院での混乱が続き、財政再建は進まないと予想されます。韓国では、戒厳令宣布を行った尹錫悦大統領に対する弾劾訴追案が可決されました。憲法裁判所の判断を経て弾劾が成立した場合、25年5月頃に大統領選挙が行われると見込まれます。野党有利ですが、共に民主党代表の李在明氏は訴訟を抱えており、出馬可能かが注目されます。
2025年後半の政治リスク
通常国会会期末の25年6月までは、第2次石破茂政権が続くと見られます。25年7月の参議院選挙は与党過半数維持が目標となると見込まれますが、過半数割れとなった場合、石破首相が退陣し、国会運営が混乱するかもしれません。混乱回避のため、次期自民党総裁は一部野党との連立を目指すでしょう。野党の政策受け入れにより、次期政権は財政拡張的になる可能性があります。一方、参議院で与党が過半数を維持した場合には、与党は解散総選挙を仕掛け、過半数を奪還することを目指すでしょう。豪州では25年9月までに総選挙が行われ、保守党に政権交代する場合、対中関係が悪化する可能性があります。カナダでも25年10月までに総選挙が行われ、政権交代の可能性があり、トランプ次期政権の関税発動やUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の見直しが大きな争点になるでしょう。
(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)
編集元アナリストレポート
政治レポート – 市場における政治リスク:2025年第1四半期~2025年第4四半期(2024年12月13日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。
(出所)野村證券経済調査部などより野村證券投資情報部作成
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