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2018.06.04 NEW

ヘンテコノミクス――話題の行動経済学をマンガで学ぼう

ヘンテコノミクス――話題の行動経済学をマンガで学ぼうのイメージ

セイラー教授が昨年、ノーベル経済学賞を受賞し大いに注目を浴びている行動経済学。本書はそのエッセンスを楽しみながら学ぶことができる一冊だ。

2017年、行動経済学研究の先駆者の一人であるリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞するなど、近年は新聞やネットニュースで「行動経済学」という言葉を目にする機会が増えた。だが、「行動経済学とは一体何ぞや」と聞かれると…。途端に自信がなくなる人も少なくないのではないだろうか。そんな人たちにうってつけなのが、『ヘンテコノミクス』なる一冊。さっそく内容の紹介といきたいところだが、その前に行動経済学について、ごく簡単に説明しておきたい。

人間は時として「非合理的」で「不利益」な行動をとるもの

行動経済学とは、「人間の経済行動を“心理”という視点から解明しようとする経済学の一分野」のこと。伝統的な経済学との決定的な違いは「人間」の捉え方にある。伝統的な経済学において前提とされているのが「経済人(ホモ・エコノミクス)」という概念で、それは「自己の利益の最大化のために常に合理的な意思決定を行う」という人間像である。それに対して、行動経済学が提示する人間像は、より“現実的”なもの。「人間は時として非合理的な判断を行い、不利益となる行動(つまりはヘンテコな行動)をとることもある」ということを実証的、経験主義的なアプローチにより解き明かし、伝統的な経済学では説明できなかった人間のさまざまな経済行動の“謎”にせまっていくのが行動経済学である。

行動経済学の重要テーマ23個をマンガにして紹介

そうした行動経済学をマンガによって学べるのが、本書『ヘンテコノミクス』だ。内容はと言うと、「アンダーマイニング効果」「おとり効果」「極端回避性」「同調行動」など23個の行動経済学の重要テーマを、それぞれ4ページのマンガ(250字前後の解説付き)で紐解いていく構成。それぞれのテーマに即して設定された“日常生活のシチュエーション”の中で、いきいきと会話・行動を繰り広げるキャラクターたちを通し、そのテーマについての理解を楽しみながら深めていくことができる。
たとえば「アンダーマイニング効果」。これは、

  1. もともと「好きだから」とか「人の役に立って嬉しいから」といった「内発的動機」から行っていた行動に対して、
  2. 金銭などの「報酬」(外発的動機)が与えられることにより、
  3. それ以降はその「報酬」がなければ行動しなくなってしまう、あるいは本来のやる気(内発的動機)が削がれてしまうという現象のこと。

つまり、行動する目的がいつの間にか「好きだから」から「報酬」に変わってしまうわけだ。本書では、これを「近所の悪ガキたちの落書きに苦しむお爺さんの悩みとその解決方法」に置き換えながら、ユーモラスに解説している(どうやって、悪ガキたちの落書きをやめさせたかについては、本書で確認いただきたい)。

魅力的な制作陣が手掛ける「表現的な仕掛け」も見どころ

一つのテーマについて、「前提条件の有り無し」でどう変わるかを、「同じ画」を使った「異なる解釈」で読ませるなどの「表現的な仕掛け」も本書の見どころの1つだが、制作陣に目を向けてみれば、そうした完成度の高さにも納得がいく。
電通のCMプランナーから慶應義塾大学教授を経て、現在では東京藝術大学大学院映像研究科の教授を務める佐藤雅彦。多摩美術大学で専任講師を務め、昨年に刊行した単著『観察の練習』も話題となった菅俊一。この2名を原作者として、数々の名だたる広告キャンペーンを手がけるアートディレクター・クリエイティブディレクターの高橋秀明が作画を担当しているのだ。
表現領域のトップランナーたちが集い、行動経済学の要点や魅力を買い物やデート、部活、食事といった日常生活に落とし込みながら、面白く、そしてわかりやすく仕上げている。

経済行動学は「リアルな仕事の現場」にも応用できる

これを読んでいるビジネスパーソンの中には、「○○学」という言葉を目にしただけで、「理論的なことを学んだところで、現実の仕事には生かせない」と敬遠する人もいるかもしれない。だが、そうした思い込みこそまさに「非合理的で誤った判断」だ。枠組みを変えることで同じモノ・コトに対する価値の感じ方が変わる「フレーミング効果」、ゴールに近づいているという意識が同じ行動へのモチベーションを向上させていく「目標勾配仮説」など、行動経済学が提示する概念には、マーケティングやチームマネージメントの現場ですぐにでも活用できるものが多いからだ。
極めて実践的な、生きた学問である行動経済学。そのエッセンスを楽しみながら吸収することができる本書は、明日からの仕事に“少なからぬ変化”をもたらしてくれるだろう。

行動経済学まんが ヘンテコノミクスのイメージ

■書籍情報

書籍名:行動経済学まんが ヘンテコノミクス

原作 :佐藤 雅彦(さとう まさひこ)
1954年、静岡県生まれ。東京大学教育学部卒。慶應義塾大学教授を経て、現在、東京藝術大学大学院映像研究科教授。ゲームソフト『I.Q』(ソニー・コンピュータエンタテインメント)や、慶應義塾大学佐藤雅彦研究室の時代から手がけている、NHK教育テレビ『ピタゴラスイッチ』、『考えるカラス』など、分野を越えた独自の活動を続けている。平成23年芸術選奨受賞、平成25年紫綬褒章受章

原作 :菅 俊一(すげ しゅんいち)
1980年、東京都生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科修了。多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、社会に提案することを活動の主としている

作画 :高橋 秀明(たかはし しゅうめい)
1964年、石川県生まれ。アートディレクター・クリエイティブディレクター。金沢美術工芸大学商業デザイン学科卒業後、電通に入社。数々の広告キャンペーンを担当。ACC賞、朝日広告賞、毎日広告デザイン賞、日経広告賞、NYADC賞、スパイクスアジアなどを受賞

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

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