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2020.05.28 NEW

僕のキャリアがYouTuberだけになることは絶対ない――虫眼鏡が重ねるキャリア

僕のキャリアがYouTuberだけになることは絶対ない――虫眼鏡が重ねるキャリアのイメージ

「僕のキャリアがYouTuberだけになることは絶対ない」。そう語るのは、チャンネル登録者500万人超の人気6人組動画クリエイターグループ「東海オンエア」の一員である虫眼鏡さん。元小学校教諭というユニークな出自を持ち、現在はラジオや執筆業でも才能を発揮している彼に、新しい時代のキャリア観を聞いた。

※「東海オンエア」:愛知県岡崎市を拠点に活動する6人組動画クリエイターグループ。メンバーはてつや、しばゆー、りょう、としみつ、ゆめまる、虫眼鏡からなる。個性溢れるネタ動画を中心にさまざまなジャンルの動画を投稿し、人気を集めている。2016年には岡崎観光伝道師に任命されるなど活動の幅を広げている。

小学校の教諭から、動画クリエイターに

まずは虫眼鏡さんのバックグラウンドからお聞かせください。幼少期はどんなお子さんでしたか?

あんまりほんわかした家庭じゃなくて、正直、厳しめだったので、“好きなこと”をやらせてもらった記憶がないんです。あえて、好きにやらせてもらったことをあげるなら、勉強と読書。小学校の図書室にある本を片っ端から読んでいたので、図書室の先生に「お前はもう図書カードを書かなくていい」と言われていました。

それから教育大学に進学し、卒業後は小学校の教諭に。少年時代から「教員になりたい」というビジョンを持っていたのでしょうか?
虫眼鏡のイメージ

実は、教員になることに対して強い動機があったわけではないんです。小学校6年生の頃、1年ほど入院した経験があるんですが、そのときは医者に憧れました。まぁ、15秒くらい考えて「いや待て、頭とお金が足りないな」というところに行き着きましたけど(笑)。で、次は、入院中に優しくしてくれた薬剤師さんの影響で、薬剤師が憧れの対象になりました。たぶん、僕が一番初めに「僕の夢はこれです」と言ったのは、薬剤師だったと思います。

そこからなぜ教員の道に?

中学生の頃、両親に「大学のお金は1円も出さない」と言われたんです。それで「だったら、近くにある国立の教育大に進んで教員になろうか」と。当時は、「学校の先生って、子どもと遊んでいるだけで褒められる楽しい職業だな」と思っていたんですよ(笑)。

どれくらいの期間、教員として勤務されたのですか?

1年にも満たないですね。4月から勤め始めて、12月で辞めました。

辞めた理由は何だったんですか?

YouTuberをやっていることが校長に知られたからです。「教員がこういうことをしているのはよくない。教員を辞めるか、YouTuberを辞めるかどっちかにしろ」と言われたので、「じゃあ教員を辞めます」と即答しました。といっても、教員という職業が嫌いだったわけじゃないですよ。

もしそのとき、学校から理解が得られていたら、今も教員を続けていると思います。

「東海オンエア」の一員として動画クリエイターの活動を始められたきっかけは、何だったのでしょう?

たぶん大学2年の終わり頃だったと思います。バイト先の後輩だったてつや君(現リーダー)から「YouTubeでいろんな動画を配信してるんですよ」って話を聞いて、僕が「今度これやってよ」とか「こういうふうに撮ったらおもしろいんじゃない?」みたいなことを言っていたら、「じゃあ、それ2人で撮っちゃおう」ってなって……。

そうこうしているうちに、ふと気づいたら僕もメンバーに加えられていました(笑)。

では、「東海オンエア」としての活動が本格的になったのは社会人になってから?

そうですね。てつや君が実家を出て一人暮らしを始めたんですが、そこが僕の勤務していた小学校の目と鼻の先だったのが運の尽き(笑)。

虫眼鏡のイメージ

18時くらいに学校を出ると、てつや君の家に寄って、動画のネタを考えたり、動画を撮ったりして、そのまま泊まるというのが日常になっていきました。みんなで深夜の2時とか3時にラーメン屋に行ったりすることもあって、そんな日は3時間睡眠で学校に出勤していました。

なかなかハードですね(笑)。

ただ、それをYouTuberとしての活動だとは考えていなくて、仕事の息抜きという感覚でした。あくまで「オフが充実している教員」くらいの認識です。

リーダー以外のメンバーも、動画専業だったのでしょうか?

僕以外の5人はみんな1つ年下なので、当時は大学4年生。「就職するのか? しないで専業のYouTuberになるのか?」って考えていた時期ですね。

でも、その頃には6人がギリギリ食べていけるくらいのお金が入るようになっていたんですよ。それで、動画を更新する頻度を増やしてみたら、1年後くらいには、運良く大きな収入を得られるようになりました。

“やりたくないことはやらなくていい”というスタンス

東海オンエアは、1500m走の直後に牛丼を完食する「1500m牛丼で世界新記録達成!!」、2泊3日の旅行中に少しでも寝たらその場で強制送還される「寝たら“即帰宅”の旅!」など、ユニークな動画コンテンツを配信していますね。コンテンツ制作において、心掛けていることはありますか?
虫眼鏡のイメージ

あえて言うなら、“自分たちが面白いと思うことをただやる”ということですね。だから、「俺たちくらいの年齢の男がふざけるなら、こういうことだよね」ってことを、さも真面目ぶってやっている感じです。

なので、「やりたくないことはやらなくていい」というスタンスだったりもします。つまらないと思う企画は参加しなくてもいいし、ネタ出しも強制ではありません。企画、出演、動画編集を総合した完全歩合制なので、それぞれの裁量で自由にやっています。

制作する動画を決める「ネタ会議」があるとうかがったのですが、そこでの判断基準も「面白さ」になるんでしょうか?

そうですね。でも、たとえば他の5人が「それ、何がおもろいん?」みたいな感じになっても、発案者が「とにかく面白いから!」と強いパワーで押し切れば、そのまま通っちゃいます。

とはいえ、大人数だと大変なことも多そうです。

6人が6人とも全然まとまりがないし、ネタ会議も決して和気あいあいとやっているわけではないですね。でも、最近は「それも僕らの良さなのかな」って考えるようになっています。

それぞれが面白いと思うものを持ち寄ることで動画にバリエーションが生まれるし、ネタによって登場させる人数を調整したりするのも僕たちならでは。たとえば、馬鹿みたいなことを検証する系の動画は、僕やりょう君みたいな常識人は出ないようにしているんです。

東海オンエアの今後の展望や野望についてお聞かせください。

よく聞かれる質問なんですが、いつも「ないです」と答えています。僕らの活動は遊びの延長線上なので。遊び始めるときに「これを目標にがんばりましょう!」とか言う人はいないじゃないですか。

虫眼鏡のイメージ

しいて言うなら……。「俺にはこれがある」っていう武器を一人一人が持てるようになったらいいなということですね。

虫眼鏡さん個人としては、どんな武器を備えようと?

今はラジオ番組をやったり、執筆をしたりでしょうか。あとは、出演する側ではなくコンテンツを作る側に回りたいという思いも、ぼんやりと持っています。どの糸が未来につながっているかはわからないので、今はその糸を増やすというか、いろいろなものに手広く手を出しておきたいという気持ちですね。

“僕のキャリアがYouTuberだけになることは絶対ない”

その「糸」のうちの1つとして、昨年は若年層の金融リテラシー向上を主目的としたYouTubeチャンネル『マネーの亀【MANEKAME】』(野村證券・UUUMの共同運営)にも出演されて、大きな話題を呼びました。どういう経緯で虫眼鏡さんにオファーが舞い込んだんでしょうか?

もともとは事務所の人選だと思います。YouTuberって基本的に金融に関心ない人たちが多いんですけど、僕は24~25歳の頃から投資信託をやっていたので「じゃあお願いします」と。

投資を始めたきっかけは、何だったんですか?

口座のある銀行に、仲のいいおばさんがいたんですが、あるとき唐突に「投資に興味はありますか?」と言われて。

そのときは「投資って、お金を持っている人がそれを転がして遊んでいるだけだろう」というイメージだったんですが、その実態を知るいい機会かな、と思って始めてみることにしました。

「マネーの亀」で、本格的に金融のことを学んだ感想をお聞かせください。

金融というものが何で成り立っているのか、なんでお金があちこち行き来するだけで儲かる人がいるのか……。そのからくりがちょっとだけわかって、大人になった気がします。

たとえば、新聞にすごく小さな字で書かれた「△36」みたいな数字とか、テレビのニュースの下のほうにある秒単位で変わる「○円○銭」という表示とか、以前の僕は「こんなの誰が見てるの?」と思っていました。

でも、マネーの亀で金融を学んだことで、そういうさまざまな数字から、“世の中の営み”みたいなものを考えるようになったと思います。もともと好奇心が強いので、自分が理解できる分野が増えた、ということも単純に嬉しいですね。番組が終わった後も引き続き知識を深めています。

ちなみに、東海オンエアのメンバーに投資をすすめたことはありますか?

1回だけあります。でも、あまり興味を持ってもらえませんでした。やっぱり「難しい」というイメージが先行するんでしょうね。

虫眼鏡のイメージ

僕はメンバーの中では“頭いいキャラ”のポジションなので、メンバーは「虫眼鏡は頭いいからできるんでしょ。俺は知識がないからいいや」というリアクションでした。

そういう人たちが金融や投資に興味を持つために、虫眼鏡さんだったらどんなアイデアを考えますか?

まずは、何でもいいので実際に株を買ってみることでしょうか。それを持ってしまったが最後。世界の金融情報に興味を持たざるを得ませんから。

「東海オンエアが投資を始めてみた」という動画がアップされる日を楽しみにしています(笑)。ところで虫眼鏡さんは、ご自身のライフプランをどのように描かれていますか?

明確なビジョンを持っているわけではありませんが、少なくとも僕のキャリアがYouTuberだけになることは絶対ないと思っています。会社勤めの方は、基本給料が右肩上がりだったりしますが、僕らの場合、今もらっている以上の金額をいただける保証はないじゃないですか。

だから、家のような大きな買い物をするとしても、「手元にどれだけ残しておけばいいんだろう」と考えてしまって、なかなか踏み切れずにいます。

YouTuberは、引退後のロールモデルが存在しないと言えますよね。

僕は動画作りをライフワークとして続けていくと思うんですが、それが活動の主軸になるかは「?」な感じですね。「次にやりたいことも探していこう」という意識で活動に取り組んでいます。

あ! 理想論ではあるんですが、元プロ野球選手の城島健司さんみたいな生き方には憧れます。プロ野球選手として一生分のお金を稼いで、今は大好きな釣りを全力で楽しんでいるじゃないですか。稼ぐだけ稼いで、あとは好きなことを楽しんで、お金を使い切って終わる。そんな人生を送れたら、とは思いますね。

「楽しかった」と感じられる時間をたくさん持つ

虫眼鏡さんは現在27歳。EL BORDE(エル・ボルデ)読者の多くを占める30代のビジネスパーソンにどんな印象を持っていますか?

嘘っぽく聞こえるかもしれませんが、僕らがやれないようなことをやって社会を回してくれているので、本当に感謝しています。そして願わくば、その仕事が楽しいものであってほしいなとも思っています。

仕事に充実感や楽しさが感じられることは大切ですよね。

人生の充実度は大切にしています。僕らは今、もてはやされていますけど、一般企業で働いている方にとって「この仕事、すっげー楽しい!」と思えるなら、人生の充実度は僕らと一緒だと思うんですよ。

虫眼鏡のイメージ

仕事って、人生において一番長い時間を費やすものじゃないですか。だからこそ、それを楽しめているかどうかで、人生の満足度も大きく変わると思うんです。

楽しむコツはどんなところにあるとお考えですか?

うーん……。僕は、幼少期にあまり遊ばせてもらえなかったり、大病をしたりしたので、「大人になってからは『楽しかった』と感じられる時間をたくさん持とう」と思って、ここまでの進路を決めてきました。今の30代ってどんな人たちなんですか?

自分自身を成長させなきゃいけないけれど、部下も育てなきゃいけないし、上司の顔も立てなきゃいけない。結婚や子供のこともそろそろ考えなきゃ……。みたいな年代でしょうか。

その視点でいうと、上の人に「何やってるんだ、お前は」って言われるのが一番楽しくなさそう(笑)。若い僕が言うのも恐縮ですが、楽しむためにはまず人に叩かれても挫けないメンタルを持つのがいいんじゃないかと思います。

僕たちはめちゃくちゃメンタルが強いんですよ。叩かれ方がダイレクトですから。コメント欄で「×分×秒の、これはありえない」っていうところまで叩かれる。

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最初はかなり気にしましたけど、叩かれまくっているうちに、もう何を書かれてもなんとも思わなくなって、「もうどれだけ叩かれても平気」と変な自信がつきました(笑)。

虫眼鏡さんならではのメッセージをありがとうございます! 外部からの圧力を受け流し、自分らしさをなくさないこと。「個」が重んじられる時代において大切なことの1つかもしれません。

叩かれることをうまく避けるような立ち回りをしていると、“自信”というものがなかなか身につかなかったりもしますよね。100回叩かれて、叩かれることに鈍感になれば、仕事における「楽しくないこと」が減るわけですから、まずはその状況になって、仕事の「楽しさ」だけを感じるといいと思います。

虫眼鏡
1992年生まれ、愛知県出身。愛知県岡崎市を拠点に活動する6人組動画クリエイターの東海オンエアのメンバー。
動画内の概要欄をまとめた著書「東海オンエアの動画が6.4倍楽しくなる本」を2018年に出版し、2019年に第2弾となる「続・東海オンエアの動画が6.4倍楽しくなる本」を出版。
ラジオのレギュラー番組ではメインパーソナリティを務め、自身の個人チャンネルである「虫眼鏡の放送部」でもラジオ動画を中心に投稿するなど動画内外問わず幅広く活動している。
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