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2018.10.22 NEW 境界線の越えかた

病床で思い出した自分が好きなこと―シャークジャーナリスト沼口麻子、誕生のきっかけ

病床で思い出した自分が好きなこと―シャークジャーナリスト沼口麻子、誕生のきっかけのイメージ

世界で唯一の肩書き「シャークジャーナリスト」を名乗り、サメに関するあらゆる情報発信を生業とする沼口麻子。前例のない職業に歩み出した理由とは?

まずは、シャークジャーナリストとしての活動内容について、簡単に教えていただけますか。

サメに特化した取材活動と情報発信が基本的な活動になります。メディアへの執筆、サメを取り上げるテレビ番組の監修…。日本中のサメ好きを集めてのオフ会やオンラインサロンを開催したり、子ども向けにサメの解剖教室を開いたりもしています。解剖用や標本づくり用のサメを獲るために、漁船に乗せてもらうこともありますね。

シャークジャーナリストって、自分でサメを捕ったりするんですね(驚)。そこまでサメにのめり込むようになったきっかけは何だったのでしょう?

元々、子供の頃から海の生物に興味があって、大学を選ぶときに、大型生物の研究がしたいと思ったので、水産科のある大学に進みました。大学では海にまつわるさまざまなことを勉強していたんですが、サメはイルカやクジラと比べてまだまだ謎の部分が多かったんです。それで「研究したら、いろいろなことがわかって面白そうだな」と思ったのが、サメにのめり込んだきっかけです。以来、冬休みや春休みには沖縄の与那国島までサメを見に行くようになり、大学4年生のときには小笠原諸島の父島に住み込んで、シロワニなど大型のサメの採取と研究を行いました。結局、そのまま大学院でも研究を続けて、修士課程を修了しています。

それだけの熱意を持っていたのなら、当然、就職先はサメに関係する仕事だったんですか?

いえ、実はサメに関われる就職先を探したのですが、希望に見合うものがなかったんです。日本におけるサメの扱いは「漁業に悪影響を及ぼす害魚」なので、あったとしても駆除関連の仕事ばかり。水族館に就職してもサメの担当になれるかもわからないし、かといってフカヒレ業者だと情熱を傾ける方向が違う(笑)。それだったらサメに関わるのはやめて、定年まで普通にお金を稼ごうと一般企業に就職したんです。サメのことを考えると仕事に集中できないと思ったので、学生時代の論文や文献も全部捨てました。今考えるともったいなかったですね。

会社に8年間勤務したものの、結果的には32歳でシャークジャーナリストとして独立されました。独立に至るまでにはどのような経緯があったのでしょう?

8年目に営業の部署に異動になって、体調を崩してしまったんです。それまでは一貫してシステム関係の技術職。ほとんど会社から出ないような生活を7年も続けてきたのに、いきなりお客様のところへ営業としてまわって、仕事をいただいたり、調整したりすることになって…。当然、うまくはいきませんでした。そうした中で、知らず知らずのうちにストレスが溜まってしまったんでしょうね。ある日、めまいで起き上がれなくなって、半年間休職することになりました。

正直、技術職にも営業職にも適性があるとは思っていなかったのですが、8年も同じ会社にいたことで「このまま、ここに居続けるのがいちばん楽だろうな」と感じてしまっていたんです。
実は、休職中に転職活動をしたんですが、得意分野であるはずの海洋関係の仕事はすべて不採用。32歳で実務経験もないんだから当たり前ですよね。親からは「早く働け」と口うるさく言われるし、社会から置いていかれるという焦りもあった。かといって復職して同じような職種についてもまた体調を崩すのは目に見えていた。いろいろなことを踏まえて考えていったら、もはや独立という選択肢しかなかったというのが正直なところです。

そこでなぜ、「シャークジャーナリスト」に?
沼口 麻子のイメージ

営業職時代に通っていた営業セミナーで、「自分を深掘りして、強みを見つけましょう」という課題をやったことがあって、そのときに出た結論が「強み=サメ」だったんですよ。あくまで営業活動を行ううえでの強みを見つけるための課題だったんですが、講師の方に「これは本業にしてもいいかもしれない」とまで言われました(笑)。いまにして思えば、そこで「自分はサメに詳しくて、サメが好きなんだ」と再認識できたことが、「サメで勝負しよう」と決意するきっかけになった気がします。
そんなこともあって、独立する道を模索している中で「文章で伝えるサメのジャーナリストなら私にもやれるんじゃないか」という思いに行き着きました。学生時代にサメや海にまつわる雑誌連載をいくつか持たせてもらったこともあって、いつか文章を書く仕事をやってみたいとは思っていたんです。

シャークジャーナリスト誕生の瞬間ですね。

そうですね。そしてまずは、「sharkjournalist」という単語を使ってメールとブログ、各種SNSのアカウントを取得しました。シャークジャーナリストという言葉を英語と日本語で検索エンジンに打ち込んでみたら、海外を含めて人物も団体も、何ひとつ引っかからなかったんですよ。アカウントも問題なく取れたので「これは世界唯一の肩書きになるぞ!」と喜びました(笑)。そこからは毎日、ベッドの上でサメの情報を発信していましたね。はじめのうちは自分がどんな論文を書いていたかも思い出せないような状態でしたが、毎日発信することに意味があると思って、記憶を引っ張り出したり、専門の本を読んだりしながら投稿していました。

ゼロからのスタートだったと思いますが、反響はいかがでしたか?

退職前は、シャークジャーナリストとしての活動でお金を稼げるとは考えていなかったので、何か別の仕事もしなければいけないと思っていたのですが、会社の最終出勤日にSNSを通じてテレビ出演、講演会、執筆依頼が2本と、合計4つも仕事の依頼がきていました。奇跡ですよね。

シャークジャーナリストとして、どんな価値を提供されているのですか?

ビジネスには、「誰も気づいていないこと、解決していそうでしていないことをやる」という側面があると思うんです。なので、最初に「サメのニーズって一体何だろう?」ということを真剣に考えて、3つの答えを出しました。

1つはサメに関するちょっとした疑問を解決できる存在になること。6年前はサメに関する疑問を解決するようなサイトがどこにもなかったので、「ホホジロザメって絶滅危惧種なの?」とか「サメの図鑑で一番のおすすめってどれ?」とか、みなさんの素朴な疑問を解決しようと思いました。そのため、世界中、日本中のサメを取材する旅をして、常に新しい情報を得るようにしています。

2つ目は、サメの話で盛り上がれる場所をつくること。SNSの「サメ好きグループ」を開設したらすぐに1000人以上人が集まったので、これはけっこう需要があると思ったんですよね。まわりにいる人とサメの話をしたいけれど、「なにそれ、気持ち悪い」みたいに思われたらどうしようと悩んでいる人のために、月1回サメを語るオフ会を開いたり、1泊2日でサメがいる場所をめぐる「サメ合宿」を開いたり。そんな活動をスタートさせました。

最後は「夏休みの自由研究でサメを扱ってみたいけれど、やり方がわからない」という子どもたちの助けになること。「サメが好き」という子どもはとても多いんですが、サンプルや標本を手に入れる方法がない。それで、自由研究を諦めている子も少なくないようなんです。そういう子どもたちのためにオンラインサロンを作って、要望があればサンプルを貸す、標本を作りたいならサメを1匹提供して解剖から作り方まで教えるということもやり始めました。

今までに誰もやったことがないことばかりですね。はじめてのことばかりで戸惑ったことはありませんでしたか?

「好き」というのが大前提にあるせいか、あまり戸惑った経験がないんです。それまでは、「仕事は『わからない』『できない』から始まるもの」「大変なのは当たり前」と考えていたのに、テレビ出演も講演会もさほど努力せずにさらっとできてしまった(笑)。
戸惑いよりも、とにかくサメのことを24時間考えられるのが楽しくて仕方がなかった感じですね。いまもそうですが、取材することも取材されることも番組収録も、すべてが楽しいです。

まさに「天職」に出会えたということなのかもしれませんね。とはいえ、執筆活動やオンラインサロンをこなしながら、採取用や解剖教室用のサメを確保するために漁船にも乗り込むというのは、なかなかハードでは?
沼口 麻子のイメージ

基本的にはあまりスケジュールを詰めないようにしています。知り合いの漁師さんから「サメが網にかかった」と連絡を受けたら、いつでもどこにでも取りに行ける体勢をとっておきたいんです。
春と秋は静岡の由比漁港で行われている桜エビ漁の網にサメがかかりやすいので、連絡が入った日は漁が終わる22時くらいに漁港に行って、かかったサメを譲っていただきます。漁に同行して自分でサメをとることもありますよ。そのときは2時くらいに起きて4時に乗船、7時に港に帰ってきます。

ちなみに、譲ってもらったサメはどうやって保管しているのですか?

自宅の冷凍庫に保管します。

自宅にサメが入る冷凍庫があるんですか!

個人としては横幅1メートルくらいの冷凍ストッカーを3台所有しています(笑)。巨大なサメが獲れたり、獲れすぎて入りきらないときは、契約している冷凍業者の倉庫を使っています。

最後にシャークジャーナリストとしての今後の展望を聞かせてください。

手段を問わず、サメの魅力と正しい認識を伝えていくのが私の使命だと思っています。サメというと「怖い」「人を襲う」というイメージが強いのですが、人間を積極的に襲うサメはいないし、さっき話したように解明されていないこともたくさんある。本当はとても魅力的な生き物なんです。私が勝手に作った言葉ですが、「シャーキビリティ(サメ、エイ全般に対する知識力や強い情熱という意味を持つ造語)」の向上に少しでも貢献できればいいなと思っています。

沼口 麻子(ぬまぐち あさこ)
1980年生まれ、東京都出身。東海大学海洋学部、同大学院海洋学研究科水産学専攻修士課程を経て2004年にIT企業に就職。2012年11月に退職し、シャークジャーナリストとしての活動を始める。著書に「ほぼ命がけサメ図鑑」。取材当日はサメの歯の化石のネックレス、サメ模様のバングルを身に付けていたのが印象的。

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