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2019.01.07 NEW読み方の角度

電気のないアフリカの村に「電子マネー経済圏」を作った日本人から学ぶ、世界の変え方

電気のないアフリカの村に「電子マネー経済圏」を作った日本人から学ぶ、世界の変え方のイメージ

資本主義やお金の起源を探りながら、新しい時代に相応しい社会システムを構想し、実現せんと国境を超え奔走する日本人起業家がいる。

2018年6月に発売された『20億人の未来銀行』(日経BP社)は、銀行口座を持たない世界の20億人のために、FinTechを活用して「新しい仕組みの銀行」をつくるべく奔走する著者の活動をまとめた奮闘記だ。

その行動の軌跡と言葉は、困難で不確かな時代を生きる私たちに大きな示唆と勇気を与えてくれることだろう。

テクノロジーで「黒魔術」を乗り越える

著者である合田真氏は、「世界で最も貧しい国の一つ」であるモザンビークを主たるビジネスの場とする、日本植物燃料株式会社の創業者である。

その社名の通り、もともとは植物燃料の製造・販売を行う日本の企業として始まった同社だが、紆余曲折を経て、現在は日本から遠く離れたアフリカ大陸の電力のない農村で「新しい仕組みの銀行」づくりに奔走している。

ほとんどの人が自給自足で生活するモザンビークには、これまで銀行というものが存在せず、農作物を売って手に入れたわずかな現金収入も、自宅の地面に埋めるなどして保管しているという状況だった。

しかし、著者の構想した「新しい仕組みの銀行」の登場により、そんなモザンビークの人々にも貯蓄や融資といったベネフィットの享受が可能になったのである。

「新しい仕組みの銀行」の重要なポイントは、大きく2つ。

1つめは、電子マネーというテクノロジーを用いているという点である。

モザンビークの人々は、日本人と比べて計算能力が圧倒的に低い。3桁の足し算・引き算がやっとであることがほとんどだ。それゆえ、お金の管理も自然とずさんになる。店舗売り上げの3割近くが行方不明になることなどもざらだ。これでは貯蓄など出来るはずもない。

また驚いたことに、現地の人々は、こうした出来事を「黒魔術や妖精の仕業」であると理解し、自然に受け入れてしまっているのだ。

しかし、こうした問題は電子マネーを導入することによって大幅に改善した。テクノロジーの活用が、これまでモザンビークでは不可能とされていた「貯蓄」を可能にしたのである。

2つめは、金利ではなく手数料を収益の源泉としている点。さらには、その収益の分配対象には預金者個人のみならずコミュニティが設定されているという点である。

そこで提唱されるのが「収益分配型モバイルバンク」という構想だ。詳しく説明しよう。

「収益分配型モバイルバンク」とは何か

一般的な銀行は、融資を受ける人から受け取る金利と、預金者に対して支払う金利の差額から利益を得ることで成り立っている。

一方で、著者の提唱する「収益分配型モバイルバンク」は、収入源を「金利」ではなく、電子マネーの「決済手数料」とすることによって成り立っている。預金者に金利を約束しない代わりに、決済手数料で得た収益の20%を還元するのだ。

その分配先・比率は預金者個人に1%、その個人が所属する村に19%と設定されており、村に入ったお金はインフラや事業の設備投資にあてられる。

そうすることで、コミュニティに属する全員の生活水準が向上し、所属する人間同士の絆も深まっていくことになる。

こうして活性化したコミュニティの手がける事業の収益が拡大していけば、結果的に「新しい仕組みの銀行」も潤うという仕組みだ。

著者が目指すのは、上記2つのポイントによって形成される「新しい仕組みの銀行」によって、モザンビークに限らず、現在世界に20億人いると言われている銀行口座を持たない金融難民をあまねく救済することだ。

グローバル社会の中で、「外部」の脅威に脅かされない自立性を持ったコミュニティを世界各地に育んでいく。実に壮大な話であり、いまだ道は半ば。だが、その実現に向けて歩んでいる日本人がいるということは、同時代を生きる私たちを大いに鼓舞してくれる。

「VUCA時代」に必要なこと

なぜ合田氏は、このような一見不可能とも思える壮大なチャレンジに挑むことができるのだろうか。本書からは、そのヒントとなる2つのポイントを読み解くことができる。1つめは、「自分自身のライフミッションを認識することの大切さ」だ。

詳しくは本書を読んで欲しいが、著者の活動は、著者が学生時代に訪れたアンデスの地での少女との出会いをきっかけに形作られた「世の中から不条理をなくす」という確固たる意志に支えられている。

このようにライフミッションが明確であるからこそ、著者は日本から遠く離れたモザンビークの地で遭遇する幾多もの困難を乗り越え、心を折らずに事業を継続していくことができているのである。

現代は「VUCA―Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)―」の時代といわれて久しい。

しかし、そんな中でも、自己の立脚点や目指すべき方向性、「何を優先するべきか」という価値観が明確になっていれば、筆者のように迷いを最小化し、思考の精度や判断の合理性を高め、大胆に行動していくことができるに違いない。

積み上げられてきた巨大な前提を疑え!

2つめとして挙げておきたいのは、「自身が挑もうとする領域について徹底的に知ろうとする姿勢の大切さ」である。

著者は「新しい仕組みの銀行」を考案し、実践するにあたり、金融システムの起源や変容について、歴史を遡りながら真摯に学び、徹底的に考察を行なっている。

そして、その理由について著者は「複雑に巨大に積み上がったものを前提に考えていたのでは、仮に本当に必要なものが別にあったとしても、容易にはここから動くことができないというところがあるのではないでしょうか」と前置いたうえで、次のように述べている。

「だから私には、積み上がる前の大元までたどることで、絶対に外してはならない本質を知る必要がありました。そうやって、世界の金融業界で常識とされているものから自由になって初めて、私たちが本当に必要としているのは何かと考え、ゼロベースで新しい物事を作っていく可能性が開けると信じています」(p.24)

まずは「徹底的に調べること」「前提とされていることを疑うこと」「考え抜くこと」からスタートする。この姿勢は、ビジネスパーソンの日常的な活動においても、見習う価値があるのではないだろうか。

ちなみに、筆者の学びの成果は本書の第1章にまとめられており、そこで紹介される宗教・宗派による金利に対する考え方の違いや、為替技術と植民地支配との関連性といった数々の逸話は、“お金の本質”についてあらためて考え、気付くためのきっかけを与えてくれるだろう。

ここまで紹介した事柄以外にも、フロンティアスピリッツやゼロイチ思考、マーケットを自ら創り出す姿勢など、現在進行形で困難かつ壮大な挑戦を続ける著者の行動の軌跡や言葉の端々からは、多くのことを学び取ることができる。

そうした学びの数々は、いまという複雑で不確かな時代を生きる私たちに大きな示唆と勇気を与え、明日からの行動や考え方に変化をもたらしてくれるはずだ。

20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作るのイメージ

■書籍情報

書籍名:20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る

著者 :合田 真(ごうだ まこと)
日本植物燃料株式会社代表取締役社長。1975年長崎生まれ。京都大学法学部中退。2000年に日本植物燃料株式会社を設立。アジアを主なフィールドに、植物燃料を製造・販売する事業を展開する。その後アフリカのモザンビークに拠点を拡大し、2012年に現地法人ADMを設立。同国の無電化村で、地産地消型の再生可能エネルギーおよび食糧生産を支援するとともに、農村で使えるFinTechやAgriTech事業にも取り組んでいる。

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

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