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「ゆっくり、いそげ」―元マッキンゼー、現カフェ店主が語るユニークな経済論の書

「ゆっくり、いそげ」―元マッキンゼー、現カフェ店主が語るユニークな経済論の書のイメージ

「ギブ」からはじめれば、結果は後からついてくる――。それをエリート街道から外れて、小さなカフェで実践している人物が書き上げたユニークな一冊。

「ゆっくり、いそげ」と名付けられた本書の著者は、東京大学法学部を卒業した後、世界有数の外資系戦略コンサルティングファームに勤務。ベンチャーキャピタルの共同創業を経て、東京・西国分寺の小さなカフェ「クルミドコーヒー」の店主となった、異色の経歴の持ち主だ。
そのキャリアパスから、「ファスト&グローバル」を“よし”とする価値観へのアンチテーゼとして、「スロー&ローカル」な価値観への転向を勧めるような内容なのだろうか? などと考えて本書を手にとると、書かれている内容は“いい意味”で想像を裏切ってくれる。

「不特定多数」でも「特定少数」でもなく、「特定多数」が大事

規模の拡大や効率性の追求を求める資本主義の力学を、著者は決して否定しない。それこそが今日の社会における数多の技術革新や、利便性の向上を生み出してきたことは紛れもない事実だからだ。
しかし、「不特定多数」の参加者間での価値交換がおこなわれるグローバル経済では、“普遍的な価値”ばかりが追求され、“複雑な価値(値段に表れない価値、と言い換えてもいいかもしれない)”が見過ごされがちになっていることも、また事実。そうした価値をビジネスとしての持続性・成長性をもたせながら作り出し、交換し合うことで、これまでとはひと味違う“いい経済循環”が生み出せるのではないか──。それが本書の出発点である。

そこで、まず提示されるのが「特定多数」という考え方だ。
「クルミドコーヒー」のコーヒー一杯の値段は650円で、近隣のチェーン店と比べておよそ3倍の値段だ。その背景には、仕入先の産地への思いや店主(すなわち著者)のこだわりが存在しているのだが、多くの人にとってその価値は“複雑”すぎて、「対価に見合うものではない」と判断されてしまう可能性は否定できない。かといって、ごく少数の人たちだけしか相手にしないのであれば、事業として継続していくことが困難になる。ならば、どうすればいいのか。そう、価値を分かち合える「顔の見える人たち」との関係を一定数以上に拡大し、「特定多数」のコミュニティを育んでいくことが肝要になってくるのだ。

「ギブ」から始めることで生まれる、「健全な負債感」の連鎖が成長を生む

その鍵を握るのが、「ギブ」から始めるということ。自分あるいは自社の利益を手に入れること──「テイク」すること──を動機とするのではなく、受け取る側の満足・喜びを目的として、時間と手間をかけた丁寧な仕事・商品・サービスを提供することを、まずやってみる。すると、その“贈り物”は、受け取る者に「目に見える以上の価値を受け取っている」という正の感情とともに、「お返ししなくては」という返済の念を呼び起こす。そして、そうした「健全な負債感」は、より高い頻度でのお店への来訪や、より多い量の商品購入、周囲の人間への好意的な口コミの伝播といった「返礼」となって戻ってくる。また、そのサイクルの中では「特定多数」との関係が育まれ、結果として金銭的なリターンだってついてくる。それが「ギブ」から始めることの価値だと、筆者は説く。

素材の質や手間ひまを考えると明らかに安すぎる特別メニューを提供したり、プロの演奏を至近距離で満喫できるクラシックコンサートをわずか1,500円で開催したり…。「クルミドコーヒー」を通じて、「特定多数」に「ギブ」することを数多く実践し続けてきた筆者だからこその強い確信が、言葉の端々に宿っている。

本書に書かれた内容を、自身の仕事や生き方にいきなり適用するのは、おそらく難しい。しかし、ステークホルダーとしっかり向かい合い、目の前の仕事の一つひとつを今まで以上に丁寧に、誠意を持って進めていくように心がけることは、明日からだって実践できるはずだ。そして、その積み重ねは、あなたの“理想”を“現実”に近づけてくれるかもしれない。ゆっくりと、けれど、着実に。

ゆっくり、いそげ―カフェからはじめる人を手段化しない経済のイメージ

■書籍情報

書籍名:ゆっくり、いそげ―カフェからはじめる人を手段化しない経済

著者 :影山 知明(かげやま ともあき)
1973年西国分寺生まれ。東京大学法学部卒業後、マッキンゼー&カンパニーを経て、ベンチャーキャピタルの創業に参画。その後、株式会社フェスティナレンテとして独立。2008年、西国分寺の生家の地に多世代型シェアハウスのマージュ西国分寺を建設、その1階に「クルミドコーヒー」をオープンさせた。同店は、2013年に「食べログ」(カフェ部門)で全国1位となる。ミュージックセキュリティーズ株式会社取締役なども務める。

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

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