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2017.10.05 NEW

ビジネスリーダーインタビュー Vol.1 「知らないから、できること。漠然とした不安に打ち勝つ方法」Kaizen Platform CEO須藤憲司

ビジネスリーダーインタビュー Vol.1 「知らないから、できること。漠然とした不安に打ち勝つ方法」Kaizen Platform CEO須藤憲司のイメージ

最前線で活躍するビジネスリーダーは、これまでどのような挑戦や失敗を経験してきたのか。ビジネスリーダーへのインタビューから、今、現場の中心となって働く80年代生まれのビジネスパーソンの実態を浮き彫りにし、人生や仕事を楽しむためのヒントを探っていく。

連載1回目は、Kaizen Platform CEO須藤憲司氏にインタビュー。須藤氏は、リクルートマーケティングパートナーズの最年少執行役員にまでのぼりつめながらも33歳で退職し、その後すぐにWebサイトの改善サービスを提供する新会社をサンフランシスコで立ち上げている。慣習も国境も軽々と越えてきた須藤氏の生き方から見えてくる、80年代生まれのリアルとは。

ゼロから新しいことをはじめるなら30代は最後のチャンス

「リクルートマーケティングパートナーズの最年少執行役員」といういわゆる出世コースを捨てて、独立したきっかけは何だったのでしょうか。

一言でいえば、「やりたいと思ったから」です。
もともと人と仕事をするのが好きで、手触りのある、世の中のためになるようなサービスを作っていきたいと思っていたのですが、執行役員ともなると会議などが増え、そういった現場での仕事がほとんどできなくなった。

本当に「降格させてください」とお願いしたこともあったんですよ。でも、取り合ってもらえませんでした(笑)。ユーザーや現場のみんなと一緒に仕事をしたかったので、会社を辞めることにしました。

起業をしたのは、今しかないと思ったからです。
当時からシリコンバレーやニューヨークによく行っていたのですが、あそこでは若い人が世界的な会社を作っている。そんな光景を目の当たりにして、「自分のピークはいつだろう?」と考えた。
自分の基礎体力や、頭の柔軟性などを考慮すると、独立して新しい市場でゼロからはじめるなら、30代の今しかない、と。

アメリカで起業するというのはかなりの決断だと思います。なぜそんな挑戦ができたのだと思いますか?

無知だから、何も知らないから、日常の連続を捨てて、未知の世界へ飛びこめたんだと思います。
でも、いざアメリカで起業となると、口座の作り方すらわからない。人を採用しようにも、その方法がわからない。ありとあらゆることがわからなくて、とにかく大変でした。

面倒なことは嫌いなので、こんなに大変だと知っていたら、絶対起業なんかしなかったと思います。 実は英語もあまり得意じゃないし、腰痛持ちなので長時間飛行機に乗って移動するのも大変なんです。でも、30代半ばまでには世界で戦おうと思っていました。おそらく40代はまた別のフェーズになるだろうと。
だから、独立した34歳という年齢は、自分ではギリギリのタイミングでした。

ちなみに、プライベートでは、ちょうど子どもが生まれることがわかった時期だったんです。でも、会社を辞めたときも、その後起業をしたときも、妻をはじめ家族は誰も反対しませんでした。
僕のやりたいようにやらせてくれる「環境」にも感謝しなきゃいけませんね。

今いるレールの延長線上に、なりたい自分がいるのか

「30代半ばまでには挑戦したかった」ということですが、須藤さんは30代をどんな時期だと捉えているのでしょうか。

20代は勉強して社会に出て、自信をもったり恥をかいたりして揉まれる時期ですよね。
30代は、その延長でいくのか、もしくはもう一度恥をかきにいくのか、つまり新しいことに挑戦するのかによって大きく変わってくる。
30代になると、このレールに乗り続けたら自分が将来どうなるか、その先がなんとなく見えてきます。レールの延長線上に自分のなりたい姿があればそのまま同じ道を邁進すればいいのですが、問題はそうじゃなかったとき。
これまでやってきたことを捨てて、新しいレールに乗れるかどうか、自分を含め80年代のビジネスパーソンは、今が決断のときなんじゃないでしょうか。

とはいえ、失敗を恐れて決断できなかったり、挑戦を避けたりする人は多いと思います。
Kaizen Platform CEO須藤憲司のイメージ

このレールは違うな、と思ったときに大切なのは「はじめる」ということです。何でも動きながら学んでいけばいい。

どんなに勉強しても、慎重に準備をしても、失敗は必ずある。僕は、失敗しないということは、挑戦すらしていないということだと思っています。

自分がやりたいことなら、失敗してたくさん恥をかいたっていいじゃないですか。「成功したい」とばかり思うと、踏み出せなくなってしまいます。
僕も挑戦をたくさんしたので、たくさん恥もかいたし、怒られたし、実は今もそうです。「40歳近くなっても、こんなに怒られるんだな」と思っていますよ(苦笑)。

30代って、もっと大人でイケていると思っていたんです。でも、現実の自分は、毎日が事件ばかりで波乱万丈。ちっとも落ち着いてません。

「余白の時間」に楽しんでお金を使う

30代になって、時間やお金の使い方も変わりましたか。
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30になる直前に結婚して、時間の使い方が変わりました。仕事にかける時間が長いのは相変わらずですが、特に子どもができてからは家族のために使う時間が増えましたね。

お金に関して変わったとすれば、20代です。
株や保険、投資信託など、就職したあたりから一通りはやっています。でも、お金を増やしたいというより、色々と体験してどんなものか知りたいから、という気持ちのほうが強いです。

お金の使い方があまり上手ではないんですよ。そういう自覚があるから、保険として蓄えておこうと。おかしな言い方ですが、無計画でいられるために、最低限備えているんです。
もともと僕は物欲がないんですよ。

お金が嫌いというわけではなく、結構好きなほうだと思いますが、アレコレ選んだりするのが好きじゃない。だから洋服などの買い物が本当に苦痛で、信頼する店員さんの言うままに買っている。女性がお金を楽しそうに使うのを見て、いつもすごいなと感心しています。

物欲のない須藤さんは、どういう視点で、どんなものにお金を使うのでしょうか。

こんな僕でも、お金をかけるものは3つあります。
そのひとつが文房具。特にノートやペンといった筆記用具が大好きなんです。ペンの書き味や紙の手触りで気に入ったものがあると、値段も見ずに買ってしまいます。あとで「こんなに高かったのか」とビックリすることもありますが。

2つめは本。小説でもなんでも読みますね。将来は自分専用の図書館を作って、そこに暮らしたいくらいです。
定期的に読み返すのは、『坂の上の雲』。司馬遼太郎の歴史小説は、『竜馬がゆく』なんかもそうですが、激動の時代に同世代が活躍して日本を動かしているところがいい。「主人公の年齢のとき自分は……」と考えると、身が引き締まる思いです。

3つめが家族との旅行や、友人たちと過ごす時間。実は僕、人見知りでパーティなどは苦手なんです。だから、気を使わない友人や仲間たちと過ごす時間は本当に楽しい。話している内容なんて、ほとんど覚えていないんですけどね。
でも、そういう「なんでもない時間」のために生きていると言っていいほどです。

考えてみれば文房具もそうです。
基本的に仕事はデジタルで処理してしまうけれど、形になる前のモヤモヤした「アイデア未満」のものをお気に入りのノートに書くんです。思考している途中の段階で書いたものだから、あとで読んでも落書きにしか見えないんですけどね。
この時間も、自分なりのなんでもない時間の過ごし方といえます。自分のオフタイム、余白の時間には楽しんでお金を使っているということでしょうね。

最後に、同世代である80年生まれ、現在の20~30代に対して、今どう過ごすべきかアドバイスをお願いします。
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アドバイスは、僕がしてほしいぐらいです(笑)。
僕たち80年代生まれの人間を一括りにすることは難しいですが、あまりにも不確かな時代を生きているせいで、漠然とした不安を抱えている世代なんじゃないでしょうか。とはいえ、何もできないわけじゃない。
みんなが自分なりに、自分らしいやり方を模索している世代。

あえて言うなら、僕は、考えが行動を生むのではなく、行動や経験が人を作っていくものだと思っているので「まず動くこと」じゃないですかね。

ひとつの事柄に対して、必ず「踏み出す」「踏み出さない」というふたつの可能性もあります。そこでどちらを選ぶかで、今後の思考が左右されていく。後悔の内容も変わってくるんです。 だから、お金よりも経験を大事にしたいし、そこで後悔してほしくない。いざというときに「踏み出す」ための備えができるといいですよね。

もちろん、お金には限りがあるので、最低限の優先順位はありますが、経験してよかったと思うことに使いたい。損得ではなく、「おもしろいか」「心が動くか」というところが大切だと思っています。お金はあの世には持っていけないけれど、経験はいつまでも自分やみんなの心に残りますから。

自分の葬式のとき、一緒に仕事をしていた仲間が来て、「あいつは最悪だった」って言われたい。「だけど、あいつとの仕事は、おもしろかったよね」って。これが僕の「将来なりたい姿」です。今をどう過ごすかで、それがかなうか決まってくると思います。

開業時の年齢

調査結果からも、須藤さんが起業した30代は「35.3%」ともっとも高い。新しい挑戦をするにはやはり良いタイミングのようだ。

須藤 憲司(すどう けんじ)
1980年生まれ。早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立ち上げ、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。2013年にKaizen Platform,Inc.を米国で創業。現在はサンフランシスコと東京の2拠点で事業を展開。すでに大手企業250社、40カ国3000アカウントの利用がある。

(制作 NewsPicks Brand Design 編集:大高志帆 構成:相川いずみ 撮影:加藤ゆき デザイン:星野美緒)

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