2018.08.23 NEW
あなたはキャッシュレス派? 現金派? 80年代生まれのキャッシュレス事情【前編】
キャッシュレス化の波が日本にも。 80年代生まれはどうしてる? さらには、硬貨や紙幣に依存しないキャッシュレス時代の未来像に前後編で迫る。
あなたはキャッシュレス派? それとも現金派?
商品の購入やサービスを利用した際の支払いを「クレジットカード」や「電子マネー」で行うことで、日常生活にほぼ現金を必要としない「キャッシュレス社会」。
昨今、日本ではキャッシュレス化に向けた動きが加速しており、昨年に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、「今後10年間でキャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」(2016年時点で2割弱)という政府の方針も示されている。
ネットショッピングをよく利用する人であればクレジット決済はいまや一般的だし、電車通勤のビジネスパーソンなら大多数が交通系の電子マネーを利用しているだろう。さらにはコンビニやスーパーでの支払いも、「基本的にはクレジットカードや電子マネーで」という“キャッシュレス派”も徐々にではあるが増えているように見える。
とはいえ、“現金社会”といわれる日本では、「なるべく支払いは現金で」といった“現金派”も根強い。キャッシュレス派か現金派か、80年代生まれ世代の意識や実態はどのように変化しているのだろう?
30代のクレジットカードや電子マネーの利用は増えている?
博報堂生活総合研究所の定点観測調査「生活定点 1992-2016」によると、「クレジットカードを使うことに抵抗はない」と答えた人は、男性30代で56.2%と過去最高の割合に(2016年)。ちなみに、最もクレジットカードの利用に抵抗がないのは男性50代で、57.7%という結果となっている(図1)。
出典:博報堂生活総合研究所「生活定点 1992-2016」
※首都40km圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県)、阪神30km圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)の20歳~69歳の男女3,160人(2016年・有効回収数)を対象とした訪問留置調査。うち男性の年代別数字を抽出。
対して、同調査で「日常的に電子マネーを使っている」と答えた人は、2016年に男性20代が50.2%、次いで男性30代が46.8%と、比較的高い割合を示している(図2)。
出典:博報堂生活総合研究所「生活定点 1992-2016」
※首都40km圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県)、阪神30km圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)の20歳~69歳の男女3,160人(2016年・有効回収数)を対象とした訪問留置調査。本質問項目については2006年より実施。うち男性の年代別数字を抽出。
また、楽天リサーチ株式会社が実施した「キャッシュレス決済に関する調査」では、男性30代が50代に次いで現金での決済比率が低い(86.6%)。
また、スーパーやコンビニをはじめとする商業施設などで使える商業系カード型電子マネー、交通系カード型電子マネーやスマートフォンを利用した決済サービスなどで、男性30代の利用割合が最も高くなっている(図3)。
20代 (n=79) |
30代 (n=97) |
40代 (n=120) |
50代 (n=99) |
60代 (n=110) |
|
---|---|---|---|---|---|
現金 | 88.6 | 86.6 | 88.3 | 85.9 | 89.1 |
クレジットカード | 73.4 | 80.4 | 80.8 | 86.9 | 84.5 |
商業系カード型電子マネー | 44.3 | 50.5 | 45.0 | 44.4 | 42.7 |
交通系カード型電子マネー | 39.2 | 46.4 | 35.8 | 42.4 | 40.9 |
銀行・郵便振込 | 22.8 | 35.1 | 30.0 | 29.3 | 35.5 |
スマートフォンを利用した決済サービス | 25.3 | 26.8 | 15.0 | 15.2 | 9.1 |
ポストペイ式カード型電子マネー | 22.8 | 11.3 | 8.3 | 9.1 | 14.5 |
デビットカード | 8.9 | 9.3 | 13.3 | 13.1 | 7.3 |
(単位 : %)
出典:楽天リサーチ株式会社「キャッシュレス決済に関する調査」から編集部作成
※全国の20代~60代の男女1,000人を対象としたインターネット調査。2018年6月1日~6月2日に実施。
気になる浪費増? キャッシュレス社会には反対派も多い?
これらの調査結果を見ると、クレジットカードや電子マネーを使った現金以外の決済を、80年代生まれ世代の多くも利用していることが分かる。しかし、現金を必要としないキャッシュレス社会の到来については、反対する人も少なくはないようだ。
博報堂生活総合研究所が実施した「お金に関する生活者意識調査(第3回)」によると、「キャッシュレス社会になった方がよい」と答えた賛成派は男性30代で58.5%、対して「ならない方がよい」と答えた反対派は40%を超えている(図4)。
なった方がよい | ならない方がよい | ||
---|---|---|---|
男性 | 20代 (n=281) | 57.7 | 42.3 |
30代 (n=340) | 58.5 | 41.5 | |
40代 (n=430) | 58.6 | 41.4 | |
50代 (n=356) | 59.0 | 41.0 | |
60代 (n=396) | 59.3 | 40.7 | |
女性 | 20代 (n=272) | 36.8 | 63.2 |
30代 (n=333) | 35.4 | 64.6 | |
40代 (n=422) | 36.7 | 63.3 | |
50代 (n=357) | 42.0 | 58.0 | |
60代 (n=413) | 40.9 | 59.1 |
(単位 : %)
出典:博報堂生活総合研究所「お金に関する生活者意識調査(第3回)」
※全国の20歳~69歳の男女3,600人を対象としたインターネット調査。2017年11月16日~11月20日に実施。
また、男性ではすべての世代で賛成派の割合が上回っているのに対して、女性ではすべての世代で反対派の方が多く、特に20代から40代では60%以上がキャッシュレス社会に消極的という結果に。賛成と反対それぞれの理由を見ると、「現金を持たなくてよい」「利便性が高い」という意見が賛成派の男女ともに多く、反対派では「浪費しそう」「お金の感覚が麻痺しそう」といった意見が特に女性で多くなっている(図5)。
キャッシュレス社会に「賛成」の理由 | 全体 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|---|
1位 | 現金を持たなくてよいから | 14.7 | 14.9 | 14.3 |
2位 | 利便性が高いから | 10.7 | 12.2 | 8.7 |
3位 | お得だから | 6.9 | 5.5 | 8.7 |
キャッシュレス社会に「反対」の理由 | 全体 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|---|
1位 | 浪費しそうだから | 10.9 | 7.9 | 13.3 |
2位 | お金の感覚が麻痺しそうだから | 10.1 | 5.4 | 13.8 |
3位 | お金のありがたみがなくなりそうだから | 7.9 | 5.7 | 9.6 |
※全国の20歳~69歳の男女3,600人を対象としたインターネット調査。2017年11月16日~11月20日に実施。
日本ではまだ現金での決済しかできない商店も多く、郵便局でもクレジットカードは使えないなど、完全にキャッシュレスで生活するのはまだまだ難しいのが現状のよう。
とはいえ、政府の方針が示すとおり、日本でもキャッシュレス化が進んでいくことは間違いないだろう。では、キャッシュレス社会にはどのようなメリットがあり、人々の暮らしはどのように変わるのだろうか。さらには、紙幣や硬貨に依存しないキャッシュレス化が進むことで予想される未来について、引き続き後編で分析していきたい。