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2020.01.20 NEW

一流と二流を分ける「連想力」の正体―「5Gがくる!」で満足してはいけない理由とは

一流と二流を分ける「連想力」の正体―「5Gがくる!」で満足してはいけない理由とはのイメージ

「株は連想ゲームだ」といわれることがある。

なんらかの事象が起こったとき、それに関連する銘柄の株価が動く。たとえば2019年、日本はラグビーの世界大会に沸いた。そこから連想されるスポンサー企業やスポーツ関連銘柄の株を事前に買っておけば、いざ大会が開幕されたときに株価が上がり、「風が吹けば桶屋が儲かる」的に利益を手にすることができる、というのだ。

一方で、「株は連想ゲームである」という言説を否定する声もある。そんな思い付きだけで儲かるなら、今頃みんな億万長者だというのだ。はたしてどちらの意見が正しいのか。野村證券株式会社 投資情報部長、西澤隆さんに聞いた。

「だれでも思いつく連想」には価値がない

結論からいうと、どちらの意見も正しい。「株はある種の連想ゲームだが、一方で単純な連想では意味がない」というのが西澤さんの答えだ。どういうことか。

「たとえばラグビー世界大会が開催される場合、たしかにスポンサー企業やスポーツ関連銘柄、選手が所属する企業の株価が上がる可能性は高いです。でも、それくらいのことはだれもが思いつきますよね。みんなが気づいたときには、すでに株価にその要因が反映されている──いわゆる“織り込み済み”になってしまっている。こうして口にすると当たり前に聞こえるかもしれませんが、だれでも思いつく連想には価値がないんです」

つまり、株はある種の連想ゲームだといえるが、「ラグビー世界大会が盛り上がっているから、スポンサー企業の株価が上がるはずだ!」程度の連想では、利益を生む「連想」にはならないということだ。

そこで思い出してほしいのが「風が吹けば桶屋が儲かる」という日本のことわざだ。なぜ桶屋が儲かるのか、意味をおさらいしよう。

風が吹けば土埃(つちぼこり)が舞う → 土埃が目に入って眼病が流行し、目を悪くする人が続出する → 当時は目の見えない人は音曲(おんぎょく)を生業とすることが多かったため、三味線の需要が増える → 三味線の素材といえば猫の皮なので、多数の猫が殺される → 猫が減ればネズミが増える → ネズミは桶をかじる → 桶の需要が増え、桶屋が儲かる

これはあくまでたとえ話だが、注目すべきは「風が吹いた段階で桶屋が儲かることに気づける人は少ない」という点だ。

「最近、ネズミに桶をかじられたという話をよく聞くなぁ」という段階で桶屋の株を買ったとしても、すでに同じことを考えて株を購入している人が少なくないため、そこで得られる利益は少ないだろう。桶屋の株価には、すでにそうした要因が“織り込み済み”になっている。

一方で、もし風が吹いた時点で桶屋が儲かることを連想し、桶屋の株を購入している人がいたとしたら、その人は大きな利益を得られていたことだろう。「風が吹けば桶屋が儲かる」的に利益を得たいのであれば、より早く、より先まで連想する力が求められるのだ。

「5Gが来る!」だけで満足してはいけない

では、その視点でラグビー世界大会について考えたとき、西澤さんならどのような連想をするのだろうか。

「ラグビー世界大会のように大きなスポーツイベントがあると、試合を放映するための通信システムが刷新されることが多い。そこで連想するのは、すでに米国や韓国でサービスが開始されている次世代移動通信方式『5G』です。翌年には東京五輪を控えているので、今回のラグビー世界大会でもなんらかの動きがある可能性が高いと考えます」

たしかに、スポーツの祭典には中継放送が不可欠。通信システムに着目し、5Gにたどり着くのは当然の帰結といえるだろう。しかし、西澤さんの連想はさらに続く。

「通信キャリアにたどり着いて満足するのではなく、さらに連想ゲームを続ける必要があります。5Gがスタートするなら基地局がたくさんつくられる。では、基地局の構築が得意な会社はどこか。基地局向け通信計測器の需要も急増するだろう。では通信計測器のメーカーといえばどこか、といったふうに考えていくんです」

ラグビー世界大会から、通信計測機器メーカーへ。こうして説明を聞いてみると納得できるが、大会の日本での開催が決まった3~4年前のタイミングでその連想ができた人は、それほど多くないだろう。

まだ要因が“織り込み済み”になる前の株にたどり着くために連想を続けていく――。株の連想ゲームとは、かくあるべきなのだ。

「プラットフォーム」としての自動運転

ここでもうひとつ連想ゲームをしてみよう。

近年注目されているテクノロジーのひとつに「自動運転技術」がある。政府は2025年までに、高速道路など特定の場所でシステムがすべてを操作する自動運転「レベル4」の実現をめざす方針を掲げており、完全自動運転である「レベル5」が実現するのもそう遠い未来ではないかもしれない。

では、やがて自動運転が実現したとして、その時にはどのような銘柄が動くのか。単純な連想をすれば、自動車メーカーやシステム開発会社などだろう。しかし西澤さんはさらに先を読む。

「レベル4や5の自動運転が実現すれば、これまで“運転するもの”だった自動車が、“移動するための空間”、つまりプラットフォームになる。そのプラットフォームに、どんなコンテンツがのってくるかを考えるんです。映画を楽しみたい人もいればリラクゼーションに使いたい人、おいしいものを食べたい人もいるでしょう。エンタメから飲食まで、さまざまな業界に影響がおよぶと予想できます」

また、西澤さんは「連想の方向はひとつではない」としたうえで、次のような例についても話してくれた。

「あるいは、自動車保険ってどうなるんだろうという連想もできますね。損保会社の主軸事業は自動車保険です。自動運転の実現によって世の中から自動車事故が減ったら、損保会社はどうなってしまうのか。まったく新しい保険形態を考案するかもしれないし、もしかしたら新しい業態に変わるかもしれない。そうなったとき、パートナー企業はどこになるのか……と連想を続けるわけです」

「連想力」は鍛えることができる

このような連想力の有無は株式投資のみにとどまらず、私たち全員のビジネスに関わってくる。

先の先を読み、これから訪れるであろう変化をいち早く予測することができるかどうか。それはビジネスにおいてチャンスを掴むことができるかどうかを意味するからだ。投資的連想力は、すべてのビジネスパーソンが身につけておくべきなのだ

では、こうした連想力はどうすれば鍛えることができるのか。後編で詳しく紹介する。

【お話をお伺いした方】
西澤 隆(にしざわ たかし)
1964年、埼玉県生まれ。2004年野村證券金融経済研究所経済解析課長、2010年野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社 取締役社長などを経て、現在は野村證券投資情報部長。著書に『人口減少時代の資産形成』、『日本経済 地方からの再生』(ともに東洋経済新報社)などがある。
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