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2020春、日本の空に世界初「人工流れ星」を!民間宇宙ベンチャー、岡島礼奈の挑戦

2020春、日本の空に世界初「人工流れ星」を!民間宇宙ベンチャー、岡島礼奈の挑戦のイメージ

人工の流れ星を作り出し、夜空に輝かせる――。そんな壮大かつロマンあふれる事業を手掛けるスタートアップをご存知だろうか。株式会社ALE(エール)の創設者・岡島礼奈は、天文学の博士号を取得してから金融業界を経て現職に至ったという、ユニークなキャリアの持ち主。科学とエンターテインメントの両立を目指す、彼女の心の内にあるものとは?

まずは、人工流れ星の仕組みについて簡単に教えていただけますか?
流れ星というのは、宇宙空間にある数ミリ程度の塵が大気圏に突入し、明るい光を放ちながら燃えることで発生します。そうした塵を再現する1cm大の「粒」を作って人工衛星に搭載し、宇宙空間で放出することで流れ星を再現する、というのが人工流れ星の仕組みです。粒の素材、一度に放出する量、放出する場所を変えることで、流れる色や量、タイミングなどが異なるさまざまなバリエーションの流れ星を楽しめるようになります。
粒や人工衛星の開発・研究には、弊社のメンバーに加えて、東北大学、首都大学東京、神奈川工科大学、日本大学にもご協力をいただいています。
星や天体に興味を持つようになったのはいつ頃ですか?
中学生のころに読んだ、『ホーキング、宇宙を語る』という本がきっかけです。小さいころから自然や生き物が大好きでしたが、この本と出会ってから理論の美しさに惹かれて、自然科学から物理学、天文学へと興味が広がりました。
その後、東京大学理学部天文学科に入学し、同大学院で天文学の博士号も取得されています。そのころはどんなキャリアイメージを抱かれていたのでしょうか?
もともとは天文学関連の科学者になりたかったのですが、かなり早い段階でその気持ちが消えました。もう、まわりの頭がよすぎて……。数学オリンピックでメダルをとったような同級生たちが、黒板に数式を書きながら爆笑しているんですよ。私には何がどう面白いのかまったくわからない(苦笑)。
「私ってすごく頭が悪いな」と思いながらも、「研究は頭の良さとは別物」と聞いて大学院に進んだんですが、そこでも同級生たちの雑談についていけなかったし、いくらがんばっても寝食を忘れて研究に没頭するみたいなところにたどりつけませんでしたね。
博士号を取得された後、まったく異業種の金融機関に入社されています。何か理由があったのでしょうか?
具体的なイメージがあったわけではないのですが、実は大学院時代に家庭教師派遣やプログラミングの受託開発に関するビジネスを立ち上げて、収益化に成功していたんです。それで「研究者の適性はなかったけれど、いつか起業家として科学の発展に貢献したい」という思いを持つようになり、ビジネスの勉強をするつもりで就職しました。
ただ、入社後1年でリーマンショックが起きて所属部署は大幅に縮小。マーケットが冷え込んでいたために退職を決意して、かねてから温めていた人工流れ星の制作とそのビジネス化を本格的に考えるようになりました。
「流れ星を作る」というアイデア自体は、ずっとお持ちだったのですね。
岡島 礼奈のイメージ

人工流れ星を思いついたのは、大学の友だちと2001年の「しし座流星群」を見たのがきっかけですね。あのときはかなり明るいものや2つ同時に流れるものなど、たくさんの流れ星を見ることができ、すごく感動しました。その後、みんなで「流れ星って塵なんだから、宇宙空間で塵を放出すれば理論的に流れ星が作れるんじゃない?」みたいな話をしていて、いつか実現したいと思っていたんです。ただ、学部生時代も院生時代も、何からはじめていいのかすらわからず、手つかずのままになっていました。

退職がアイデアを実現するためのいいきっかけになったのですか?
金融機関を退職した後、日本企業の新興国進出支援を行うコンサルティング会社を立ち上げたんですが、この会社はある程度自分のペースで進められるような就業体制にしていたんです。ざっくり言うと、週5日の勤務のうち1日は空くような体制。もちろん、いつでも丸1日を空けられるわけではありませんでしたが、前職時代よりは時間が自由に使えるようになった分、流れ星ビジネスの立ち上げを模索することができました。
起業に向けては、どのようなことから始められたのですか?

まずは、いろいろな人に相談して、流れ星ビジネスが実現可能かを調べました。人工衛星を作っている会社やJAXA(宇宙航空研究開発機構)に勤めている友人、前職の仲間など、いろんな人を訪ねましたね。まったく面識のない企業の代表アドレスに「こういう事業を考えているんですけれど、いくらくらいでできますか?」なんてメールをしたりもしました。意外にも返信がもらえたのですが、今になればよく相手にしてもらえたなという感じです(笑)。

その後、妊娠をきっかけに「産むまでにやれることはやっておこう」と、2011年にとりあえず法人(ALE)を設立。事業化の目途が立ってきた2015年に事業化に向け外部メンバーをはじめて迎え入れて、資金調達を始めました。

今年1月には「流れ星の粒」を搭載した人工衛星初号機の打ち上げに成功し、2020年春に広島・瀬戸内地域で予定されている世界初の人工流れ星イベントの運用に向けて調整を行っています。

2020年春のイベントは、どのようなイベントにしたいですか?
岡島 礼奈のイメージ

地上からは直径200kmの範囲で見えて、約600万人がこのイベントを楽しむことができるので、音楽ライブよりもはるかに大きな規模のエンターテインメントだと思います。

ありきたりな言葉になってしまいますが、ALEの思いをいっぱい込めて、たくさんの人に楽しんでもらえるイベントにしたいですね。「わー、素敵!」でもいいし、しんみりした気持ちでもいい。みなさんが思い思いに楽しめるような、余白のあるものにできればと思っています。

ALEは世界初の人工流れ星事業で、宇宙を舞台としたエンターテインメントを模索する一方で、「科学とエンターテインメントの両立」を掲げられています。

創業当初から変わらず持ち続けてきたミッションですね。大学院時代、人類が生きる上で「基礎科学」がとても重要だということを学んだのですが、世間的には「何の役に立つのかわからない」と思われているし、研究のための予算確保に苦労する研究者も少なくありません。だからこそ、エンターテインメント事業の過程で得た研究成果で、基礎科学の発展に貢献したいという思いが強いんです。

ただ、最近はそのミッションをちょっとだけ進化させて、「科学を社会につなぎ、宇宙を文化圏にする」と定義づけしました。科学とエンターテインメントを両立させるだけでなく、その次のステップを見据えているということを表現したかったんです。昨年末に策定したのですが、決まるまでに半年ほど議論を重ねました。

一つのフレーズを決めるのに半年。すごい力の入れようですね。
私一人で始めた会社が5人になり、10人になり、またメディアに取り上げられる回数が増えたことで、会社としても評価していただけるようになったのですが、内部は思うように動いていなかったんです。同好会のような形で始まったALEを会社組織にストレッチしていくにはどうすればいいのか。そのことに悩んでいたときに、「ティール組織」に関する本を読んだことをきっかけに、メンバー全員が同じ思想を共有することが大事なんだと思うようになりました。
私も含めて、スタートアップっていろいろなことがブレやすいから、何かあったときに原点に立ち戻れるミッションが必要なんです。
そのためにも、思いを言語化する必要があった。
岡島 礼奈のイメージ

でも、私は言語化がとても苦手(笑)。なので、外部の方にコンセプトデザインの協力をあおいで、「ALEって結局何をやる会社なんだろう」「2030年は何をやってるんだろう」ということをみんなで考えたり、大学時代の同級生たちを会社に呼んで「利益抜きに一番やりたいことは何?」なんてことをヒアリングしたり……。株主や天文学者を相手に「100年後の世界」に対する私の妄想を聞いてもらう場を作ってご意見をいただき、思いを言語化しました。
ミッション制定の少し前に、知り合いを通じてメルカリの小泉文明社長の勉強会に参加させてもらったことも大きかったですね。小泉さんには、ミッションとバリューを会社に浸透させた上で会社の戦略を決めていくことが大切だと教えていただきました。

誰もやったことのないようなプロジェクトのリーダーとして、ほかに何か心掛けていることはありますか?
ミッションやバリューに共感してくれる人を仲間にするということを強く心掛けています。外から見るとALEは順風満帆に見えるようですが、内部はいつでもバタバタ(笑)。まだまだ組織としてはうまくいっていませんし、自分がマネジメントが得意だとも思っていません。ただ、「流れ星」や「宇宙」が多くの人をALEに引き付けてくれているから、なんとかやれているのだろうなと思っています。
2020年の「人工流れ星」初お披露目が終わった後も、ALEの事業は続きます。その先に見据えていることをお聞かせください。
現実的な話でいうと、流れ星の演出や新しい宇宙エンターテインメント事業の中で、さまざまな科学的データをとりたいと思っています。たとえば、人工流れ星を流すことでデータがとりにくいとされている「中間圏」という大気層のデータ採取に貢献できる可能性があるんです。そういう活動の中から、エンターテインメントの提供と科学貢献を同時に行えるようなビジネスモデルを作っていけたらいいですね。
寿命を度外視した話のほうだと、太陽系の外の探索やテラフォーミングなどに対するアプローチなども形にしていきたいですね。いまは妄想の段階ですが、どういうアプローチがあるか、ということはちょこちょこと考えています。
岡島 礼奈(おかじま れな)
1979年鳥取県出身。東京大学理学部天文学科卒業、同大学院理学系研究科天文学専攻にて博士号を取得。金融機関勤務、コンサルティング会社創業などを経て2011年に株式会社ALEを設立。現、代表取締役社長/CEO。

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