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2020.10.15 NEW境界線の越えかた

小さな善意を好きな未来に届けるESG投資とは?/世界を知るために投資しよう#2

小さな善意を好きな未来に届けるESG投資とは?/世界を知るために投資しよう#2のイメージ

国連広報センター所長 根本かおる

この連載「〈儲けるため〉ではなく〈世界を知るため〉に投資しよう」では、教養を深め、視野を広げるための投資を提案する。

投資と言えばお金儲け、をイメージする方も多いかもしれないが、「SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)」も投資との結びつきが強い。SDGsでは地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っており、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標として、17のゴール・169のターゲットから構成されている。

SDGs達成に向けて、企業は「ESG」(Environment/環境のE、Social/社会のS、Governance/企業統治のG)を重視した経営活動を行っていく必要があると言われており、ESG投資は主に、欧米を中心に広がり、投資残高も年々拡大傾向にある。

テレビ朝日アナウンサーから国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に転身、現在は国連広報センター所長を務める根本かおるに、世界から見た日本のSDGs、そしてESGのこれからの可能性について話を聞いた。

若者世代を中心に注目を集めているSDGs

根本は現在、国連広報センターで国連からの情報発信、また日本の人材や技術を国連につなげるなど、世界と日本の架け橋的な役割を担う。2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、現在日本でも認知度が上がっていることを実感しているという。

「学校教育でSDGsが取り入れられたことなど、10代、20代の若者への浸透度がおしなべて上がっていますね。地球、社会のこれからは、若い世代にはとりわけ自分の未来として、のしかかってくるので関心を持たざるを得ない。女性ファッション誌の中でも『サスティナブル・ファッション』という言葉がよく使われるようになり、柔らかなアングルから若者社会に投げかけをする、という媒体も増えてきました」

国連の幹部が来日した際、街中でカラフルなホイール型の「SDGsバッジ」をつけている人が多いことや、様々な場所でSDGsのアイコンを見かけることに驚くという。認知度が高まっている今、投資という行為を通して個人でSDGsにどのように関わることができるのか。

「様々な投資がありますが、環境・社会・企業統治に配慮している企業に積極的に投資していくESG投資や、小さな規模で言えば『クラウドファンディング』です。活動を応援したい、世の中から消えてしまうのが忍びないものを支えるためのお金の使い方です。政府や行政の手が回っていないけれど、こういうことをしたい、という呼びかけに応じる。私自身も最近ミニシアターの存亡の危機を救おうという『ミニシアターエイド』に賛同して金銭的にサポートしました」

さらに、ESG投資も始めたという根本。

「私は無精なので何もやってなかったのですが、とある銀行から話があり、サスティナビリティを重視したものに賛同して投資を始めました。10〜20年、長い単位で運用を委ねて変貌を遂げるような投資ですね。私はSDGsなどをいろいろとお話しする立場ですから、自分自身もやってこそ、より説得力を持つのではないかと思っています」

サスティナビリティを重視した投資により、たとえ個人単位でも未来を描くことができるという根本。では、未来を描く、投資先を見定める方法とは?

根本 かおるのイメージ 自身もESG投資を「体感」したと話す根本

「ストーリー」に共感できる投資先を見つける

クラウドファンディングをはじめ、さまざまな支援の形があり、世の中に善意は溢れている。若い世代が参加、応援しやすくなってきているものの、まずはその活動が広く認知されることが必要で、資金を必要としている事業なり人なりが積極的に世間に向けて発信しないと賛同者や支援者のアンテナには引っかかることは難しい。そこで、根本がSDGsやESG投資の際に着目すべき点としてあげるのが「ストーリー」だ。

「課題との出会い。そこからどのようにして課題解決への意欲が生まれたのか。そしてなぜその解決方法を考えるに至ったのか。そして、どのようなインパクトが見えてくるのかなど、その活動に対し人々の感情が動く、ストーリーが大切になってくると思います」

ESG投資やクラウドファンディングなど、どこに自分のお金を委ねて未来を作るのか。参加の場を探すためには情報収集が必要となる。検索サイトを通して上質なプロジェクトが見つかるはずなので比べてみるのもいい。社会課題など多くの人々が発信しているものをフォローしてみる、書いたものを読んでみる、オンラインイベントに参加して聞いてみるなど。活動の背景にあるストーリーに心を動かされることにより、環境や経済の知識を深めていくことができる。ちょっとした善意や「誰かを応援したい気持ち」があればいいと語る。

「少額でもいいので投資してみると、その個人や会社などが取り組んでいる課題に対する応援になります。一票を投ずる、という感覚でいいので関わってみると面白いのではないでしょうか。実はSDGsの資金不足というのは非常に大きな課題です。実現には途上国で毎年数百兆円必要とされていますが、世界の政府レベルのODAの何十倍にもなるため、企業や個人といった民間からの資金を動員できないと到底解決できないものです」

国連の中で資金を集める仕事もしていた根本はお金を集める大変さを痛感しているのだろう。さらに、SDGsの中でも食料や教育などの分野は比較的集まりやすいが、格差をなくす活動には資金がなかなか集まらないという。

「日本のESG投資ではE(環境)とG(企業統治)に集中していて、ジェンダーや人種の格差などが関係するS(社会)への取り組みは今まで軽視されていたかもしれません。しかし、今回のコロナ禍の影響で、Sの重要度に気づいた人が多い」

一緒にストーリーを完成させる旅へ

「新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行する前から、SDGsを2030年までに実現するための軌道から大きく外れてしまい、達成する目処が立っていません。深刻な貧困や格差、ジェンダーや人種間不平等などに加え、酷暑や山火事に代表されるように深刻さを増すばかりの気候危機。それらに必要な資金の目処が立っていないところに、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行してしまい、それまで積み上げてきたSDGsの前進を大きく押し戻している現状があります」

世界的なコロナ危機により、SDGsの目標達成がより遠のいてしまっている今、今後注目される領域とは何か? 根本はSDGsの中で、「気候危機」を挙げる。

「気候危機のウェイトはかなり高いですね。SDGsの中で『脱炭素』はもっと注目されるべきです。企業活動から、暮らしの中から、脱炭素に貢献する方法を強く打ち出すべきでしょう」

気候に関する意識が欧米に比べて日本が遅れていることも根本は懸念する。

「グローバル企業がヨーロッパで仕事をしようとした場合、サスティナビリティの部分での規制がヨーロッパでは進んでいるので、基準に達していないとそもそもマーケットに入っていけないことは、民間企業の方もよくご存知だと思います」

そのため、今後日本がサスティナビリティに関する規制が進むと同時に、ESG投資への注目が高まることを期待している。

「日本でESG投資に火がつくのは、ヨーロッパに比べると遅かったですが、関心は高まりつつあり、市場規模が広がっています。ただ、日本におけるSDGsに関する活動の発表は、いわゆる活動報告が中心で、なぜ取り組むようになり、それがなぜ大切なのか、さらに、それについてどういうインパクトをもたらしSDGsの達成にどう貢献するのか、というビジョンの比重が少なく感じます。理念とか価値観に関わることが語られないで、活動報告中心になっているのはとても残念ですね。ストーリーに賛同してもらい、ストーリーを完成させる旅へご一緒に、という提案の仕方が今後求められてくると思います」

最後に、コロナ禍の「今の世界」について根本に尋ねてみた。

「新型コロナウイルス感染症の流行が始まった時、SDGs、ESG投資はどうなるのか心配になりましたが、フタを開けてみると、誰一人取り残さないこと、そしてSDGsの大切さを、身をもって理解した人も多いのではないでしょうか。世界ではBlack Lives Matterや#MeToo、Fridays For Futureなど、人種・性別・年代間の格差が大きな不満につながり、大きな運動になっています。その動きを課題を解決するエネルギーに昇華していかれればと思います。一人ひとりの想いを繋いで物事を変えていくことが今後必要なのではないかと感じています」

根本 かおる(ねもと かおる)
兵庫県生まれ。東京大学法学部を卒業後、テレビ局のアナウンサー、報道記者勤務を経て、フルブライト奨学生として米国コロンビア大学国際関係論大学院で修士号を取得。1996年から2011年までUNHCR職員として、トルコ、ネパールなどで難民援助の最前線で支援活動に当たるとともに、ジュネーブ本部での政策立案なども手がける。WFP(国連世界食糧計画)の広報官、国連UNHCR協会事務局長も歴任。フリージャーナリストを経て2013年より現職。
文=石澤理香子 写真=吉澤健太
「Forbes JAPAN web」2020.10.15 配信記事より転載

※本記事内容は、根本氏への取材に基づき作成しており、野村證券の見解によるものではございません。

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