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2018.03.01 NEW

【特別企画】80年代生まれのチャンスはAI、IoTにあり?

【特別企画】80年代生まれのチャンスはAI、IoTにあり?のイメージ

80年代生まれをとりまく「リスク」と「チャンス」を分析、「ハッピー」な生き方を提案する当企画。第二回はチャンスのありどころを考える。

テクノロジーの進化は大きなチャンス

これからの時代の担い手となる「80年代生まれ」のリアルを知るために、編集部はまず読者を対象としたアンケートを実施した。

「あなたのキャリアや人生設計にとって『チャンス』だと思う世の中の変化は?(複数回答可)」という質問に対して、「AIの進化(51.5%)」「IoTの実現(43.5%)」「スマホなどの普及(39.0%)」が上位を占め、80年代生まれのビジネスパーソンたちがテクノロジーの変化を大きなチャンスととらえていることがうかがえる結果となった(図1)。

図1:あなたのキャリアや人生設計にとって「チャンス」だと思う世の中の変化を、以下から全てお答えください。(複数回答)
図1:あなたのキャリアや人生設計にとって「リスク」だと思う世の中の変化を、以下からすべてお答えください(複数回答)

※EL BORDEがSTART!(朝日新聞社)と共同で、1980年代生まれの全国の男女588人を対象にインターネットにて調査。2018年1月15日~1月28日に実施。

#みんなのコメント

【AIの進化】

  • 従来人間が行なっていた仕事の一部がAIに代替されることにより、人間はより付加価値の高い活動に使うことができると考えるため。(男性37歳)
  • 作業や無駄な仕事が減り、仕事内容の変革が社会全体で求められる。時間労働ではなく、より価値ある労働スタイルを求められるため。(男性34歳)
  • クリエイティブ以外のことはAIで行うことで効率的な仕事ができる。遊んで暮らせそう。(男性34歳)

【IoTの実現】

  • 家事の効率化や生活の効率化を期待しています。(女性36歳)
  • インターネットがより身近なものになり、社会と一体性を生むと確信するから。(男性38歳)
  • インターネットと物が繋がることによって、何が生まれるのか。また、それによって人が新しく何かできる可能性、世界と繋がる可能性やチャンスはあると思う。(男性32歳)

なぜ、「AI」や「IoT」なのか

「リスク編」では「年金・高齢化・少子化」という社会の変化が票を集めたが、「チャンス編」では一転、「AI」や「IoT」といった技術革新が票を集める結果となった。なぜ、こうしたテーマが注目を集めたのか。野村総合研究所未来創発センター2030年研究室の上田恵陶奈氏に意見を聞いた。

「野村総合研究所では、オックスフォード大学との共同研究で日本、アメリカ、イギリスにおけるAIの代替可能性を比較しました。その中で、日本がAIの導入に対して最もポジティブでした。日本社会は慢性的に人手不足。残業体質や休暇不足をAIが助けてくれるという期待が高く、AIによる失業を懸念する状況にないのです」(上田氏)

つまり、定型的な作業などはAIやロボットが代替してくれる代わりに、付加価値に集中できることで新しいことを生み出すチャンスとしてとらえているとも言えそうだ。

AIやIoTは80年代生まれにとって逆転のチャンス?

また、上田氏は、今後のテクノロジーはオフィスやサービス産業で大きな競争条件の変化をもたらすと予測する。

「これからのAIやIoTの大きな特徴は、クラウドのように個人や小規模の企業でも最先端の技術が使えるようになることです。大企業に属さずとも、AIで武装することで対等に戦えるようになるので、大企業に属していることは勝ち組ではなくなります。
これまで80年代生まれは、『大企業に就職しない限り人生は逆転しない』、『派遣になったら二度と正社員になれない』というようなことを言われる世代でもありました。AIやIoTの進歩というのは、そういうことをリセットするチャンスでもあるんです」

これまでは、社会に出るタイミングで大企業に入れなければ、その後の未来は明るいものとして語られることはなかった。なんとかして大企業に転職することがリセットする唯一のチャンスではあったがそれも簡単ではない。それが、個人でもAIやIoTで武装することで、大企業とも対等に戦えるようになるという。これは、大きなチャンスであろう。

80年代生まれはいかに生きるべきなのか(それにどのように対応すべきなのか)

さて、そんな時代を迎えるために、80年代生まれはいかに生きるべきだろうか。ひと昔前までは、大学を卒業するまでの教育課程で学んだ知識とノウハウ、そういったものが重視されてきた。しかし、ほとんどの知識とノウハウは陳腐化し、AIのほうが確実に担える時代になってくる。そんな激動の時代に求められるスキルについて上田氏に聞いた。

上田氏によると「人間に求められる能力は、『知る力』ではなく『考える力』そのもの」だという。そして、その考える力を実現するために、「クリエイティブ・シンキング」「ソーシャル・インテリジェンス」「非定型」の3つのキーワードを挙げてくれた。

「クリエイティブ・シンキングは概念で考えるということ。具体例を見なければ考えられない頭を、トレーニングして抽象段階でとらえられるようにすることは非常に大切です。社会で色んなことが起きているけど全体的に見たらこうだな、とか。そうすれば『自分はここが得意だ』『これがビジネスになる』というのが見えてきます」

ソーシャル・インテリジェンスは「コミュニケーション能力」とも言い換えられる力だ。

「例えば飲食店のホールスタッフで言えば注文を取るだけのコミュニケーションではなく、お客様に合わせたおすすめの提案であったり、おもてなしの気持ちといったものです。ソムリエや旅館の女将さんのようなスキルが目標ですね。紋切型のコミュニケーションはすぐにAIが代替するので、磨いて損はないと思います」

非定型はAIが得意とする『決まりごと』以外の部分を考える力。

「昨日と今日が必ず同じだったら、AIに任せてしまって問題がありません。でも昨日とは違う。その違いを見るのが非定型のスキルです。違いを踏まえた答えを自分で考え抜いて提案するのが人間の付加価値になるのです」

AIやIoTで社会はどう変わるのか

リスク編で取り上げた「年金不安」「高齢化」「少子化」などの社会変化は、AIやIoTでどう変わるのだろうか。

「『リスク編』で浮き彫りとなった「少子高齢化」に起因する社会問題。これを助けるのも、ロボット技術やIoTの進化に他なりません。人口密度の希薄化や生活インフラの空洞化が進む未来には、生活様式が「自助」と「共助」という2つの方向に分かれていく可能性が考えられます」とは、博報堂生活総合研究所の三矢正浩氏。

「私たちは未来の街や生活の在り方についての研究で、いくつかの未来シナリオを打ち出しています。例えば、家事や介護は知能の高度化したロボットに任せて、買い物はドローンに運んでもらう。家の中の壁にはプロジェクションマッピングなどで好きな景色を流して『お一人様でも楽しく便利にひきこもり』という生活が自助の方向。
一方、共助の方向は家族以外の多くの人々と生活手段を共有したり、家事や育児、介護などで協力しあいながら生活を成り立たせる路線です。お金の電子化が進んでいる中国では、親戚や友人が病気などで困ったときに、個人間送金アプリを使ってスピーディーに数千円程度をカンパする人も出てきているそうです。人口が減り、物理的に人との接点が希薄になったとしても、便利なツールを駆使して人と人とが助け合うことは可能だと思います」(三矢氏)

AIやIoTの進化というのは、ビジネスチャンスだけでなく、日々の生活を大きく魅力的に変えていくものでもあるようだ。80年代生まれはそうした変化の恩恵を、もっとも充実した世代に享受できるチャンスのある世代と言えるかもしれない。

ではそんな時代にどのように幸せに生きるべきか。「ハッピー」をテーマに、連載を締めたいと思う。

EL BORDE×START! タイアップ企画!

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監修:上田 恵陶奈(うえだ えとな)

株式会社野村総合研究所 未来創発センター 2030年研究室 兼 ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント。AI、決済、コンテンツなどの複合領域を専門とし、また2030年研究室にてAIと共存する未来を研究している。

監修:三矢 正浩(みつや まさひろ)

博報堂生活総合研究所 生活表現グループ 上席研究員。2005年に株式会社博報堂に入社し、2016年より現職。生活者に対する多角的・ユニークな観点から、幅広い分野の研究調査に従事。今年度は生活者とお金をテーマにした「進貨論~生活者通貨の誕生~」のメイン研究者の一人として、研究発表を行った。

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