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2019.11.11 NEW

「自分で考える力」を鍛える、ハーバード・スタンフォード流トレーニング

「自分で考える力」を鍛える、ハーバード・スタンフォード流トレーニングのイメージ

ますます思考のオリジナリティが求められる時代になっている。さまざまな技術の発達や、思考法のコモディティ化により、パターン化された思考や発想の価値が下がりつつあるためだ。改めて「自分で考える力」が問われているといえるだろう。

これからの時代、ビジネスや日常生活において意見を求められた際に、どこかで見聞きしたことのあるような“テンプレート通り”の返答しかできない人材の市場価値は大きく下がっていくだろう。

少しでも不安を感じた方に一読をおすすめしたいのが、本書『ハーバード・スタンフォード流「自分で考える力」が身につく へんな問題』(SBクリエイティブ)だ。

「考える力」の本質は「論理+想像力」にある

本書の著者である狩野みき氏は、長年に渡り大学などの教育機関で教鞭を取り、「どうすれば学生たちが自分なりの答えを出すことができるか?」という課題と格闘してきた人物。そんな著者が教育の現場で効果を実感した「考える力」を身につけるためのトレーニングをまとめたのが本書である。

ベースとなっているのは、ハーバード大学の教育プロジェクトやスタンフォード大学のクリエイティビティを伸ばすための授業といった、一流大学の教育メソッドだ。

書籍のタイトルにもなっている「自分で考える力」。著者はその本質を「論理で理路整然と考え、想像力を駆使して考えを深め、自分なりの答えを出す」ことであると定義したうえで、そのためには「《論理+想像力》の思考法」が不可欠であると説く。

まさに、新しい時代に求められるスキルといえそうだが、一体どうすればその力を養うことができるのか?

まずは、前提となる「論理」の部分を鍛えるべく、本書で紹介されているトレーニングの一端を紹介してみよう。

序章において、著者は次のような設問を提示する(P18)。

月曜ならばA駅の売店に「本日ポイント2倍」という札が立つ、ということがわかっています。

問題 さて、正しいのは、次のうちどっち?

(1)A駅の売店に「本日ポイント2倍」の札が立っていないなら、今日は月曜ではない。
(2)A駅の売店に「本日ポイント2倍」の札が立っているなら、今日は月曜だ。

ヒント 言われている内容以外は考えないこと

いかがだろう。正解は(1)だ。

中には「月曜以外の曜日には札は立たないだろう」と考えて、(2)も正しいと思った人もいるかもしれない。しかし、前提の事実としてわかっているのは、あくまで「月曜なら札が立つ」ということだけ。つまり「月曜以外には札が立たない」ということは、一切言及されていないのだ。

それは「他の曜日にも札が立つ」という可能性があることを意味している。よって、(2)は正解とはいえないのである。

「目の前にある情報を、思い込みや勝手な連想なしに、言葉通りに受け止めて考える」こと。それが「論理」の世界であり、「自分で考える力」の基本となるものだと著者はいう。

「想像力」が論理をより強固なものにしてくれる

そして、論理と並んで重要になるのが「想像力」だというのが本書の考えだ。意見や主張に説得力を持たせるためには、論理を裏付ける“根拠”が必要になる。そして、そこで力を発揮するのが想像力だというのだ。たとえば、以下のような主張があったとしよう。

「日本人には、英語を話すのが不得意な人が多い。なぜか。それは、読解重視の英語教育を受けてきたからだ」

著者にいわせれば、この主張には説得力がない。「読解重視の英語教育」と「英語を話すのが不得意な人が多い」ことの間に何かしらの関係があったとしても、前者が必ずしも後者を多く生み出すとはいえないからだ。では、この主張を論理的で説得力のあるものにしていくためにはどうすればいいのだろうか? 著者は次の3つの考え方のプロセスを提示する(P30)。

根拠として他に何が考えられるか
たとえば「日本には『察しの文化』があり、話すことよりも黙って察することが重視されてきたから」
この主張に反論することは可能か、反論できるとしたらどんな根拠が思いつくか
たとえば「英語を話すのが得意な人は増えている」
この主張に、何か隠れた前提はないか
たとえば「読むことと話すことは直結しない」という前提がある

他の根拠を考えたり、反論を検討したり、前提を疑ったりしながら主張を論理的なものにしていこうとする。その際に必要なのは、「こんな考え方もできるのでは?」と想像することだと著者は強調する。つまり、想像力を鍛えることは、論理的な主張を行えるようになるために不可欠なのである。

「答えのない問題」に挑むことで得られるものとは?

本書には、論理と想像力を鍛えるためのさまざまなトレーニング(問題)が用意されている。その中には、タイトルにある通り「へんな問題」もある。たとえばこんな具合だ。

問題 5色の輪ゴムで最大の価値を生み出す方法を考えてください

問題 「寝るのが仕事」と言える職業を思いつくだけ挙げてください

上記の問題は、いずれもスタンフォード大学の授業で実際に取り上げられた問題を著者がアレンジしたもの。

いうまでもないが、上記の問題には「正解」がない。こうした問題と対峙する際に重要なのは、一つの「正解」を求めることではなく、どのようにアプローチしていくかである。

本書はこうした問題に対していかに取り組むべきかというアプローチ例を、先の「論理」と「想像力」を駆使しながら紹介していく。

そうした例題を通じて読者が得るのは、言葉の意味・意義を徹底的に考えていく力や、常識や既成概念に囚われずに解決法を探っていく力など。その積み重ねの果てに、「自分で考える力」が身につけられるのだ。

世の中が多様化するに伴い、前例がなく、正解がわからない問題・課題に遭遇する場面は増えていく。本書の「へんな問題」に真正面から挑み、「自分で考える力」を鍛えておくことには大きな意味があるはずだ。

ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題のイメージ

■書籍情報

書籍名:ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題

著者 :狩野 みき(かの みき)
慶應義塾大学、聖心女子大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。考える力イニシアティブ THINK-AIDを主宰し、子どもの考える・伝える力を伸ばすクラスを行なっている。子どもの考える力教育推進委員会、代表。20年以上にわたって大学等で「考える力」と英語を教える。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了。

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

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