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2020.03.19 NEWエッジな視点

GAFAが狙う新たな「40億人市場」―民間参入をきっかけに急加速する宇宙ビジネス

GAFAが狙う新たな「40億人市場」―民間参入をきっかけに急加速する宇宙ビジネスのイメージ

「FacebookやAmazonが宇宙開発を通して狙っているのは、いまだネットに接続していない40億人を対象としたEコマース市場、データ市場なんですよ」

そう語るのは、『宇宙ビジネスの衝撃』(ダイヤモンド社)などの著書で知られる、宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴(おおぬき みすず)さんだ。

近年、GAFAなどの取り組みを中心として耳にする機会の増えた「宇宙ビジネス」というキーワード。しかし私たちは、どれほどそのインパクトを理解できているだろうか?

宇宙開発の先に、いったい何があるのか。その基礎をあらためて大貫さんに聞いた。

IT業界のトップランナーたちが宇宙に投資する理由

国内外の経営者やトップ企業が投資・開発に力を注いでいる「宇宙ビジネス」。しかしこれだけ話題になっているにもかかわらず、いまだに「自分には関係ない」と感じているビジネスパーソンは少なくないだろう。

なぜ、自分ごととして感じることができないのか。これはおそらく、「宇宙」というキーワードが「夢」や「SF」、「月面旅行」など、ビジネスとは遠いところにあるイメージとともに語られることが多いからではないだろうか。しかし、その認識は今すぐ改めたほうがよい

「元ZOZO CEOの前澤友作さんが宇宙旅行計画を発表した時、多くの日本人は“夢の実現”という文脈で理解しました。しかし、宇宙開発者たちは別の見方もしていた。あれはある意味、宇宙ビジネスへの投資であると考えていたんです」

そもそもなぜ、宇宙開発とビジネスが結びつくのか。そこには、世界のインターネット利用状況が密接にかかわっている。

現在、世界の主流ビジネスはインターネットと不可分になっている。GAFAに代表される世界のトップ企業は、いずれもネットに接続されていることを前提としたビジネスで成長してきた企業だ。

しかし、地球人口約70億人のうち、ネット環境に繋がることのできる人口はわずか40%に過ぎないことをご存知だろうか? これはつまり、GAFAに占拠されたかのように見える市場には、残り60%、約40億人分の市場が残されているということでもある。

「こうした残り60%の人類に対してデジタルデバイド(情報格差)の解消に取り組み、衛星通信で5G接続環境を提供すれば、そこにはEコマース市場やデータ市場がもたらされます。教育や医療における期待も大きい。それこそがマーク・ザッカーバーグ(Facebook)やジェフ・ベゾス(Amazon)が宇宙開発に力を入れる理由の一つだといえるでしょう」

中国がネット経済の発展により急速な成長を見せたことは記憶に新しい。しかし、中国ですらインターネット利用者数は8億人程度。その何倍もの人数をネットに接続し、市場を掴む。そのインパクトの大きさは計り知れない。地球規模で経済が活性化する、世界経済が大幅にアップデートするとすら言えるだろう。

当然、こうした動きは海外のみに限った話ではない。わかりやすい話としては、5Gの導入で更なる躍進が期待されている、通信事業者が宇宙開発に投資した例が挙げられる。大貫さんは次のように語る。

「たとえばソフトバンクの孫正義さんも、多数の小型衛星を用いたコンステレーション(※)によるグローバルコネクティビティを実現する計画に、合計約3,000億円を投資しています。これも当然、孫さんが“宇宙好き”だったり、“SFファン”だからではありません。衛星通信がビジネスに貢献することを理解し、その先にあるチャンスを掴もうとしているからなのです」

※コンステレーション:特定の方式に基づく、多数個からなる人工衛星の一群・システムのこと

「スペース・エコノミー」の圧倒的成長率

こうした「宇宙」に対する民間投資が盛んになったキッカケの一つは、2005年に行われたアメリカ政府による宇宙政策のパラダイムシフトだ。

この年、NASAはスペースシャトル後継機の開発を民間に委託することを決定。自ら開発を行うことをやめ、民間が開発した宇宙船による宇宙飛行サービスを購入することに決めた。そして2010年には当時のオバマ大統領が官民連携で宇宙商業化を行う方針を発表し、これまで国家が実行していた「宇宙開発」が民間に門戸を開くことになったのである。

以降、宇宙産業の世界売上(スペース・エコノミー)は順調に伸び続けており、2005年の1,760億米ドル(1ドル100円換算で17.6兆円)から、2018年には4,150億米ドル(約41.5兆円)規模まで成長している(図1)。

図1:世界の宇宙産業の売上(スペース・エコノミー)推移

図1:世界の宇宙産業の売上(スペース・エコノミー)推移

出典:Space Foundation「The Space Report」より作成

しかし、スペース・エコノミーがどれだけ成長していようとも、誰もがGAFAのように宇宙開発へ乗り出せるわけではない。

では、衛星開発から火星旅行まで、さまざまな分野が入り混じっている宇宙ビジネス市場において、われわれビジネスパーソンが特に注目すべき分野はどこなのか?

「宇宙データ」を使いこなした企業が勝つ

宇宙ビジネスは、おおまかに下記の4つのグループに分類することができる(図2)。

そしてその中でも、特にビジネスパーソンが注目すべきはグループ2、「宇宙データ」を用いたサービス、ビジネスだろう。現代のビジネスにおいて「データ」を使いこなすことは、企業が成長するための絶対条件であるとすらいえるからだ。

図2:宇宙ビジネスの4分類
グループ1:ロケット・衛星開発製造、打ち上げサービス
ロケットや人工衛星の製造・打ち上げや地上局など、いわゆる宇宙機器産業。小型衛星の多数コンステレーション事業の増加が追い風となっている。
グループ2:宇宙データの利用サービス
人工衛星で取得されるデータが、地上のさまざまなデータとあわせてAIで解析されることにより、あらゆる産業に新たな価値をもたらすと期待されている。
グループ3:宇宙ビジネスを支える関連ビジネス
宇宙事業にかける保険ビジネスやサイバーセキュリティなど、宇宙ビジネスを展開するにあたり必要となる関連ビジネスの成長が見込まれている。
グループ4:新たな宇宙ビジネス
宇宙アクセスが容易化することで、宇宙資源開発、宇宙旅行、宇宙デブリ除去など、さまざまな新しいビジネスの登場・発展が期待されている。

今後宇宙開発がさらに進めば、地上から入手している現状のビッグデータに、衛星などから得られた「宇宙からしか得られないデータ(=宇宙データ)」が加わることになる。そこで得られたアクショナブルデータ(行動に繋がる実用的なデータ)により、経済予測精度が圧倒的に向上し、データエコノミーが大幅に加速すると大貫さんは予想する。

「たとえば、ボストンのベンチャー企業デルアス・ラボは、衛星画像や気象データなどを掛け合わせることで、農業における生産高などを高い精度で予測するツールを開発しています。宇宙データは既にスマート農業などに貢献しているのです。

農業と聞くと一般のビジネスパーソンは他人事に感じるかもしれませんが、大豆やトウモロコシの穀物は商品先物取引として、金融に大きくかかわってくる。実際に、経済予測の素材として衛星データを投資銀行やヘッジファンドなどが購入しています」

このように、今後「宇宙データ」は宇宙の領域を超え出て、さまざまな業界の在り方を変容させていくことが予測されている。

「他にも、たとえば宇宙から大型ショッピングモールにおける駐車場の駐車台数を観測して業績予測を行うツールなどが登場していますし、宇宙データを用いた保険商品を発売している企業もあります。

今後は、さらにあらゆる業界において宇宙データの使い方が検討されていく。そしてそれに伴い、データサイエンティストの需要も増していくはずです」

「宇宙データ」の活用方法をいち早く見出し、自社のビジネスに活かすことができるかどうか。それが今後のビジネスを大きく左右するといえそうだ。

宇宙データの使い方

では、実際に宇宙データを活用するためには、何からはじめればよいのか。

実は日本政府も、オープン&フリー化を通じて宇宙データの活用を積極的に推進している。

経済産業省は2019年、政府の保有する人工衛星データを公開すべく、クラウド上のデータプラットフォーム「Tellus(テルース)」を開設。誰でも無料で衛星データを活用できる体制を整えた(図3)。

図3:Tellus

図3:Tellus

出典:Tellus公式ウェブサイトより

とはいえ、いくらデータが公開されていたとしても、データサイエンティストを抱えている企業など、データを活用できる企業は限られるだろう。そのため、解析人材を持たない企業向けにデータを解析し、ソリューションとして提供する企業に注目が集まっているという。

「こうしたソリューションを提供する企業はアナリティクス企業と呼ばれ、専門人材を抱えるほどではないという企業からのニーズを受けた成長が見込まれています。宇宙ビジネスに対する投資が盛んになり始めた際に、真っ先に投資が集まった企業にアナリティクス企業がありました。

アナリティクス企業自体は何社もありますが、特に有名な企業としては2018年に日本支社を立ち上げたOrbital Insight社を挙げることができます。既に保険会社やメディアなどをはじめとした多くの日本企業が活用しているうえ、企業サイトを覗けば、データを使って何ができるのかを知ることができるので、関心がある人には一度見てみることをオススメします」

こうしたアナリティクス企業の活用は、今後もますます進むだろう。いずれにせよ、「宇宙データ」の扱い方が、今後のビジネスを左右することになりそうだ。

チャンスをいかに掴むか

ここまで見てきた通り、「宇宙ビジネス」は一部の人に誤解されているような「宇宙旅行の夢を現実に」といった文脈ではなく、既に私たちのビジネスを左右する存在として、足元まで浸透しはじめている。今後も5G、AIなどとの連携を通じた成長が期待できる産業だ。

宇宙という新たな市場、新時代のゴールドラッシュにいかにして乗るか。その可能性は無限に広がる宇宙と同様に、さまざまに幅広く開かれている。

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