2019.11.21 NEW
80年代生まれはVUCA時代の先頭を走る世代だ! 景気循環からみた現代の日本経済
80年代半ばから90年代初めにかけてのバブル、そして崩壊後の低迷。そして、それらを経てなんとなく停滞感のある現代。日本経済はこれからいったいどうなっていくのだろうか?
80年代生まれが経験してきたこれまでの日本経済の変化について、野村證券株式会社 投資情報部長の西澤隆さんに聞いた。
そもそも景気が「良い」「悪い」とは?
そもそも「景気が良い、悪い」とは、経済学的にどのような状態を指すのだろうか。西澤さんは次のように解説する。
「たとえば輸出が伸びて企業の業績が上がり、従業員の所得やボーナスも上がれば、結果的に個人の消費行動も活発になります。そうすると企業がさらにモノやサービスの生産量や供給量を増やし、設備投資などを行うようになる。こうした好循環の相乗効果が起こっている状態が、いわゆる『景気が良い』と呼ばれる状態です。
しかし、個人の所得が増えてどんどんモノを買いたくなる状態に対して、企業は無制限にモノを生産できるわけではないのでモノの値段を上げます。さらに、銀行も同様に金利を上げて企業や個人がお金を借りにくくするなどして、景気の過熱を抑える施策を打ちます。
そうすると今度は、物価や金利が上がって個人の消費行動はもちろん、企業の設備投資や増産の意欲が下がり、『景気が悪い』状態になっていくわけです。経済学では原則として、景気はこうして良くなったり悪くなったりを繰り返しながら変動すると考えます。こうした繰り返しの変動を経済学では景気循環と呼びます」
そう西澤さんが説明する景気循環にはいくつかの種類がある。企業の在庫投資を要因として約40カ月サイクルで発生する「キチン循環」や、設備投資を要因とする約10年サイクルの「ジュグラー循環」。ほかにも、建築物の需要を要因とする約20年サイクルの「クズネッツ循環」や、技術革新を要因とする約50年サイクルの「コンドラチェフ循環」など。それぞれの周期が短期・中期・長期的な景気の循環に影響を与えるとされてきた。
「日本でも実際に1990年頃までは、キチン循環からジュグラー循環、クズネッツ循環などのサイクルは投資家などが景気の動向を見る目安となっていました。しかし、現代ではその景気循環が起きにくくなっていています」と西澤さんはいう。
なぜ、現代ではその景気循環が起きにくくなっているのだろうか?
1991~2008年が、日本経済の最大の“変革期”
なぜ起こりづらくなったのか。それを知る前に、もともと日本ではどのようなかたちで循環が起こっていたかをもう少し詳しく知っておこう。
西澤さんは、1990年までは綺麗に景気循環があり景気の良し悪しがわかりやすかったが、1991年から2008年ころにかけて日本経済の構造はまったく変わり、従来の景気循環とは全く違う世界になってしまったと語る。
「変化前の成長が約束されていた1990年までの日本では、ダイナミックな景気循環が起こるたびに企業はどんどん大きくなり、個人の所得も総じて右肩上がりに増えていきました」と西澤さん。
つまり、この1990年までは日本全体の経済が上向きで安定して成長を続け、それに伴い企業が安定して成長していくことができた“成長期”といえる。
「その後、1991年くらいからバブルが崩壊して株価が暴落していき、1997年頃に銀行が潰れ始め、このタイミングで金融不況が起こりました。
それまで企業には、頑張れば銀行が融資して助けてくれるという考えがあり、業績が悪くても人を切らずに我慢しようという流れがありました。しかし、銀行も徐々に貸し渋り、企業に返済を要求せずにいられなくなり、企業は従業員をリストラせざるを得なくなってしまいました。
そして2008年のリーマンショックがとどめとなって、企業の経営の考え方や労働の在り方が大きく変わりました」
西澤さんは、バブル崩壊からリーマンショックまでの多く経済変化が起こったこの期間を総じて、日本経済の最大の“変革期”と呼んでいる。
そして変革後は、景気循環が起こりづらくなり、そうしたサイクルによる予測がつかなくなったのだ。これから先の予測がつかなくなった現代は、まさにVUCAの時代と言えるだろう。
※VUCA(ブーカ):見通しが立ちにくい現代の不安定なビジネスの状況を表した言葉。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語。
経済環境が転換した後のVUCA時代では、80年代生まれが先頭を走っている
経済が右肩上がりに成長した時代から、いわば成長が見通せない時代へ。そして一つの価値観を信じていれば誰もが豊かになれた時代から、個人が多様な価値観を選択肢として持ち、自らが思う豊かさを追う時代へ。西澤さんによれば、そうした時代が転換する狭間の世代として、変化する経済環境のあおりを最も受け、転換後の世界の先頭を走るのが「80年代生まれ」だという。
後編では、日本経済の大転換期をど真ん中で経験した80年代生まれに焦点を当てて引き続き西澤さんにお話を伺う。そして、80年代生まれのビジネスパーソンが経済成長なき時代を賢く生き抜くためのヒントなどを提示したい。
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